パーティーから追放され、ギルドから追放され、国からも追放された俺は、追放者ギルドをつくってスローライフを送ることにしました。

さくら

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第29話 王都軍、襲来

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 夜明けと同時に、地響きが谷を震わせた。
 遠くの森の奥、無数の槍の穂先と旗が朝日にきらめき、鬨(とき)の声が響く。

「来たぞ――王都軍だ!」

 見張り台の叫びが谷全体に轟き、村人も追放者も一斉に武器を握った。



 迫り来るのは千を超える軍勢。重装兵、弓兵、魔導士、騎兵まで揃い、戦鼓の音が山々に反響する。

 俺は剣を抜き、仲間を振り返った。
「落ち着け! 段取りはすでに決めてある。――慌てるな!」

 グレンが大剣を肩に担ぎ、獰猛な笑みを浮かべる。
「血が騒ぐぜぇ!」
 リナは震えながらも鍋を下げ、負傷者への炊き出しを準備していた。
「みんなを守るご飯、作るから!」
 セリウスは瓶を並べ、冷静に告げる。
「薬と煙幕、全て揃っています。合図をください」
 フィオは杖を握りしめ、唇を噛んで頷いた。
「……絶対、暴発しない」
 エレナとミーナは包帯と薬草を抱え、避難所の前で待機する。
 ロディは竪琴を鳴らし、村人の恐怖を和らげていた。

 ――追放者ギルド、総力戦の始まりだ。



 王都軍が谷の入り口に殺到した。

「今だ――落石!」

 俺の合図と共に、ガンツがロープを断ち切る。
 山肌に積まれた巨岩が轟音を立てて落下し、先頭の兵を押し潰した。土煙と悲鳴が渦巻く。

「次! 火矢、撃て!」

 フィオが火球を放ち、弓兵の矢に火を灯す。無数の火矢が降り注ぎ、敵の陣を混乱させた。

「煙幕を!」セリウスが瓶を投げ、白煙が谷を覆う。敵は視界を失い、陣形が乱れた。



 それでも数は圧倒的だ。煙の中から突撃してきた騎兵が柵を突破しようとする。

「グレン!」
「任せろおおお!」

 大剣が唸り、馬ごと兵士を叩き伏せた。血と泥が飛び散り、グレンの笑い声が響く。

「リナ! 後方支援!」
「はい!」

 温かいスープを飲んだ村人が再び立ち上がり、槍を握る。エレナが包帯を巻き、ミーナが薬を塗り、負傷者が次々と復帰していった。



 敵の魔導士が詠唱を始める。雷光が谷に走り、柵が爆ぜた。

「くっ……!」

 その瞬間、フィオが立ち上がった。
「わ、私がやる!」

 杖の先から炎がほとばしり、敵魔導士の陣を丸ごと焼き払った。爆風に吹き飛ばされながらも、彼女は笑った。
「成功……! 暴発じゃない!」



 戦場は混沌だった。怒号と悲鳴、火と煙、血と汗。

 俺は剣を振るいながら叫んだ。
「俺たちは追放者だ! だが、ここは俺たちの国だ! ――絶対に渡さない!」

 その声に呼応するように、村人たちが一斉に叫んだ。
「うおおおおおお!」

 旗が翻り、追放者ギルドと村人が一丸となって王都軍を押し返す。



 だが敵は退かない。第二波、第三波と次々に押し寄せる。
 夜が明け、谷全体が戦火に包まれた。

 ――これは始まりにすぎない。
 追放者ギルドと王都との、本格的な戦争の幕開けだった。
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