何でも奪っていく妹が森まで押しかけてきた ~今更私の言ったことを理解しても、もう遅い~

秋鷺 照

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2 異端のクズとゴミの妖精

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 さきほどまでは、鬱蒼とした木々が生えるばかりの場所だったはずだ。屋敷など無かったはずだ。
 ロメリアが呆然としていると、屋敷の窓がガチャリと開いた。3階の窓だ。
(え、誰かいるの?)
 意外だった。人が住んでいるようには見えなかった。廃屋敷だと思っていた。
 そんなロメリアの思いとは裏腹に、屋敷の住人は当たり前のように窓から顔を出す。そして——飛び降りた。
「っ⁉」
 ロメリアは息を呑んだ。
 屋敷の住人が落ちてきたからではない。3階という高さから飛び降りた彼が、無事に着地を果たし、平然とこちらを見ているからだ。
 彼は美形だった。歳は20前後で、すらりとした長身。星屑のように煌めく髪と夜空を映したような瞳が美しい。
 元婚約者のストロも相当なイケメンだったが、彼はそれ以上だ。
 しかしロメリアは、彼の登場に浮かれるどころか恐怖していた。
(まさか、この人……『異端のクズとゴミの妖精』の……)
 『異端のクズとゴミの妖精』——それは、この地に伝わる昔話。〈異端〉と呼ばれた男が、生まれ育った孤児院の全員を殺して旅に出て、出会った人をことごとく殺していく話だ。旅の途中で〈ゴミの妖精〉と出会い、一緒に旅をしながら好き勝手に殺戮を繰り返す。〈ゴミの妖精〉はゴミを処理する力を持ち、死体を消し去ることができた。人々は〈異端〉を倒そうと試みるが、人間離れした身体能力の前に歯が立たず、魔女の力を頼る。魔女は〈異端〉を殺すため、自分の住処である森に彼を誘い込んだ。そうして魔女が〈異端〉を追い詰めた時、彼は〈ゴミの妖精〉を喰らう。妖精を取り込むことで不老不死となった〈異端〉を、魔女は森へ封じた。殺すことは出来ずとも、森から出られないようにすれば、もう被害は出ないから。
 こうして〈異端〉が封じられたのが、この森である。だから立ち入り禁止なのだ。
(ただのおとぎ話だと思ってたけど……)
 ロメリアは唾を飲み込む。
 目の前の男の特徴は、昔話の〈異端〉と完全に一致していた。
「あの、貴方は……」
 震える声で問いかけたロメリアに、男はこともなげに告げる。
「名は無い。〈異端〉とでも呼べ」
(呼べるか!)
 今すぐ逃げ出したいが、体が動かない。
 立ち竦むロメリアの手を、〈異端〉はそっと握った。
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