パーティーから追放され、ギルドから追放され、国からも追放された俺は、追放者ギルドをつくってスローライフを送ることにしました。

さら

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第9話 無能の集まりと呼ばれて

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 害獣退治の依頼を成功させた翌日。俺たちは谷を出て、隣村の酒場に立ち寄っていた。物資の調達と情報収集、それに久々にまともな酒を買うためだ。

「やっぱり人が多い酒場は賑やかですね!」リナが目を輝かせる。
「うぉぉぉ、樽ごと抱えたい!」グレンはもうカウンターに駆け寄っていた。
「……私、火を使わないように気をつける」フィオはおずおずと腰掛け、杖を抱きしめている。
「調合に必要な素材も、ここなら見つかるはずです」セリウスは帳簿を開き、冷静に在庫を確認していた。

 俺は彼らを眺めて頷いた。これが“追放者ギルド”の日常だ。だがそのとき、酒場の奥からざわめきが起こった。

「あれが噂の“追放者ギルド”だってよ」
「ははっ、無能の寄せ集めじゃねぇか!」
「国もギルドも捨てたゴミどもだろ?」

 鎧を着込んだ冒険者たちがこちらを見て、口々に嘲笑した。



「カイルさん、なんか……笑われてますよ?」リナが不安げに袖を引っ張る。
「気にするな。俺たちは俺たちの仕事をするだけだ」

 だが、グレンが黙っていなかった。

「おい! ゴミとはなんだ! 俺は王都最強の戦士だったんだぞ!」

「最強? 酒癖で追放されたって噂の奴じゃねぇか!」冒険者たちは大笑いする。

 フィオは顔を赤くして立ち上がった。

「わ、私だって……! 魔法学校で一番魔力が強かったのに、暴発するからって……!」

「暴発娘か。酒場ごと吹き飛ばすんじゃないのか?」

 また笑い声が起こる。セリウスも口を開いた。

「……私は保存薬を研究していました。役立つはずなのに“地味だ”と言われて」

「地味すぎて誰も気づかなかったんだろ!」

 彼らの言葉に胸が熱くなった。俺は立ち上がり、酒場全体に声を響かせた。

「俺たちは追放者だ。国にも、ギルドにも要らないと言われた。だが――俺たちには、ここでしかできないことがある」

 笑い声が少しだけ静まる。俺は続けた。

「昨日、俺たちは村を襲う害獣を退治した。誰も傷つかず、畑は守られた。村人たちは涙を流して喜んだ。それで十分だ」

「ふん、口だけは達者だな」冒険者の一人が鼻を鳴らす。
「なら勝負しようじゃねぇか。森に現れる“岩トカゲ”を一晩で仕留められるか? あれを倒せなきゃ、ただの口だけだ」

 周囲がざわついた。岩トカゲ――硬い鱗に覆われ、普通の剣では刃が通らない魔獣。依頼としては難易度が高い。

 俺は仲間たちを見回す。グレンはにやりと笑い、リナは拳を握り、フィオは少し震えながらも頷き、セリウスは眼鏡を光らせた。

「……やってやろう。追放者ギルドの名にかけて」



 その夜、俺たちは森へ向かった。月明かりに照らされた岩場に、巨大なトカゲが姿を現す。鱗は鉄より硬く、赤い目がぎらりと光った。

「さぁ、俺たちの力を見せてやるぞ!」

 グレンが大剣を構え、フィオが杖を握り、セリウスが瓶を取り出し、リナは支度を整える。俺は全体を見渡し、作戦を叫んだ。

「狙いは顎の下! 鱗の隙間を突く!」

 追放者ギルド、初めての対外的な戦いが始まろうとしていた。
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