蘇生チートは都合が良い

秋鷺 照

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6章 呪術師と暗殺者

6-4 真相

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「うらぁっ!」
 轍夜は剣を閃かせ、鬼を討ち取ろうとする。斬撃を避けた2体の鬼は、急に我を取り戻し、
「人間が増えたァ⁉」
「構わん、邪魔者は消すのみ!」
 1体は轍夜と対峙し、もう1体はリィラに向かった。

「……使わせてもらいますよ」
 リィラは言い、ペトアモスの剣を抜く。どのような力を持つかは知らないが、鬼の攻撃を受けても折れない頑丈な剣、というだけで充分だ。
 ざっと鬼の懐に潜り込み、一閃。その素早さに、鬼は反応できず、斬撃を食らう。
 しかし。
「無駄ァ!」
 鬼は嗤った。斬られた箇所がすぐにくっつき、傷跡すら無くなる。
 その様子を見ても、リィラは泰然自若として、薄く笑う。
「ただの小手調べですよ。あまり良い気にならないことです」
「言ってろォ!」
 うなりを上げて振るわれた金棒。それを左手で持つ杖で受け流し、右手の剣で鬼を突く。
「無駄だと……っ⁉」
 言いかけた鬼は息を呑んだ。金棒が、凍り付いている。地面から生えた氷柱に閉じ込められ、押しても引いてもビクともしない。
「ちィっ」
 咄嗟に金棒から手を離し、後ろに跳び退る。逆袈裟に振るわれた刃が、ついさっきまで胴のあった場所を薙いだ。
 リィラは踏み込み、返す刃で首を狙う。鬼は屈んでこれを躱し、拳を振りぬいた。
 めきりと拳が食い込む。見えない壁――防御魔法に。一瞬、鬼の動きが止まった。
「1体なら余裕でしたね」
 鬼がその言葉を聞いた時には、頭と体が分かたれていた。

 雑に強くなる呪具が、少しだけ効果を発揮する。おかげで轍夜は眼前の鬼と渡り合えていた。
「もっと!」
 と轍夜が主張しても、呪具は「これで充分なはず」と取り合ってくれない。
「にゃー! 斬撃を飛ばすんじゃなくて、直接斬るにゃー!」
「だって、呪具が!」
 鬼の動きは素早く、斬ろうとしても逃れられる。斬ったとしても、浅ければ即座に再生される。雑に強くなる呪具がもっと力を出してくれれば、簡単に倒せるだろうに。
「……鬼は動きを読んでるにゃー! 剣士の腕輪とは相性が悪いにゃー」
 ケットシーの言葉を聞いて、雑に強くなる呪具は渋々効果を上げる。
 轍夜の動きが突然変わり、鬼は戸惑った。一瞬の後、金色の一閃が鬼の首を捉えた。

 2体の鬼の首が、同時に地に落ち転がる。轍夜がそれを見て息を吐いた時、突如として景色が変わった。

 目を瞬かせる轍夜の眼前には、藤色の髪の男がいる。
「誰?」
「にゃー?」
 ケットシーも状況が分からず、不思議そうに鳴いた。
 男は答えず、代わりの言葉を送る。
「あんたの嫁さんと同じところに送ってやるよ」
「は?」
 轍夜には、さっぱり意味が分からなかった。男は、はぁ、と大仰に溜息を吐く。
「はっきり言わないと分からないのかよ……殺してやるって意味だ。俺は暗殺者だからな」
「リィラと何の関係があるんだ?」
「あの女は杖さえ封じれば、ただの魔術師だ。杖を封じる手段を得たあいつ……呪術師なら、殺れる」
「リィラは呪術師に殺されるってゆってんの? ありえねー」
「そうにゃー。杖が無くてもリィラは強いにゃー。呪術師なんかに負けるはず無いにゃー」
 何をバカげたことを、というような顔をしている轍夜とケットシー。その様子を見て、暗殺者は呆れたような笑みを浮かべる。
「呪術師は、色んな呪具を集めてるんだ。分かるか? 呪具を、色々と持っているんだぞ」
「……」
 そこで初めて、ケットシーは気付いた。リィラが負ける可能性もある、ということに。
 呪具は割と「何でもあり」だ。リィラがいくら強くとも、対抗できない呪具も存在しているだろう。
「テツヤ、早くこいつを倒してリィラのもとへ向かうにゃー」
 焦りを帯びたケットシーの声を聞き、轍夜は真顔になった。
「やべーの?」
「ヤバいにゃー」
「そっか」
 轍夜は剣を構える。それを見て、暗殺者は
「まあ待てよ、もうちょっと話そう」
 ヘラヘラ笑って言った。
「うるさいにゃー!」
 ケットシーの声に合わせるように、轍夜は剣を閃かせる。横なぎの斬撃。
 届くはずの無い距離だ。しかし暗殺者は勘で軽く後ろに跳ぶ。服の裾が斬られて舞った。
「ふーん、その剣、斬撃が飛ぶのか」
 面白そうに呟く暗殺者。泰然自若とした様子は、リィラに近いものを感じる。
「何なのにゃー……。お前、本当に、何者にゃー⁉」
 うすら寒さを感じながら、ケットシーは改めて尋ねた。
「暗殺者って言っただろう。そんなこと聞いてないって? 俺の話を遮ったのはそっちのくせに」
 嘆息しながら、答える。
「俺は、先王の父親の隠し子の息子にして、先王をぶっ殺した張本人ってところだ」
 その言葉を、轍夜は理解できない。
「えーっと……どゆこと?」
「にゃー……つまりこいつは、リィラのいとこってことにゃー! しかも、リィラの父親を殺した犯人にゃー!」
 轍夜は目を丸くした。
「何でそんな……」
 問う声に被せて、暗殺者は語る。
「父から毎日のように恨み言を聞かされてたんだ。王には自分がなるはずだった、王を殺して自分が王になる、ってな。その時は、思わなかったよ。まさか本当に、父が王を殺しに行くなんてな」
 その声からは、呆れと怒りがにじみ出ている。
「結果は返り討ち。そりゃそうだ、父は俺より弱かった。最強と謳われたあの王を、討てるはずが無い。だからな、父の無念を晴らすため、俺があの王を殺すことにした」
「おかしいにゃー。お前だって、返り討ちにされるはずにゃー」
「そう、それが問題だった。どうすれば王を殺せるのか、そればかり考える日が続いた……そんなある日、呪術師と出会った」
 暗殺者は愉快そうな声音で話を続ける。
「呪術師は、王の持つ呪具を狙っていた。呪具泥棒として目をつけていた。そして、俺と同じように悩んでいた。だから、誘ったんだ。手を組もうってな」
「お前から誘ったのかにゃー」
「あの時はな。今回は逆だが。……で、当時の王をぶっ殺した俺は、戦利品として武器を奪った」
「それで自信満々なのかにゃー……神剣にも対抗できる武器があるってことにゃー?」
「その通り。まあ、武器とは言っても剣ばかりだったが。……そして俺には、呪術師から借り受けた呪具がある。あんたがどれだけ強くても、勝つのは俺だ」
 暗殺者は微笑を浮かべた。そして、言うべきことを今思い出したかのように付け足す。
「ここは呪具により形成された異空間。俺とあんた、どちらか一方が死ねば、一定時間経過後に解除される。それ以外の方法では出られない」
 轍夜は息を呑んだ。
「みーはどうなのにゃー?」
「ケットシーは出られる。再入場は不可だがな」
「……テツヤ、みーは先にリィラの様子を見てくるにゃー。もしリィラがピンチでも、みーが何とかするにゃー。だから、焦らずに、着実に……絶対、暗殺者に勝ってここから出てこいにゃー」
「おう!」
 轍夜は勢いよく返事し、暗殺者を見据える。
「わけ分かんねーことベラベラ喋りやがって! よーするに、こっから出たければ、てめーを殺せば良いってことだよな⁉」
「心外だな、質問に答えていたつもりだったんだが」
「うっせー!」
 轍夜は暗殺者に斬りかかった。
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