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第2話 騎士団の館にて
〇
翌朝、窓の外は一面の銀世界だった。夜の間にさらに雪が降ったらしい。分厚い雲の隙間から淡い光が差し込み、辺境の村を白く包んでいる。王都では見られなかった静寂。まるで世界が息を潜めているようだった。
暖炉の火はまだ燃えていた。私はミーナに借りた厚手の毛布を肩にかけながら、少しずつ身を起こす。体の痛みは残っているが、熱はもう下がっていた。
ベッドの横のテーブルには、昨夜ギルバートが置いていった水差しとスープ皿がそのままだった。飲みかけのスープは冷めていたが、香りだけはまだ優しかった。
ぼんやりしていると、扉の外で軽いノックがした。
「レティシアさん、起きてますか?」
「ええ。お入りになって」
扉が開き、ミーナが顔を覗かせた。両手にトレイを持ち、にっこりと微笑む。
「おはようございます。お加減はいかがです?」
「だいぶ良くなったわ。ご心配をかけました」
「よかった……! 団長も安心されますね。あの方、夜中まで何度も様子を見に来てたんですよ」
「まあ……」
想像もしなかった言葉に、思わず頬が熱くなる。ギルバートが、あの無骨な人が、わざわざ――?
ミーナがテーブルに朝食を並べていく。焼き立てのパン、チーズ、野菜スープ。それだけのはずなのに、なんて温かい光景だろう。
「ここは、いつもこうして騎士団員の方々と食事を?」
「ええ、基本的にはみんな食堂で一緒に食べます。けど、今朝はレティシアさんの分だけ、団長が『部屋で食べさせてやれ』って」
「……そうなのね」
あの夜の冷たさが、嘘のように胸が温まる。王都では誰もが私を避けた。手を差し伸べる者などいなかった。それが、追放された先の辺境で、見知らぬ人たちから向けられるこの優しさ――どこかくすぐったい。
パンをかじると、外の風が窓を叩いた。白い雪片がちらりと舞い込み、火の明かりに溶けていく。
「この辺りの冬は、いつまで続くの?」
「だいたい春先までですね。雪が溶けるまでは外仕事も減るので、騎士団も交代で村の見回りくらいしかしてません」
「静かなのね」
「はい。……だから、レティシアさんが来てから、館がちょっと明るくなった気がします」
ミーナの言葉に、私は少しだけ笑った。
「そう感じてくれるなら、嬉しいわ」
ミーナが食器を片付けたあと、私はゆっくりと立ち上がる。厚いカーテンを開けると、外の雪が朝日にきらめいた。王都では、白い雪すら灰色に見えた。けれど今は、純粋な白が目にまぶしい。
そのとき、廊下のほうで重い足音が近づいた。
「入っていいか?」
「どうぞ」
扉が開くと、ギルバートが姿を現した。昨日と同じ黒い外套に、雪を払った跡が残っている。彼は部屋を一瞥し、私が立っているのを見て眉を上げた。
「もう歩けるのか。思ったより回復が早いな」
「ご迷惑をおかけしました。おかげさまで」
「礼を言われるようなことじゃない。俺は当たり前のことをしただけだ」
「でも……感謝しています。命を拾っていただいたのですもの」
彼の目が、少しだけ柔らかくなった。
「昨日は何も聞かなかったが、もう少し話してもいいか?」
「……はい」
「王都から来たのは、事情があってのことだろう。ここは辺境だ。追放された者、流れてきた者、みんな訳ありさ。誰も過去を詮索しない。それでも……」
彼はそこで言葉を切り、視線を窓の外に向けた。
「お前の手、綺麗だな」
「え?」
「剣を握ったことも、土を掘ったこともない。けど、誰かを助けるための手には見える」
不意にそんなことを言われて、胸が跳ねた。何かを見透かされているようで、息が詰まる。
「……貴族の娘でした。けれど、もうその名は失われました」
「そうか」
ギルバートはそれ以上、何も聞かなかった。ただ、短くうなずいてから続けた。
「この館で働きたい者には、必ず役目を与える。今は体を休めるのが仕事だ。慣れてきたら、村の孤児院を手伝ってもらうといい。世話好きの修道女がいてな、きっと喜ぶ」
「私なんかが……役に立てるでしょうか」
「立てるさ。あんたには、そういう目をしてる」
その言葉に、心の奥が揺れた。誰かに「役に立てる」と言われたのは、いつ以来だろう。王都では、価値のない女として追放されたのに。
「ありがとうございます、ギルバート様」
「ギルバートでいいと言ったはずだ」
「……では、ギルバート。私も、あなたの言葉に報いるように努めますわ」
彼は一瞬驚いたように私を見、それから小さく笑った。
「それでいい。……あんた、強いな」
「いいえ。ただ、弱音を吐く暇がないだけです」
「なるほど」
短い会話の中に、なぜか不思議な信頼のようなものが芽生えていた。
ギルバートが部屋を出るころ、雪はさらに強くなっていた。扉の隙間から吹き込む風が冷たくても、私の胸は不思議と温かかった。
彼の足音が遠ざかっていく。
静寂の中、私は手のひらを見つめた。――誰かを助けられる手。
本当にそんなふうに見えるのだろうか。
でも、もしそうなら……この地で、少しだけ生き直してみてもいいかもしれない。
暖炉の火がぱち、と弾けた。
それは、私の心の奥で灯った小さな炎に、よく似ていた。
△
翌日。朝の光が窓から差し込み、館の大広間を金色に染めていた。私はミーナに案内され、初めて廊下の外へ出た。壁には辺境の地図と古い武具が飾られていて、どれも磨かれている。寒い空気の中でも、木材の匂いと焚き火の煙が混じり、どこか懐かしい。
「こちらが食堂です」
ミーナが扉を押し開けると、活気ある声が一斉に飛び込んできた。数十人の騎士たちが、長いテーブルに並び、朝食をとっている。焼いた肉の香り、パンの香ばしさ。だが、私が入ると一瞬、空気が止まった。
誰もが見知らぬ女を見ている。貴族風の服を着た、薄汚れた異邦人。私は視線に怯えないように、ゆっくりと微笑んだ。
「おはようございます」
その一言で、場が少しだけ和らぐ。がっしりした男たちの中から、ひとりが立ち上がった。
「おい、こいつが団長が拾ったって女か?」
「そうだよ。昨日の吹雪の中で倒れてたらしい」
「死んでてもおかしくねぇぞ。団長が運んだんだってよ」
どの声にも悪意はない。ただ、好奇心と驚きが混じっている。
「お前たち、仕事はどうした」
背後から低い声が響く。ギルバートが入ってきた。男たちは一斉に背筋を伸ばす。
「団長、おはようございます!」
「おはよう。……見苦しい真似はするな。客人だ」
「へいっ!」
その一喝で、空気が落ち着いた。彼が視線をこちらに向ける。
「起きて歩けるようになったか」
「ええ。おかげさまで」
「なら、食事をとれ。ミーナ、席を」
「はい、団長!」
私は促されるまま、テーブルの端に座った。パンと温かいミルクが差し出される。騎士たちはちらちらとこちらを見ながらも、再び賑やかに話し始めた。
「王都から来たのか?」
「団長が珍しく拾ってきたんだ。奇跡だぜ」
「団長が? 女を?」
「おい、それ以上言うと殴られるぞ」
そんな囁きが、笑いとともに飛び交う。
ギルバートは私の向かいに座り、黙ってパンを食べていた。彼がいるだけで、全員の態度が自然と改まる。
「すごいわね。皆さん、団長を尊敬しているのね」
「尊敬というより、頭が上がらんのさ」
向かいにいた若い騎士が笑う。
「団長は十年前の戦で一人で三十人を斬ったって噂だぞ。けど、本人はその話をすると怒る」
「戦……」
その単語に、私は少しだけ眉を寄せた。血や争いの匂いのないこの館に、そんな過去があるとは思わなかった。
「戦はもう終わった。過去の話だ」
ギルバートが低く言った。騎士たちは口を閉ざす。
「今は辺境を守るだけでいい。……食え。話は後にしろ」
「へい」
再び食器の音が戻った。彼の言葉には、命令というより“守るための強さ”があった。誰も逆らえないのは、恐れではなく信頼ゆえだと感じた。
食事を終えると、ギルバートが立ち上がった。
「レティシア。少し外を歩けるか?」
「はい」
「案内する」
彼の後について館を出ると、冷たい風が頬を打った。目の前に広がるのは、雪原の中に立つ小さな集落。煙突から白い煙が上がり、遠くに子どもたちの声が聞こえる。
「これがアルミエ村だ。貧しいが、皆よく働く」
ギルバートの声は淡々としている。だがその奥には誇りが感じられた。
「……美しい場所ですね」
「そう思うか?」
「ええ。王都より、ずっと」
「王都を見たことがある者が、そう言うのは珍しいな」
「光ばかりで、影が多い街でした」
私の言葉に、彼は一瞬だけこちらを見た。灰色の瞳が、雪の光を受けて淡く揺れる。
「この村では、身分も過去も関係ない。人が人として働き、飯を食うだけだ。……それが気に入るなら、ここにいていい」
風が髪を揺らす。雪の冷たさの中で、その言葉だけが温かかった。
「……ありがとうございます」
「ただし、一つだけ約束してほしい」
「はい」
「嘘をつくな。誰かを欺こうとするな。……それだけは、許さない」
鋭い言葉だった。けれど、心に響く。
「約束します」
私がそう答えると、彼は少しだけ頷いた。
「今日はもう冷える。戻れ」
「ギルバートは?」
「俺は見回りだ」
「寒いのに」
「慣れてる」
その短い返事に、なぜか胸が締めつけられた。
館へ戻る途中、ミーナが駆け寄ってきた。
「レティシアさん! 団長と散歩してたんですね?」
「ええ。ほんの少しだけ」
「団長が誰かと外を歩くなんて、珍しいですよ」
「そうなの?」
「はい。いつもお一人です。騎士団のみんなは慕ってるけど、距離があるんです。だから、なんだか嬉しいです」
ミーナの言葉に、私は微笑んだ。
その夜。窓の外で雪が静かに降り積もっていく。私は暖炉の前で、ミーナがくれた糸と針を手に取った。
王都では飾りのようにしか使わなかった手が、今は本当に誰かのために動かせる。布を縫いながら、ふとギルバートの顔を思い浮かべる。
――灰色の瞳。凛とした声。
彼の手は剣を握るための手。でも、その手が私を抱き上げたときのぬくもりを、私はまだ忘れられなかった。
針先に灯りが反射し、小さくきらめく。
この辺境で、私の物語が少しずつ動き出している。
それは、ゆっくりと――けれど確かに温かい始まりだった。
◇
夜。館の窓には風の唸りが響いていた。雪はさらに激しさを増し、外の景色は真っ白に溶けている。私は小さなランプを手に、裁縫部屋の片隅で糸を通していた。ミーナが持ってきてくれた破れたマントを直すのだ。厚い毛布のような生地は縫いにくいけれど、不思議と手は動く。針が布を通るたびに、心の中のざらついた痛みが少しずつほぐれていくようだった。
「……こんな作業、いつ以来かしら」
思わず独りごちる。王都にいた頃は、すべて侍女がやってくれていた。私の手は装飾品を持つためのもの、そう教えられて育った。けれど今は、こうして自分の手で布を縫い合わせている。それが、なぜだか嬉しい。
扉の外で足音がした。低い靴音。誰かが近づいてくる。
「夜更かしか?」
声の主はギルバートだった。外套の肩に雪が積もっている。
「……お仕事を終えられたのですか?」
「巡回をな。吹雪がひどいから村の焚き火を見て回ってた。凍えたら死人が出る」
「お疲れ様です」
彼は「ふん」と鼻を鳴らしてから、私の隣に目を向けた。
「それは……マントか?」
「ええ。破れていたので、少し縫ってみようかと」
「俺のやつか?」
「……そう、かもしれません」
彼は近づいて、縫い目を確かめた。太い指が布に触れる。その指が一瞬だけ私の手の甲をかすめた。火に照らされた横顔が、柔らかく笑う。
「上手いな。まるで職人だ」
「そんな、大げさな……」
「本気で褒めてる。針の扱いは見事だ」
不器用な言葉。それでも真剣さが伝わってきて、胸が温かくなった。
「昔、母に教わったことがあるんです」
「母親は王都に?」
「……いえ。もう、いません」
沈黙が流れた。火がぱち、と音を立てる。
「すまない」
「謝ることではありません。……もう随分前のことですから」
「そうか」
それきり、彼はそれ以上聞かなかった。無理に同情の言葉をかけることもない。ただ、黙って私の隣に腰を下ろした。
しばらくして、彼がぽつりと言った。
「この館に来て、怖くなかったか?」
「怖い……?」
「知らない土地、知らない男たちの中だ。普通なら怯えてもおかしくない」
「最初は少し。けれど今は、不思議と落ち着くんです」
「落ち着く?」
「はい。……ここには、偽りがないから」
その言葉に、ギルバートの瞳が静かに揺れた。
「王都は、違ったのか」
「ええ。みんなが笑っていても、誰も本音を言わない世界でした。誰かが誰かを陥れないと、生きていけない。……私も、そんな場所で呼吸をしていたんです」
言葉にすると、胸が痛む。過去はまだ、消えてはいない。けれどこの暖かな部屋では、痛みが少しだけ遠くなる。
「俺は……」と、ギルバートが言いかけて、少し息を詰まらせた。
「俺は戦場で長く生きた。命令ひとつで人を斬り、守ったはずの者に裏切られた。……だから、お前の言う“偽りのない場所”を作りたかったのかもしれん」
「それが、この館なのですね」
「そうだ。誰も飾らない。誰も嘘をつかない。貴族の名も、罪も、すべて雪の下に埋める。……そういう場所にした」
その声は硬いが、優しかった。私はゆっくりとうなずいた。
「素敵な場所ですわ」
「お前がそう言うなら、報われる」
「報われる……?」
「この館は、俺にとって罪滅ぼしみたいなもんだからな」
静かに笑って言う彼の横顔が、なぜか悲しげに見えた。
私は針を止め、そっと彼の外套の端を撫でた。
「あなたは優しい方よ、ギルバート」
「俺が?」
「ええ。優しい人は、自分を責めるものです」
「……そういうの、慣れてるな」
「人を見る目だけは、あるつもりです」
私の言葉に、ギルバートはしばらく黙っていたが、やがて苦笑した。
「……やっぱり強い女だ」
「強くなんてありません。ただ、生きていたいだけです」
「それで十分だ」
外では風が一層強く吹き荒れた。雪の音が壁を叩く。けれど、部屋の中は暖かい。
ギルバートが立ち上がり、私の肩に毛布をかけた。
「遅い。もう寝ろ」
「あなたは?」
「もう少し火を見てから。すぐ行く」
「……わかりました」
立ち上がりかけた私に、彼がふと囁く。
「レティシア」
「はい?」
「お前が来てから、この館の空気が少し変わった。悪くない変化だ」
その言葉に、胸の奥が静かに熱を帯びた。
「ありがとうございます。……私も、ここに来られてよかった」
私は深く礼をして部屋を出た。廊下を歩くと、薪の香りとともに心が落ち着いていく。
自分が今、確かに生きていることを感じながら。
窓の外を見れば、雪がやわらかく降り注いでいた。
――この辺境の地で、もう一度、人生を始められるのかもしれない。
そう思った瞬間、胸の奥の冷たさが、ゆっくりと溶けていくのを感じた。
〇
翌朝、窓の外は一面の銀世界だった。夜の間にさらに雪が降ったらしい。分厚い雲の隙間から淡い光が差し込み、辺境の村を白く包んでいる。王都では見られなかった静寂。まるで世界が息を潜めているようだった。
暖炉の火はまだ燃えていた。私はミーナに借りた厚手の毛布を肩にかけながら、少しずつ身を起こす。体の痛みは残っているが、熱はもう下がっていた。
ベッドの横のテーブルには、昨夜ギルバートが置いていった水差しとスープ皿がそのままだった。飲みかけのスープは冷めていたが、香りだけはまだ優しかった。
ぼんやりしていると、扉の外で軽いノックがした。
「レティシアさん、起きてますか?」
「ええ。お入りになって」
扉が開き、ミーナが顔を覗かせた。両手にトレイを持ち、にっこりと微笑む。
「おはようございます。お加減はいかがです?」
「だいぶ良くなったわ。ご心配をかけました」
「よかった……! 団長も安心されますね。あの方、夜中まで何度も様子を見に来てたんですよ」
「まあ……」
想像もしなかった言葉に、思わず頬が熱くなる。ギルバートが、あの無骨な人が、わざわざ――?
ミーナがテーブルに朝食を並べていく。焼き立てのパン、チーズ、野菜スープ。それだけのはずなのに、なんて温かい光景だろう。
「ここは、いつもこうして騎士団員の方々と食事を?」
「ええ、基本的にはみんな食堂で一緒に食べます。けど、今朝はレティシアさんの分だけ、団長が『部屋で食べさせてやれ』って」
「……そうなのね」
あの夜の冷たさが、嘘のように胸が温まる。王都では誰もが私を避けた。手を差し伸べる者などいなかった。それが、追放された先の辺境で、見知らぬ人たちから向けられるこの優しさ――どこかくすぐったい。
パンをかじると、外の風が窓を叩いた。白い雪片がちらりと舞い込み、火の明かりに溶けていく。
「この辺りの冬は、いつまで続くの?」
「だいたい春先までですね。雪が溶けるまでは外仕事も減るので、騎士団も交代で村の見回りくらいしかしてません」
「静かなのね」
「はい。……だから、レティシアさんが来てから、館がちょっと明るくなった気がします」
ミーナの言葉に、私は少しだけ笑った。
「そう感じてくれるなら、嬉しいわ」
ミーナが食器を片付けたあと、私はゆっくりと立ち上がる。厚いカーテンを開けると、外の雪が朝日にきらめいた。王都では、白い雪すら灰色に見えた。けれど今は、純粋な白が目にまぶしい。
そのとき、廊下のほうで重い足音が近づいた。
「入っていいか?」
「どうぞ」
扉が開くと、ギルバートが姿を現した。昨日と同じ黒い外套に、雪を払った跡が残っている。彼は部屋を一瞥し、私が立っているのを見て眉を上げた。
「もう歩けるのか。思ったより回復が早いな」
「ご迷惑をおかけしました。おかげさまで」
「礼を言われるようなことじゃない。俺は当たり前のことをしただけだ」
「でも……感謝しています。命を拾っていただいたのですもの」
彼の目が、少しだけ柔らかくなった。
「昨日は何も聞かなかったが、もう少し話してもいいか?」
「……はい」
「王都から来たのは、事情があってのことだろう。ここは辺境だ。追放された者、流れてきた者、みんな訳ありさ。誰も過去を詮索しない。それでも……」
彼はそこで言葉を切り、視線を窓の外に向けた。
「お前の手、綺麗だな」
「え?」
「剣を握ったことも、土を掘ったこともない。けど、誰かを助けるための手には見える」
不意にそんなことを言われて、胸が跳ねた。何かを見透かされているようで、息が詰まる。
「……貴族の娘でした。けれど、もうその名は失われました」
「そうか」
ギルバートはそれ以上、何も聞かなかった。ただ、短くうなずいてから続けた。
「この館で働きたい者には、必ず役目を与える。今は体を休めるのが仕事だ。慣れてきたら、村の孤児院を手伝ってもらうといい。世話好きの修道女がいてな、きっと喜ぶ」
「私なんかが……役に立てるでしょうか」
「立てるさ。あんたには、そういう目をしてる」
その言葉に、心の奥が揺れた。誰かに「役に立てる」と言われたのは、いつ以来だろう。王都では、価値のない女として追放されたのに。
「ありがとうございます、ギルバート様」
「ギルバートでいいと言ったはずだ」
「……では、ギルバート。私も、あなたの言葉に報いるように努めますわ」
彼は一瞬驚いたように私を見、それから小さく笑った。
「それでいい。……あんた、強いな」
「いいえ。ただ、弱音を吐く暇がないだけです」
「なるほど」
短い会話の中に、なぜか不思議な信頼のようなものが芽生えていた。
ギルバートが部屋を出るころ、雪はさらに強くなっていた。扉の隙間から吹き込む風が冷たくても、私の胸は不思議と温かかった。
彼の足音が遠ざかっていく。
静寂の中、私は手のひらを見つめた。――誰かを助けられる手。
本当にそんなふうに見えるのだろうか。
でも、もしそうなら……この地で、少しだけ生き直してみてもいいかもしれない。
暖炉の火がぱち、と弾けた。
それは、私の心の奥で灯った小さな炎に、よく似ていた。
△
翌日。朝の光が窓から差し込み、館の大広間を金色に染めていた。私はミーナに案内され、初めて廊下の外へ出た。壁には辺境の地図と古い武具が飾られていて、どれも磨かれている。寒い空気の中でも、木材の匂いと焚き火の煙が混じり、どこか懐かしい。
「こちらが食堂です」
ミーナが扉を押し開けると、活気ある声が一斉に飛び込んできた。数十人の騎士たちが、長いテーブルに並び、朝食をとっている。焼いた肉の香り、パンの香ばしさ。だが、私が入ると一瞬、空気が止まった。
誰もが見知らぬ女を見ている。貴族風の服を着た、薄汚れた異邦人。私は視線に怯えないように、ゆっくりと微笑んだ。
「おはようございます」
その一言で、場が少しだけ和らぐ。がっしりした男たちの中から、ひとりが立ち上がった。
「おい、こいつが団長が拾ったって女か?」
「そうだよ。昨日の吹雪の中で倒れてたらしい」
「死んでてもおかしくねぇぞ。団長が運んだんだってよ」
どの声にも悪意はない。ただ、好奇心と驚きが混じっている。
「お前たち、仕事はどうした」
背後から低い声が響く。ギルバートが入ってきた。男たちは一斉に背筋を伸ばす。
「団長、おはようございます!」
「おはよう。……見苦しい真似はするな。客人だ」
「へいっ!」
その一喝で、空気が落ち着いた。彼が視線をこちらに向ける。
「起きて歩けるようになったか」
「ええ。おかげさまで」
「なら、食事をとれ。ミーナ、席を」
「はい、団長!」
私は促されるまま、テーブルの端に座った。パンと温かいミルクが差し出される。騎士たちはちらちらとこちらを見ながらも、再び賑やかに話し始めた。
「王都から来たのか?」
「団長が珍しく拾ってきたんだ。奇跡だぜ」
「団長が? 女を?」
「おい、それ以上言うと殴られるぞ」
そんな囁きが、笑いとともに飛び交う。
ギルバートは私の向かいに座り、黙ってパンを食べていた。彼がいるだけで、全員の態度が自然と改まる。
「すごいわね。皆さん、団長を尊敬しているのね」
「尊敬というより、頭が上がらんのさ」
向かいにいた若い騎士が笑う。
「団長は十年前の戦で一人で三十人を斬ったって噂だぞ。けど、本人はその話をすると怒る」
「戦……」
その単語に、私は少しだけ眉を寄せた。血や争いの匂いのないこの館に、そんな過去があるとは思わなかった。
「戦はもう終わった。過去の話だ」
ギルバートが低く言った。騎士たちは口を閉ざす。
「今は辺境を守るだけでいい。……食え。話は後にしろ」
「へい」
再び食器の音が戻った。彼の言葉には、命令というより“守るための強さ”があった。誰も逆らえないのは、恐れではなく信頼ゆえだと感じた。
食事を終えると、ギルバートが立ち上がった。
「レティシア。少し外を歩けるか?」
「はい」
「案内する」
彼の後について館を出ると、冷たい風が頬を打った。目の前に広がるのは、雪原の中に立つ小さな集落。煙突から白い煙が上がり、遠くに子どもたちの声が聞こえる。
「これがアルミエ村だ。貧しいが、皆よく働く」
ギルバートの声は淡々としている。だがその奥には誇りが感じられた。
「……美しい場所ですね」
「そう思うか?」
「ええ。王都より、ずっと」
「王都を見たことがある者が、そう言うのは珍しいな」
「光ばかりで、影が多い街でした」
私の言葉に、彼は一瞬だけこちらを見た。灰色の瞳が、雪の光を受けて淡く揺れる。
「この村では、身分も過去も関係ない。人が人として働き、飯を食うだけだ。……それが気に入るなら、ここにいていい」
風が髪を揺らす。雪の冷たさの中で、その言葉だけが温かかった。
「……ありがとうございます」
「ただし、一つだけ約束してほしい」
「はい」
「嘘をつくな。誰かを欺こうとするな。……それだけは、許さない」
鋭い言葉だった。けれど、心に響く。
「約束します」
私がそう答えると、彼は少しだけ頷いた。
「今日はもう冷える。戻れ」
「ギルバートは?」
「俺は見回りだ」
「寒いのに」
「慣れてる」
その短い返事に、なぜか胸が締めつけられた。
館へ戻る途中、ミーナが駆け寄ってきた。
「レティシアさん! 団長と散歩してたんですね?」
「ええ。ほんの少しだけ」
「団長が誰かと外を歩くなんて、珍しいですよ」
「そうなの?」
「はい。いつもお一人です。騎士団のみんなは慕ってるけど、距離があるんです。だから、なんだか嬉しいです」
ミーナの言葉に、私は微笑んだ。
その夜。窓の外で雪が静かに降り積もっていく。私は暖炉の前で、ミーナがくれた糸と針を手に取った。
王都では飾りのようにしか使わなかった手が、今は本当に誰かのために動かせる。布を縫いながら、ふとギルバートの顔を思い浮かべる。
――灰色の瞳。凛とした声。
彼の手は剣を握るための手。でも、その手が私を抱き上げたときのぬくもりを、私はまだ忘れられなかった。
針先に灯りが反射し、小さくきらめく。
この辺境で、私の物語が少しずつ動き出している。
それは、ゆっくりと――けれど確かに温かい始まりだった。
◇
夜。館の窓には風の唸りが響いていた。雪はさらに激しさを増し、外の景色は真っ白に溶けている。私は小さなランプを手に、裁縫部屋の片隅で糸を通していた。ミーナが持ってきてくれた破れたマントを直すのだ。厚い毛布のような生地は縫いにくいけれど、不思議と手は動く。針が布を通るたびに、心の中のざらついた痛みが少しずつほぐれていくようだった。
「……こんな作業、いつ以来かしら」
思わず独りごちる。王都にいた頃は、すべて侍女がやってくれていた。私の手は装飾品を持つためのもの、そう教えられて育った。けれど今は、こうして自分の手で布を縫い合わせている。それが、なぜだか嬉しい。
扉の外で足音がした。低い靴音。誰かが近づいてくる。
「夜更かしか?」
声の主はギルバートだった。外套の肩に雪が積もっている。
「……お仕事を終えられたのですか?」
「巡回をな。吹雪がひどいから村の焚き火を見て回ってた。凍えたら死人が出る」
「お疲れ様です」
彼は「ふん」と鼻を鳴らしてから、私の隣に目を向けた。
「それは……マントか?」
「ええ。破れていたので、少し縫ってみようかと」
「俺のやつか?」
「……そう、かもしれません」
彼は近づいて、縫い目を確かめた。太い指が布に触れる。その指が一瞬だけ私の手の甲をかすめた。火に照らされた横顔が、柔らかく笑う。
「上手いな。まるで職人だ」
「そんな、大げさな……」
「本気で褒めてる。針の扱いは見事だ」
不器用な言葉。それでも真剣さが伝わってきて、胸が温かくなった。
「昔、母に教わったことがあるんです」
「母親は王都に?」
「……いえ。もう、いません」
沈黙が流れた。火がぱち、と音を立てる。
「すまない」
「謝ることではありません。……もう随分前のことですから」
「そうか」
それきり、彼はそれ以上聞かなかった。無理に同情の言葉をかけることもない。ただ、黙って私の隣に腰を下ろした。
しばらくして、彼がぽつりと言った。
「この館に来て、怖くなかったか?」
「怖い……?」
「知らない土地、知らない男たちの中だ。普通なら怯えてもおかしくない」
「最初は少し。けれど今は、不思議と落ち着くんです」
「落ち着く?」
「はい。……ここには、偽りがないから」
その言葉に、ギルバートの瞳が静かに揺れた。
「王都は、違ったのか」
「ええ。みんなが笑っていても、誰も本音を言わない世界でした。誰かが誰かを陥れないと、生きていけない。……私も、そんな場所で呼吸をしていたんです」
言葉にすると、胸が痛む。過去はまだ、消えてはいない。けれどこの暖かな部屋では、痛みが少しだけ遠くなる。
「俺は……」と、ギルバートが言いかけて、少し息を詰まらせた。
「俺は戦場で長く生きた。命令ひとつで人を斬り、守ったはずの者に裏切られた。……だから、お前の言う“偽りのない場所”を作りたかったのかもしれん」
「それが、この館なのですね」
「そうだ。誰も飾らない。誰も嘘をつかない。貴族の名も、罪も、すべて雪の下に埋める。……そういう場所にした」
その声は硬いが、優しかった。私はゆっくりとうなずいた。
「素敵な場所ですわ」
「お前がそう言うなら、報われる」
「報われる……?」
「この館は、俺にとって罪滅ぼしみたいなもんだからな」
静かに笑って言う彼の横顔が、なぜか悲しげに見えた。
私は針を止め、そっと彼の外套の端を撫でた。
「あなたは優しい方よ、ギルバート」
「俺が?」
「ええ。優しい人は、自分を責めるものです」
「……そういうの、慣れてるな」
「人を見る目だけは、あるつもりです」
私の言葉に、ギルバートはしばらく黙っていたが、やがて苦笑した。
「……やっぱり強い女だ」
「強くなんてありません。ただ、生きていたいだけです」
「それで十分だ」
外では風が一層強く吹き荒れた。雪の音が壁を叩く。けれど、部屋の中は暖かい。
ギルバートが立ち上がり、私の肩に毛布をかけた。
「遅い。もう寝ろ」
「あなたは?」
「もう少し火を見てから。すぐ行く」
「……わかりました」
立ち上がりかけた私に、彼がふと囁く。
「レティシア」
「はい?」
「お前が来てから、この館の空気が少し変わった。悪くない変化だ」
その言葉に、胸の奥が静かに熱を帯びた。
「ありがとうございます。……私も、ここに来られてよかった」
私は深く礼をして部屋を出た。廊下を歩くと、薪の香りとともに心が落ち着いていく。
自分が今、確かに生きていることを感じながら。
窓の外を見れば、雪がやわらかく降り注いでいた。
――この辺境の地で、もう一度、人生を始められるのかもしれない。
そう思った瞬間、胸の奥の冷たさが、ゆっくりと溶けていくのを感じた。
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