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第23話 行商人との契約
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防衛戦から数日。谷はまだ傷跡を残していたが、村人も仲間も懸命に立ち直ろうとしていた。新しい柵はさらに厚く、見張り台は二倍に増えた。夜には焚き火の列が谷を囲み、灯りが村を守るように揺れていた。
その朝、荷馬車を連ねた行商人の一団が再びやってきた。先頭にいたのは、以前から付き合いのある中年商人ハルドだ。
「カイル殿! 噂は王都まで届いているぞ。追放者ギルドが刺客を退けたと」
「大げさに広まってるだけだ。俺たちはただ守っただけさ」
だがハルドは首を振った。
「いや、村を守れる力があると示した。それは商人にとって何より安心できることだ」
◇
ギルドハウスの中で、俺たちはテーブルを囲んで交渉を始めた。
「こちらは保存薬と保存食、そして鍛冶道具を提供できる。長旅にも耐えられる品だ」セリウスが瓶を並べる。
「お弁当も作れますよ!」リナが笑顔で干し肉と野菜の詰め合わせを見せる。
「武器や農具の修理も任せろ!」ガンツが金槌を叩く。
「歌も……つけますか?」ロディが竪琴を爪弾き、場が和んだ。
ハルドは顎に手を当て、しばらく考え込んでいた。
「ふむ……品は確かだ。ただ問題は、王都の連中に睨まれているお前たちと組むリスクだ」
場が一瞬静まった。その沈黙を破ったのはフィオだった。
「わ、私たち……みんな追放されて、でもここで必死に生きてるんです。物語に選ばれなくても、誰かを助けられるって……証明したいんです!」
その真っ直ぐな声に、商人の目がわずかに和らいだ。
「……いいだろう。契約しよう。ただし条件がある」
「条件?」俺が身を乗り出す。
「王都に逆らうのではなく、あくまで辺境の自治組織として振る舞え。そうすれば“地方の便利屋”として受け入れられる。商人としても王都と敵対は避けたいからな」
「……なるほど」俺は頷いた。「俺たちは英雄譚を語るつもりはない。生活を守るだけだ。それなら問題ない」
◇
こうして契約は成立した。
行商人は追放者ギルドに物資を安定供給し、代わりに保存食や薬を運んで売る。利益は双方で分け合う。
「これで谷の経済は安定するぞ!」セリウスが珍しく声を張った。
「やったぁ!」リナが飛び跳ねる。
「これで酒……いや、水の確保も安泰だな!」グレンが豪快に笑う。
「……お金があれば、もっと布も薬草も買えますね」エレナが真剣に頷いた。
◇
その夜。焚き火を囲んで契約成立を祝う宴が開かれた。ロディの歌が響き、子どもたちが踊り、村人と追放者たちが肩を組んで笑い合った。
俺は旗を見上げながら呟いた。
「経済の基盤を得た……これで、追放者ギルドは“生き残る”だけでなく“育つ”ことができる」
だが同時に、胸の奥で冷たい予感が疼いていた。
――王都がこれを見逃すはずがない。
それでも俺は剣を握りしめた。
「段取りを間違えなければ、必ず守れる」
旗は夜風に揺れ、炎に照らされて輝いていた。
その朝、荷馬車を連ねた行商人の一団が再びやってきた。先頭にいたのは、以前から付き合いのある中年商人ハルドだ。
「カイル殿! 噂は王都まで届いているぞ。追放者ギルドが刺客を退けたと」
「大げさに広まってるだけだ。俺たちはただ守っただけさ」
だがハルドは首を振った。
「いや、村を守れる力があると示した。それは商人にとって何より安心できることだ」
◇
ギルドハウスの中で、俺たちはテーブルを囲んで交渉を始めた。
「こちらは保存薬と保存食、そして鍛冶道具を提供できる。長旅にも耐えられる品だ」セリウスが瓶を並べる。
「お弁当も作れますよ!」リナが笑顔で干し肉と野菜の詰め合わせを見せる。
「武器や農具の修理も任せろ!」ガンツが金槌を叩く。
「歌も……つけますか?」ロディが竪琴を爪弾き、場が和んだ。
ハルドは顎に手を当て、しばらく考え込んでいた。
「ふむ……品は確かだ。ただ問題は、王都の連中に睨まれているお前たちと組むリスクだ」
場が一瞬静まった。その沈黙を破ったのはフィオだった。
「わ、私たち……みんな追放されて、でもここで必死に生きてるんです。物語に選ばれなくても、誰かを助けられるって……証明したいんです!」
その真っ直ぐな声に、商人の目がわずかに和らいだ。
「……いいだろう。契約しよう。ただし条件がある」
「条件?」俺が身を乗り出す。
「王都に逆らうのではなく、あくまで辺境の自治組織として振る舞え。そうすれば“地方の便利屋”として受け入れられる。商人としても王都と敵対は避けたいからな」
「……なるほど」俺は頷いた。「俺たちは英雄譚を語るつもりはない。生活を守るだけだ。それなら問題ない」
◇
こうして契約は成立した。
行商人は追放者ギルドに物資を安定供給し、代わりに保存食や薬を運んで売る。利益は双方で分け合う。
「これで谷の経済は安定するぞ!」セリウスが珍しく声を張った。
「やったぁ!」リナが飛び跳ねる。
「これで酒……いや、水の確保も安泰だな!」グレンが豪快に笑う。
「……お金があれば、もっと布も薬草も買えますね」エレナが真剣に頷いた。
◇
その夜。焚き火を囲んで契約成立を祝う宴が開かれた。ロディの歌が響き、子どもたちが踊り、村人と追放者たちが肩を組んで笑い合った。
俺は旗を見上げながら呟いた。
「経済の基盤を得た……これで、追放者ギルドは“生き残る”だけでなく“育つ”ことができる」
だが同時に、胸の奥で冷たい予感が疼いていた。
――王都がこれを見逃すはずがない。
それでも俺は剣を握りしめた。
「段取りを間違えなければ、必ず守れる」
旗は夜風に揺れ、炎に照らされて輝いていた。
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