パーティーから追放され、ギルドから追放され、国からも追放された俺は、追放者ギルドをつくってスローライフを送ることにしました。

さら

文字の大きさ
10 / 70

第10話 岩トカゲ討伐

しおりを挟む
 夜の森。月明かりの下、岩のような鱗を持つ巨大トカゲが姿を現した。体長三メートル、赤い目がぎらりと光り、地を這う度に岩を砕く。

「ひっ……本当に出た……!」フィオが杖を握る手を震わせる。
「でかいな! だが斬りごたえがありそうだ!」グレンは大剣を構え、笑っている。
「鱗は硬い……だが、隙間は必ずあるはず」セリウスは瓶を取り出し、液体を混ぜ始めた。
「カイルさん、段取りお願いします!」リナが皆の視線を俺に向ける。

 俺は息を吸い込み、叫んだ。

「いいか、狙うのは顎の下! そこは鱗が薄い! フィオ、火で注意を引け! グレンは正面から受け止めろ! セリウスは薬を用意! リナは後方でサポート!」

「おうっ!」
「わ、わかった!」



 まずはフィオが杖を掲げ、呪文を唱える。

「ファイアボルト!」

 火の矢が放たれ、岩トカゲの鼻先に炸裂。爆風に森の枝葉が揺れる。狙いは少し逸れたが、それで十分だった。怒り狂ったトカゲが咆哮し、こちらへ突進してくる。

「ぐはは! 任せろぉ!」

 グレンが正面に立ちはだかり、大剣で受け止めた。金属と岩がぶつかる音が響き、地面に衝撃が走る。トカゲの巨体がグレンを押し潰そうとするが、奴は酒を断っていた分、力が冴えわたっていた。

「ぬおおおっ!」

 気合いで押し返し、大剣を振り下ろす。しかし、鱗は硬く、刃が弾かれた。

「硬ぇ!」

「セリウス!」俺が叫ぶ。

「今です!」

 セリウスが投げた瓶が岩トカゲの頭上で割れ、緑の液体が降り注ぐ。鱗がじゅうじゅうと音を立て、表面がわずかに柔らかくなった。

「弱点を作った! 狙え!」

 俺の合図に、グレンが再び大剣を振るう。今度は刃が鱗に食い込み、血飛沫が上がった。

「やった!」リナが叫ぶ。

 だが岩トカゲは怒り狂い、尾を振り回す。巨木がなぎ倒され、俺たちも吹き飛ばされそうになる。

「フィオ!」

「ま、また!? で、でも……やってみる!」

 フィオは必死に杖を掲げた。

「……ファイアボール!」

 ドン、と火球が炸裂。狙いは少し外れたが、爆風でトカゲの視界が塞がれる。その隙に俺はロープを取り出し、グレンと息を合わせてトカゲの首に絡めた。

「引けぇ!」

「うおおおお!」

 二人で力を込め、トカゲの頭を無理やり持ち上げる。露わになった顎の下――そこが弱点だ。

「今だ、フィオ!」

「い、いけぇぇぇ!」

 炎の矢が放たれ、見事に顎の下へ突き刺さった。轟音と共に火花が散り、岩トカゲが悲鳴を上げて崩れ落ちた。



 静寂が訪れる。俺たちは息を切らし、互いの顔を見合わせた。

「……倒した?」
「倒した!」

 歓声が上がった。グレンは大剣を突き立てて笑い、リナは涙目で拍手し、セリウスは瓶を大事そうに抱え、フィオは杖をぎゅっと握って震えていた。

「やったんだ……私の魔法が、ちゃんと当たった……!」

 フィオの目から涙がこぼれる。俺は彼女の頭を軽く叩いた。

「成功だ。暴発でも失敗でもない。お前の力で仕留めたんだ」



 翌日。酒場に戻ると、昨日俺たちを笑った冒険者たちが目を丸くした。

「ま、まさか……岩トカゲを!?」
「追放者ギルドが……?」

 俺は岩トカゲの角を酒場の床に叩きつけた。

「証拠だ。俺たちは追放者だが、無能じゃない」

 冒険者たちは口を噤み、酒場は静まり返った。やがて、村人たちが拍手を始めた。

「追放者ギルド万歳!」
「よくやってくれた!」

 仲間たちは顔を赤らめ、照れながら笑っていた。

 ――こうして追放者ギルドの名は、谷を越え、周囲の村々に広がっていった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

追放された荷物持ち、スキル【アイテムボックス・無限】で辺境スローライフを始めます

黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティーで「荷物持ち」として蔑まれ、全ての責任を押し付けられて追放された青年レオ。彼が持つスキル【アイテムボックス】は、誰もが「ゴミスキル」と笑うものだった。 しかし、そのスキルには「容量無限」「時間停止」「解析・分解」「合成・創造」というとんでもない力が秘められていたのだ。 全てを失い、流れ着いた辺境の村。そこで彼は、自分を犠牲にする生き方をやめ、自らの力で幸せなスローライフを掴み取ることを決意する。 超高品質なポーション、快適な家具、美味しい料理、果ては巨大な井戸や城壁まで!? 万能すぎる生産スキルで、心優しい仲間たちと共に寂れた村を豊かに発展させていく。 一方、彼を追放した勇者パーティーは、荷物持ちを失ったことで急速に崩壊していく。 「今からでもレオを連れ戻すべきだ!」 ――もう遅い。彼はもう、君たちのための便利な道具じゃない。 これは、不遇だった青年が最高の仲間たちと出会い、世界一の生産職として成り上がり、幸せなスローライフを手に入れる物語。そして、傲慢な勇者たちが自業自得の末路を辿る、痛快な「ざまぁ」ストーリー!

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

偽りの呪いで追放された聖女です。辺境で薬屋を開いたら、国一番の不運な王子様に拾われ「幸運の女神」と溺愛されています

黒崎隼人
ファンタジー
「君に触れると、不幸が起きるんだ」――偽りの呪いをかけられ、聖女の座を追われた少女、ルナ。 彼女は正体を隠し、辺境のミモザ村で薬師として静かな暮らしを始める。 ようやく手に入れた穏やかな日々。 しかし、そんな彼女の前に現れたのは、「王国一の不運王子」リオネスだった。 彼が歩けば嵐が起き、彼が触れば物が壊れる。 そんな王子が、なぜか彼女の薬草店の前で派手に転倒し、大怪我を負ってしまう。 「私の呪いのせいです!」と青ざめるルナに、王子は笑った。 「いつものことだから、君のせいじゃないよ」 これは、自分を不幸だと思い込む元聖女と、天性の不運をものともしない王子の、勘違いから始まる癒やしと幸運の物語。 二人が出会う時、本当の奇跡が目を覚ます。 心温まるスローライフ・ラブファンタジー、ここに開幕。

処理中です...