パーティーから追放され、ギルドから追放され、国からも追放された俺は、追放者ギルドをつくってスローライフを送ることにしました。

さくら

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第25話 経済封鎖と自給自足

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 王都の使者が去ってから数日。谷に出入りしていた行商人たちの姿が、ぱたりと途絶えた。

「……やはりな」俺は仲間たちを集めて言った。
「王都が圧力をかけたんだ。追放者ギルドと取引すれば“反逆者に加担”と見なされる。商人にとっては死活問題だからな」

 セリウスが帳簿を開き、冷静に告げた。
「保存食と薬はまだ一月分残っています。しかし、塩や布、鉄などは不足し始めるでしょう」

 リナが不安げに声を上げた。
「このままじゃ冬を越せない……」

 グレンが拳を叩きつけた。
「だったら奪い返せばいい! 商隊を襲ってでも!」

「バカ! それじゃ俺たちが本当に“賊”になるだろ!」リナが怒鳴った。

 場が重く沈む。だが俺はゆっくりと言った。
「――自給自足だ。俺たちの手で、必要なものを作り出す」



 まず動いたのはガンツだった。谷の岩場から鉄鉱石を掘り出し、炉を組み立て始めた。

「王都の鍛冶屋を追放された俺だが……道具さえあれば何とかなる!」

 ミーナは薬草畑を広げ、森の奥まで採取に出た。
「薬草を乾燥させて貯蔵すれば、冬でも薬は尽きません!」

 セリウスは錬金術で塩を生成し、保存食の補強に成功する。
「海のない谷でも、これで最低限はまかなえる」

 リナは新しい保存食を考案し、干し肉や乾燥野菜を作り始めた。
「これで半年は持たせられるはず!」

 エレナは布を織り直し、古着を修復して衣服を循環させる。ロディは歌で村人を励まし、士気を高めた。

 そしてフィオは――。
「わ、私も……! 火加減の練習で、陶器を焼いてみる!」
 暴発覚悟の火力で、彼女は素焼きの器を焼き上げた。

「やった……! 爆発しなかった!」



 数週間後。谷は以前よりも活気に満ちていた。
 自給自足の仕組みが少しずつ形になり、村人も追放者も力を合わせて暮らしている。

「まるで一つの国みたいだな……」グレンが感慨深く呟いた。
「まだまだ足りないけど……自分たちで作れるって嬉しいね!」リナが笑う。
「……自立。これが本当の意味での独立ですね」セリウスが眼鏡を押し上げる。

 俺は旗を見上げた。追放者ギルドの紋章は、ただの集まりの象徴ではない。今や一つの共同体の証になりつつあった。



 しかしその夜。偵察に出ていた村人が血相を変えて戻ってきた。

「カイルさん! 王都の兵士が……物資を積んだ商隊を、谷の外で焼き払ってました! “追放者に流れるはずだった物”だって!」

 皆の顔が固まる。

 俺は剣を握りしめ、低く言った。
「……王都は俺たちを飢えさせ、干からびさせようとしている。だが――段取りを間違えなければ、必ず生き延びられる」

 焚き火の炎が揺れ、仲間たちの瞳に決意が宿った。

 ――経済封鎖の圧力の中で、追放者ギルドは真の意味で“独立”の一歩を踏み出した。
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