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1984年(昭和59年)11月25日(日曜日)
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地下鉄丸ノ内線は茗荷谷駅を出た所で地下トンネルを抜けてしばらくは地上の高架の上を走る。
その後再び短いトンネルに入りそれを抜けると右手の方に後楽園ゆうえんちのジェットコースターのレールやその向こう側の、後楽園球場なんかが少しずつ見えてくる様になる。
やがて列車は後楽園駅に到着して、僕と加奈は他の降りる乗客に押し出される様にしてホームに降り立った。
「後楽園には結構来た事があるの?」
改札口に向かいながら彼女に聞いてみた。
「うん、後楽園には割と結構来てたよ。
ワタシのウチからだと王子神谷から地下鉄に乗れば13分で来れたし」
「王子神谷から地下鉄で13分?」
「うん、地下鉄南北線の王子神谷駅」
「へえ」
僕はよくわからないながら頷いた。
どうやら将来は王子の方にも地下鉄が開通して水道橋方面には簡単に出て来られる様になるみたいだ。
僕らは改札口を抜けて外に出ると、後楽園ゆうえんちに沿った道を球場の方に向かって歩き始めた。
「遂に来ちゃったね」
目を丸くして後楽園球場の方を見ている加奈が言った。
「遂に来ちゃったな」
東京ドームを見た事が無い僕が同じ方向を見ながら言った。
後楽園ゆうえんちのジェットコースターが目の前の高いレールの上から僕らの方に向かってはしゃいだ歓声と轟音と共に近付いて来て僕らの横を通り過ぎ再びレールを駆け登ってカーブの向こうに消えて行った。
プロ野球のシーズンは終わっていたけれど、三連休最後の日曜日なので後楽園周辺はいつもよりは人が多かった。
僕らと同じ方向に歩いている人達の中には競馬新聞やスポーツ紙を手にしている人が多くいた。
僕らはその人達の流れに続いて球場沿いを後楽園ホールの隣にある場外馬券場に向かって歩いて行った。
やがて場外馬券場が見えてきて僕と加奈は大人達の世界の中に恐る恐る入って行った。
入口付近に何紙かの競馬新聞をスタンドに並べ赤ペンなんかを売っている売店があったけれどレース予想をする必要が無い僕達はそのまま通り過ぎる。
場内は思っていた以上に多くの大人達で混雑していて騒々しかった。
売店で買ったチューハイを手に競馬新聞を睨んでいたり、場内の至る所に設置されたモニターを見ながら新聞に熱心に赤ペンや赤鉛筆を走らせている人達や発売窓口に並んでいる人達が場内に溢れ反っている。
僕と加奈は見慣れない光景と17歳の僕らには場違いな雰囲気に呑まれながら場内を横切る様に歩いて結局反対側の出入口から再び外に出て来てしまった。
その後再び短いトンネルに入りそれを抜けると右手の方に後楽園ゆうえんちのジェットコースターのレールやその向こう側の、後楽園球場なんかが少しずつ見えてくる様になる。
やがて列車は後楽園駅に到着して、僕と加奈は他の降りる乗客に押し出される様にしてホームに降り立った。
「後楽園には結構来た事があるの?」
改札口に向かいながら彼女に聞いてみた。
「うん、後楽園には割と結構来てたよ。
ワタシのウチからだと王子神谷から地下鉄に乗れば13分で来れたし」
「王子神谷から地下鉄で13分?」
「うん、地下鉄南北線の王子神谷駅」
「へえ」
僕はよくわからないながら頷いた。
どうやら将来は王子の方にも地下鉄が開通して水道橋方面には簡単に出て来られる様になるみたいだ。
僕らは改札口を抜けて外に出ると、後楽園ゆうえんちに沿った道を球場の方に向かって歩き始めた。
「遂に来ちゃったね」
目を丸くして後楽園球場の方を見ている加奈が言った。
「遂に来ちゃったな」
東京ドームを見た事が無い僕が同じ方向を見ながら言った。
後楽園ゆうえんちのジェットコースターが目の前の高いレールの上から僕らの方に向かってはしゃいだ歓声と轟音と共に近付いて来て僕らの横を通り過ぎ再びレールを駆け登ってカーブの向こうに消えて行った。
プロ野球のシーズンは終わっていたけれど、三連休最後の日曜日なので後楽園周辺はいつもよりは人が多かった。
僕らと同じ方向に歩いている人達の中には競馬新聞やスポーツ紙を手にしている人が多くいた。
僕らはその人達の流れに続いて球場沿いを後楽園ホールの隣にある場外馬券場に向かって歩いて行った。
やがて場外馬券場が見えてきて僕と加奈は大人達の世界の中に恐る恐る入って行った。
入口付近に何紙かの競馬新聞をスタンドに並べ赤ペンなんかを売っている売店があったけれどレース予想をする必要が無い僕達はそのまま通り過ぎる。
場内は思っていた以上に多くの大人達で混雑していて騒々しかった。
売店で買ったチューハイを手に競馬新聞を睨んでいたり、場内の至る所に設置されたモニターを見ながら新聞に熱心に赤ペンや赤鉛筆を走らせている人達や発売窓口に並んでいる人達が場内に溢れ反っている。
僕と加奈は見慣れない光景と17歳の僕らには場違いな雰囲気に呑まれながら場内を横切る様に歩いて結局反対側の出入口から再び外に出て来てしまった。
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