パーティーから追放され、ギルドから追放され、国からも追放された俺は、追放者ギルドをつくってスローライフを送ることにしました。

さら

文字の大きさ
16 / 70

第16話 錬金術師の薬、村を救う

しおりを挟む
 追放者ギルドの名が広まり始めて数日。谷には今日も行商人が訪れていた。荷馬車には野菜、果物、布地、雑貨が積まれ、村人たちが賑やかに集まっている。

「セリウスさん、この薬……本当に効くんですか?」農夫の男が不安げに瓶を見つめる。
「はい。野菜に薄めて振りかければ、腐りにくくなります。保存期間は二倍です」
「ほ、本当か!」

 セリウスの調合した保存薬は、村人たちの間で瞬く間に評判になった。



 その日、俺も畑に立って作業を見守っていた。農夫たちが収穫した野菜に薬を使い、数日後、傷まずに残っているのを確認した瞬間、村全体が沸き立った。

「これで食糧不足に悩まなくて済む!」
「冬越しが楽になるぞ!」

 村人たちは口々にセリウスを褒め称え、彼は珍しく頬を赤らめた。

「……私はただ、派手ではない研究をしてきただけです」
「派手じゃなくても命を守れる。お前の研究は最高だ」俺が肩を叩くと、セリウスは小さく笑った。



 一方でリナは保存された野菜を使い、新しい料理を次々と生み出していた。

「これ、塩漬けにした大根です! 日持ちしますよ!」
「おぉ、うまい!」グレンが頬張り、フィオが「しょっぱいけど、ご飯が欲しくなる……」と呟く。
「乾燥ハーブと合わせればさらに保存性が増しますね」セリウスが分析する。

 エレナはそれらを丁寧に帳簿に記録し、裁縫で袋を作り、保存食を詰め込んで行商人に渡した。

「これなら旅の途中でも腐らない!」商人たちは感激し、次々と買い取っていった。



 数日後、村長が俺の前にやってきた。

「カイル殿……いや、“追放者ギルド”よ。お前たちのおかげで村の暮らしは大きく変わった。村の者たちが安心して冬を迎えられるのは、お前たちの功績じゃ」

「俺たちは依頼を受けただけです。皆が生きやすくなるなら、それでいい」

 村長は深く頷き、こう続けた。

「実はな……王都から追放されてきた者が、まだ多くおる。彼らも受け入れてやってくれんか」

 広場で仲間たちに伝えると、リナが笑顔で言った。
「追放者なら大歓迎です!」
「大勢いれば宴会も盛り上がるな!」グレンが水を掲げる。
「……薬の生産量を増やさねば」セリウスが呟き、フィオは「友達が増えるの、ちょっと楽しみ……」と顔を赤らめた。
 エレナも裁縫道具を抱え、「服の用意は任せてください!」と胸を張った。



 その夜。焚き火の前で俺は仲間たちに言った。

「追放された者が、ここでまた生き直す。俺たちのギルドは、ただの寄せ集めじゃない。村を、そして人を支える存在になっている」

 旗が夜風に揺れ、皆の顔を照らしていた。

 ――追放者ギルドの物語は、もう谷だけの話ではなくなりつつあった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

【アイテム分解】しかできないと追放された僕、実は物質の概念を書き換える最強スキルホルダーだった

黒崎隼人
ファンタジー
貴族の次男アッシュは、ゴミを素材に戻すだけのハズレスキル【アイテム分解】を授かり、家と国から追放される。しかし、そのスキルの本質は、物質や魔法、果ては世界の理すら書き換える神の力【概念再構築】だった! 辺境で出会った、心優しき元女騎士エルフや、好奇心旺盛な天才獣人少女。過去に傷を持つ彼女たちと共に、アッシュは忘れられた土地を理想の楽園へと創り変えていく。 一方、アッシュを追放した王国は謎の厄災に蝕まれ、滅亡の危機に瀕していた。彼を見捨てた幼馴染の聖女が助けを求めてきた時、アッシュが下す決断とは――。 追放から始まる、爽快な逆転建国ファンタジー、ここに開幕!

無能扱いされ、教会から追放された聖女候補生、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。王子様とゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
 無能扱いされ、教会から追放された聖女候補――リディア。  居場所を失い、絶望の淵に立たされた彼女は、辺境の地で「光を繋ぐ」という唯一無二の力に目覚める。  だが、彼女を追放した教会の闇は、なお人々を蝕んでいた。  黒紋章、影の獣、そして狂気に染まった司祭たち。  幾度も絶望が迫る中、リディアは仲間と共に剣を取り、祈りを重ね、決して命を投げ捨てることなく光を繋ぎ続ける。  「私はもう、一人で闇に抗わない。皆と共に生きるために、光を灯す」  かつては「無能」と嘲られた少女は、辺境を救う“真の聖女”として人々の希望となっていく――。  スローライフと激闘の果てに紡がれる、聖女の再生と愛の物語。

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

A級パーティーを追放された黒魔導士、拾ってくれた低級パーティーを成功へと導く~この男、魔力は極小だが戦闘勘が異次元の鋭さだった~

名無し
ファンタジー
「モンド、ここから消えろ。てめえはもうパーティーに必要ねえ!」 「……え? ゴート、理由だけでも聴かせてくれ」 「黒魔導士のくせに魔力がゴミクズだからだ!」 「確かに俺の魔力はゴミ同然だが、その分を戦闘勘の鋭さで補ってきたつもりだ。それで何度も助けてやったことを忘れたのか……?」 「うるせえ、とっとと消えろ! あと、お前について悪い噂も流しておいてやったからな。役立たずの寄生虫ってよ!」 「くっ……」  問答無用でA級パーティーを追放されてしまったモンド。  彼は極小の魔力しか持たない黒魔導士だったが、持ち前の戦闘勘によってパーティーを支えてきた。しかし、地味であるがゆえに貢献を認められることは最後までなかった。  さらに悪い噂を流されたことで、冒険者としての道を諦めかけたモンドだったが、悪評高い最下級パーティーに拾われ、彼らを成功に導くことで自分の居場所や高い名声を得るようになっていく。 「魔力は低かったが、あの動きは只者ではなかった! 寄生虫なんて呼ばれてたのが信じられん……」 「地味に見えるけど、やってることはどう考えても尋常じゃなかった。こんな達人を追放するとかありえねえだろ……」 「方向性は意外ですが、これほどまでに優れた黒魔導士がいるとは……」  拾われたパーティーでその高い能力を絶賛されるモンド。  これは、様々な事情を抱える低級パーティーを、最高の戦闘勘を持つモンドが成功に導いていく物語である……。

処理中です...