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14 浜辺で2人途方に暮れる

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「なあ、ここは何処じゃ?なしてワシらはこんな所におるんなら?」

僕のすぐ隣に立っている龍雄が強面の巨漢には似合わない泣き出しだしそうな声で僕に聞いた。

「さあ・・ワシにもサッパリわかりゃせんわい」

僕は答えた。僕にだってそんな事がわかる訳がない。

「ワシは悪い夢でも見よるんかの?一体何がどうなっとるんな!」

龍雄は僕と同じ海と沖に見える大きな島の方角を呆然と眺めていたけれど、すっかり狼狽しきって、落ち着きない視線を忙しなく周囲に泳がせ続けている。

僕は龍雄の表情と姿を見ている内にある疑問が頭に浮かんだ。

「なあ龍雄。ワシらは此処で目を覚ます前は駅の中におった筈じゃろう?」

僕は龍雄に尋ねてみた。

「そうじゃ。駅の中で座っとったら、えろう暑うて頭がぼっとして体も怠うなって来て、しゃがんどったら多分いつの間にか寝てしもうて、気が付いたら何でか知らんけどお前と一緒に此処におったんじゃ」

「ワシも同じじゃ。駅で気を失って、此処で龍雄に起こされて目が覚めた。じゃけどワシは目を覚ます迄の間ずっと
夢を見とったんじゃ」

「夢?」

「そうじゃ。えろう綺麗な女の人が出て来る夢じゃった。ワシは今日の朝にも同じ様な夢を見たとった。龍雄も此処に来る前に何か夢を見んかったか?」

僕はそう言って龍雄の表情を窺った。

「いや。ワシは夢なんか見とりゃせんぞ。そんでその夢がどうかしたんか?」

怪訝な表情を浮かべて龍雄が聞き返してきた。

「いや、別に意味は無いんじゃ」

僕は言葉を濁して話を打ち切った。
はっきりとした事はわからないけれど、どうやらあの正体不明の美しいヒトは龍雄の前には姿を現さなかったみたいだ。
だとしたら何故彼女は僕の前にだけ現れたのか理由が少し気になったけど今はとてもそれどころではなかった。

「なあワシら一体どねえしたらええんじゃ?」

ゴツい体をした龍雄が泣き出しそうな声で僕に聞く。

「どねえする言われてものう」

僕にもすぐには思い浮かばなかった。
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