パーティーから追放され、ギルドから追放され、国からも追放された俺は、追放者ギルドをつくってスローライフを送ることにしました。

さくら

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第33話 王の激怒

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 谷の戦場に残るのは、黒煙と血の匂い。そして倒れ伏した黒鉄の騎士ドランの巨体だった。
 村人も追放者も疲弊していたが、それ以上に胸にこみ上げるものがあった。

「勝った……!」
「王都最強を……追放者が!」

 歓声と涙が広場を包む。リナはスープを配りながら泣き笑いし、エレナとミーナは負傷者の包帯を取り替え続けた。
 グレンは大剣を突き立て、荒い息を吐きながら吠えた。
「最高だったな、カイル! あんな怪物を倒すなんてよ!」
「……ああ」俺は剣を見下ろし、静かに頷いた。「だが、これは始まりにすぎない」



 その頃、王都。

「……何だと?」

 王座の間に響いた報告に、空気が凍り付いた。

「黒鉄の騎士ドランが……討たれたと。相手は“追放者ギルド”の者たちです」

 王は玉座から立ち上がり、杖を叩きつけた。
「王国最強の騎士を……追放者ごときが打ち倒したというのか!」

 廷臣たちが震え上がる。

「許せぬ! 英雄譚を汚す反逆者どもめ。――直ちに軍を増派せよ!」

 将軍が跪き、答える。
「すでに準備を。次は五千、いや一万の兵を動員する覚悟です」

「よい! 辺境の谷を焼き尽くし、地図から消せ!」

 王の声が宮殿を震わせた。



 一方、谷では。

「……王都の反応は必ず来る」俺は仲間たちを集め、焚き火の前で言った。
「ドランを倒したのは大きいが、同時に王都の誇りをへし折った。必ず大軍が来る」

 セリウスが頷いた。
「兵站と規模を考えれば、数千単位でしょう。今までとは比べ物にならない」

 リナが顔をこわばらせた。
「そ、そんな数……どうやって……」

 グレンは笑った。
「だからこそ燃える! 追放者ギルドの名を世界に轟かせてやる!」

 フィオは杖を握りしめ、震えながらも決意を込めた。
「わ、私……もう怖くない。みんなと一緒なら……」

 エレナも涙を拭い、言った。
「なら、布も薬も倍に用意します! 皆が生き延びられるように!」

 ロディが竪琴を鳴らす。
「歌で士気を保つさ。……何度だって」



 俺は旗を見上げた。炎に照らされ、夜風に揺れるそれは、ただの布切れではなくなっていた。

「段取りを間違えなければ……何万の兵が来ても、守り抜く。俺たちの国を」

 仲間たちの瞳に炎が映り、決意が一つになった。



 ――遠く離れた王都から、大軍が動き始めていた。
 追放者ギルドと王国。いずれ避けられぬ決戦の時が、確実に迫っている。
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