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第1章:プロローグ
記憶の目覚めと縛りプレイの決意
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「……あれ?」
目が覚めた瞬間、私は自分が誰で、どこにいるのか、一瞬わからなくなった。
ふわっふわの天蓋付きベッド、レースもりもり、すべすべシルクのナイトドレス、そして壁の油絵と、枕元のナイトテーブルには銀細工の水差し。
いや、待ってこれ、現実じゃなくない?
少なくとも、日本のゲーオタ女子大生が起きる部屋じゃないよね? こんなパジャマ、見たこともないし。まだ夢の中?
そう思いながら、起き上がった私の目の前の鏡に映るのは——
ストロベリーブロンドの髪に、透き通るような肌。エメラルドのような翠色で意志の強さを感じさせる瞳。ノーメイクでもプルプルさくらんぼリップの美少女。でもどこかで見たことあるような……?
唐突に脳裏に浮かんできたのは、ジャケ買いした乙女ゲームのタイトルとパッケージの説明文。
『薔薇色の夢』
——プレイヤーは美しき令嬢となり、攻略対象たちとの恋を楽しみましょう☆
「いやいやいや、違う違う!! このゲーム、そんな薔薇色じゃないから!!!」
そう突っ込んだ次の瞬間、頭の中に溢れてきたのは、ゲーム『薔薇色の夢』をプレイしたゲーオタ女子大生、“有村莉奈”としての記憶。そしてここにいる美少女、“リディア・アルステッド”としての記憶——
「え、まさかこれ、ラノベでよくある異世界転生……ってやつ……?」
私、有村莉奈は、リディア・アルステッドに転生した。乙女ゲーム『薔薇色の夢』に登場する悪役令嬢。
しかし、このゲーム、ただの乙女ゲーじゃない。
悪役令嬢である『私=リディア』が“主人公”なのだ。
昨今の悪役令嬢ブームに目をつけたゲーム会社が、悪ノリと勢いで作った“悪役令嬢”の、“悪役令嬢”による、“悪役令嬢”のための、ゲーム。
プレイヤーは悪役令嬢となり、彼女の視点でゲームは進む。庶民出身の令嬢であるヒロインと、攻略対象との好感度バトルを勝ち抜き、ハッピーエンドを目指すのだ。
攻略対象は王太子、筆頭宮廷魔導師、人気舞台俳優、騎士団長長男の4人。
しかし彼らはいずれもリディアに対して、既に心を閉ざしている。
そう、最初から嫌われてる状態でスタートするという、鬼畜仕様。そこまでリアルにする必要、ある!?
“バッドエンド”では、ヒロインがあれよあれよと恋を実らせ——リディアは断罪される。処刑されたり、追放先で消息不明、という悪役令嬢お決まりの悲惨な末路をたどるのだ。
選択肢も気をつけないと、ヒロインをいじめたとみなされる展開に。
「なんでなん!!」
美少女にあるまじき叫びが漏れる。
しかも。
仮に頑張って、嫌われてた攻略対象との関係を修復して、恋人になって“ハッピーエンド”を迎えたとしても。
なぜか各ルートで必ず、戦争、政変、災害など、世界規模の悲劇が起こる。
『世界の危機を乗り越えて、2人の絆は強まった』
などという、それっぽいテキストが流れるのだ。ほんとに誰得だよ、というゲーム展開。
この鬼畜さがクセになる、とかいうレビューもあったけど、そんなの、実際目の前にしたら——
「え? どっちに転んでも破滅ルートじゃない? 私、転生してもう……人生詰んだ??」
しかし、そんな混乱した頭で、ふと思い出した。
このゲームのプレイヤー界隈で“トゥルーエンド”と呼ばれている隠しルートだ。
リディアが断罪されることもない、世界に危機も訪れない、攻略対象とヒロインと悪役令嬢が「皆でいつまでも幸せに暮らしました」という、子どものお伽話のラストような世界線。
公式は肯定も否定もしていない幻のルート。システムのバグという説もある。
攻略掲示板で見た条件は確かこうだった
•攻略対象たちとの友好度を、“友人以上、恋愛未満”で維持
•ヒロインとの友情をMAXにする
以上2点を卒業式までに達成する(つまり、ゲーム内時間で一年以内)
ゴリゴリの縛りプレイ。
誰とも恋人になれない。でも唯一、誰も死なない、世界に危機も訪れない、破滅しないのがこのルート。
「……よし、これしかない!」
私は両手で自分のほっぺをぺちんと叩いた。
もはやこれは乙女ゲーではなく、縛りプレイ系サバイバルゲームである。
愛されすぎてもアウト、無視されてもアウト、ヒロインに敵対すれば即終了。
もはや恋もできない恋愛ゲーム、『薔薇色の夢』が始まるのだ。
ドアのノックの音が聞こえた。
「リディアお嬢様、お目覚めですか?」
私付き侍女のアーニャの声がドアの外から聞こえる。
もう逃げられない。わたしは今、ゲーム本編のスタート地点に立っている。
「行くわよ……縛りプレイに!」
誰にも負けない覚悟で選んだ。誰とも恋に落ちず、誰も不幸にしない道を。
悪役令嬢リディア・アルステッドの、破滅エンドを回避する死闘が、今始まる。
目が覚めた瞬間、私は自分が誰で、どこにいるのか、一瞬わからなくなった。
ふわっふわの天蓋付きベッド、レースもりもり、すべすべシルクのナイトドレス、そして壁の油絵と、枕元のナイトテーブルには銀細工の水差し。
いや、待ってこれ、現実じゃなくない?
少なくとも、日本のゲーオタ女子大生が起きる部屋じゃないよね? こんなパジャマ、見たこともないし。まだ夢の中?
そう思いながら、起き上がった私の目の前の鏡に映るのは——
ストロベリーブロンドの髪に、透き通るような肌。エメラルドのような翠色で意志の強さを感じさせる瞳。ノーメイクでもプルプルさくらんぼリップの美少女。でもどこかで見たことあるような……?
唐突に脳裏に浮かんできたのは、ジャケ買いした乙女ゲームのタイトルとパッケージの説明文。
『薔薇色の夢』
——プレイヤーは美しき令嬢となり、攻略対象たちとの恋を楽しみましょう☆
「いやいやいや、違う違う!! このゲーム、そんな薔薇色じゃないから!!!」
そう突っ込んだ次の瞬間、頭の中に溢れてきたのは、ゲーム『薔薇色の夢』をプレイしたゲーオタ女子大生、“有村莉奈”としての記憶。そしてここにいる美少女、“リディア・アルステッド”としての記憶——
「え、まさかこれ、ラノベでよくある異世界転生……ってやつ……?」
私、有村莉奈は、リディア・アルステッドに転生した。乙女ゲーム『薔薇色の夢』に登場する悪役令嬢。
しかし、このゲーム、ただの乙女ゲーじゃない。
悪役令嬢である『私=リディア』が“主人公”なのだ。
昨今の悪役令嬢ブームに目をつけたゲーム会社が、悪ノリと勢いで作った“悪役令嬢”の、“悪役令嬢”による、“悪役令嬢”のための、ゲーム。
プレイヤーは悪役令嬢となり、彼女の視点でゲームは進む。庶民出身の令嬢であるヒロインと、攻略対象との好感度バトルを勝ち抜き、ハッピーエンドを目指すのだ。
攻略対象は王太子、筆頭宮廷魔導師、人気舞台俳優、騎士団長長男の4人。
しかし彼らはいずれもリディアに対して、既に心を閉ざしている。
そう、最初から嫌われてる状態でスタートするという、鬼畜仕様。そこまでリアルにする必要、ある!?
“バッドエンド”では、ヒロインがあれよあれよと恋を実らせ——リディアは断罪される。処刑されたり、追放先で消息不明、という悪役令嬢お決まりの悲惨な末路をたどるのだ。
選択肢も気をつけないと、ヒロインをいじめたとみなされる展開に。
「なんでなん!!」
美少女にあるまじき叫びが漏れる。
しかも。
仮に頑張って、嫌われてた攻略対象との関係を修復して、恋人になって“ハッピーエンド”を迎えたとしても。
なぜか各ルートで必ず、戦争、政変、災害など、世界規模の悲劇が起こる。
『世界の危機を乗り越えて、2人の絆は強まった』
などという、それっぽいテキストが流れるのだ。ほんとに誰得だよ、というゲーム展開。
この鬼畜さがクセになる、とかいうレビューもあったけど、そんなの、実際目の前にしたら——
「え? どっちに転んでも破滅ルートじゃない? 私、転生してもう……人生詰んだ??」
しかし、そんな混乱した頭で、ふと思い出した。
このゲームのプレイヤー界隈で“トゥルーエンド”と呼ばれている隠しルートだ。
リディアが断罪されることもない、世界に危機も訪れない、攻略対象とヒロインと悪役令嬢が「皆でいつまでも幸せに暮らしました」という、子どものお伽話のラストような世界線。
公式は肯定も否定もしていない幻のルート。システムのバグという説もある。
攻略掲示板で見た条件は確かこうだった
•攻略対象たちとの友好度を、“友人以上、恋愛未満”で維持
•ヒロインとの友情をMAXにする
以上2点を卒業式までに達成する(つまり、ゲーム内時間で一年以内)
ゴリゴリの縛りプレイ。
誰とも恋人になれない。でも唯一、誰も死なない、世界に危機も訪れない、破滅しないのがこのルート。
「……よし、これしかない!」
私は両手で自分のほっぺをぺちんと叩いた。
もはやこれは乙女ゲーではなく、縛りプレイ系サバイバルゲームである。
愛されすぎてもアウト、無視されてもアウト、ヒロインに敵対すれば即終了。
もはや恋もできない恋愛ゲーム、『薔薇色の夢』が始まるのだ。
ドアのノックの音が聞こえた。
「リディアお嬢様、お目覚めですか?」
私付き侍女のアーニャの声がドアの外から聞こえる。
もう逃げられない。わたしは今、ゲーム本編のスタート地点に立っている。
「行くわよ……縛りプレイに!」
誰にも負けない覚悟で選んだ。誰とも恋に落ちず、誰も不幸にしない道を。
悪役令嬢リディア・アルステッドの、破滅エンドを回避する死闘が、今始まる。
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