パーティーから追放され、ギルドから追放され、国からも追放された俺は、追放者ギルドをつくってスローライフを送ることにしました。

さくら

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第26話 集う追放者たち

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 王都による経済封鎖の噂は、逆に辺境へと広がっていった。
「追放者ギルドは孤立無援、もうすぐ潰される」――王都はそう宣伝していたが、その言葉は奇妙な効果を生んだ。

 追放された者たちにとって、それは「自分たちの居場所がある」という合図のように聞こえたのだ。



 ある朝、谷の入り口に十数人の影が現れた。男も女も、老人も子どもも混じる。ボロ布をまとい、痩せこけ、怯えた目をしていた。

「……ここが、追放者ギルド……?」

 その声に俺は大きく頷いた。
「そうだ。追放された者なら誰でも受け入れる。ここでは生き直せる」

 涙ぐむ者、土下座する者、震える手で旗を見上げる者。彼らを迎え入れた瞬間、広場に新しい熱が灯った。



 新たな仲間は様々だった。

・片腕を失った元騎士ランデル。防衛戦の訓練教官として村人に剣を教える。
・音痴すぎて聖歌隊を追放された少女マリア。ロディと組んで、村人を笑わせる歌を作る。
・「派手さが足りない」と見捨てられた地味な土魔法使いボルド。畑を耕し、用水路を整備するのに大活躍。
・貴族に仕えていたが「話し方が回りくどい」と切り捨てられた文官ルシア。エレナと共に帳簿整理を支える。

 彼らの力は派手ではないが、確実に追放者ギルドを強くした。



 日々の風景も変わっていった。

 朝は広場で鐘が鳴り、皆が持ち場につく。畑に出る者、工房に籠る者、子どもを預かる者。
 昼はリナの鍋から湯気が立ち、香ばしい匂いが村を包む。
 夕暮れにはロディの歌とマリアの外れた音程が響き、笑い声が谷に広がった。

「……国みたいだな」俺は呟いた。

「国?」グレンが大笑いした。
「いいじゃねぇか! “追放者王国”ってやつだ!」

「冗談で済めばいいんですけどね……」セリウスが眼鏡を押し上げ、真顔で記録を続ける。



 夜。焚き火を囲みながら、俺は仲間たちに告げた。

「人が増えた分、王都の監視も強まるはずだ。だが、もう後戻りはできない。――ここを、“追放者の国”にする覚悟が必要だ」

 沈黙の後、リナが笑った。
「国だろうが村だろうが、ここは私たちの家です!」

 フィオが小さな声で続けた。
「友達がいっぱい……守りたい」

 グレンが水のジョッキを掲げる。
「よし! じゃあもう一度乾杯だ! “追放者王国”に!」

 皆の声が夜空に響いた。



 その頃、王都では――。

「……報告によれば、“追放者ギルド”は今や数十人規模に膨れ上がっているそうです」
「何? ただの寄せ集めではなかったのか」
「はい。村を基盤に、共同体を築き上げている模様」

 王は顔をしかめ、玉座の前で吐き捨てた。
「……ならばもはや放置はできぬ。“反逆者の国”になる前に、叩き潰せ」



 谷の夜風に揺れる旗を見上げながら、俺は心の中で誓った。

「追放者の国か……いいだろう。段取りを間違えなければ、必ず守り抜いてみせる」
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