パーティーから追放され、ギルドから追放され、国からも追放された俺は、追放者ギルドをつくってスローライフを送ることにしました。

さら

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第23話 行商人との契約

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 防衛戦から数日。谷はまだ傷跡を残していたが、村人も仲間も懸命に立ち直ろうとしていた。新しい柵はさらに厚く、見張り台は二倍に増えた。夜には焚き火の列が谷を囲み、灯りが村を守るように揺れていた。

 その朝、荷馬車を連ねた行商人の一団が再びやってきた。先頭にいたのは、以前から付き合いのある中年商人ハルドだ。

「カイル殿! 噂は王都まで届いているぞ。追放者ギルドが刺客を退けたと」
「大げさに広まってるだけだ。俺たちはただ守っただけさ」

 だがハルドは首を振った。
「いや、村を守れる力があると示した。それは商人にとって何より安心できることだ」



 ギルドハウスの中で、俺たちはテーブルを囲んで交渉を始めた。

「こちらは保存薬と保存食、そして鍛冶道具を提供できる。長旅にも耐えられる品だ」セリウスが瓶を並べる。
「お弁当も作れますよ!」リナが笑顔で干し肉と野菜の詰め合わせを見せる。
「武器や農具の修理も任せろ!」ガンツが金槌を叩く。
「歌も……つけますか?」ロディが竪琴を爪弾き、場が和んだ。

 ハルドは顎に手を当て、しばらく考え込んでいた。

「ふむ……品は確かだ。ただ問題は、王都の連中に睨まれているお前たちと組むリスクだ」

 場が一瞬静まった。その沈黙を破ったのはフィオだった。

「わ、私たち……みんな追放されて、でもここで必死に生きてるんです。物語に選ばれなくても、誰かを助けられるって……証明したいんです!」

 その真っ直ぐな声に、商人の目がわずかに和らいだ。

「……いいだろう。契約しよう。ただし条件がある」

「条件?」俺が身を乗り出す。

「王都に逆らうのではなく、あくまで辺境の自治組織として振る舞え。そうすれば“地方の便利屋”として受け入れられる。商人としても王都と敵対は避けたいからな」

「……なるほど」俺は頷いた。「俺たちは英雄譚を語るつもりはない。生活を守るだけだ。それなら問題ない」



 こうして契約は成立した。

 行商人は追放者ギルドに物資を安定供給し、代わりに保存食や薬を運んで売る。利益は双方で分け合う。

「これで谷の経済は安定するぞ!」セリウスが珍しく声を張った。
「やったぁ!」リナが飛び跳ねる。
「これで酒……いや、水の確保も安泰だな!」グレンが豪快に笑う。
「……お金があれば、もっと布も薬草も買えますね」エレナが真剣に頷いた。



 その夜。焚き火を囲んで契約成立を祝う宴が開かれた。ロディの歌が響き、子どもたちが踊り、村人と追放者たちが肩を組んで笑い合った。

 俺は旗を見上げながら呟いた。

「経済の基盤を得た……これで、追放者ギルドは“生き残る”だけでなく“育つ”ことができる」

 だが同時に、胸の奥で冷たい予感が疼いていた。
 ――王都がこれを見逃すはずがない。

 それでも俺は剣を握りしめた。

「段取りを間違えなければ、必ず守れる」

 旗は夜風に揺れ、炎に照らされて輝いていた。
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