パーティーから追放され、ギルドから追放され、国からも追放された俺は、追放者ギルドをつくってスローライフを送ることにしました。

さら

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第34話 追放者連合を求めて

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 黒鉄の騎士ドランを討った日の勝利は、谷に新たな希望をもたらした。
 だが同時に、王都が必ず報復に動くことを誰もが悟っていた。

「次は数千、いや万単位で来る……」
 セリウスの分析に、村人たちは息を呑んだ。

「カイルさん、どうするの?」リナが問う。
「俺たちだけじゃ防げない。……周りの追放者を集める。今こそ“連合”を作る時だ」



 翌日。俺たちは数人の仲間を連れて谷を出発した。目指すのは近隣の村や、森に潜む追放者たち。

 最初に訪れたのは山間の小村。そこには、病気がちな者や、無能扱いされた老人が隠れ住んでいた。

「俺たちに戦えっていうのか?」老人が言った。
「違う。戦えなくてもいい。食料を分け合い、避難所を作ってくれれば、それが支援になる」

 静かな沈黙のあと、老人は頷いた。
「……分かった。王都に居場所を奪われた身だ。お前たちと共にあろう」



 次に向かったのは森の奥。そこには盗賊崩れと噂される追放者の一団がいた。
 粗末な鎧に汚れた剣を持ち、最初は敵意を剥き出しにしていた。

「俺たちを仲間に? 笑わせるな。どうせ利用して捨てるんだろう」

「違う」俺は剣を収め、正面から告げた。
「俺たちは追放された者同士だ。肩書も物語も関係ない。……ただ生きるために力を貸してくれ」

 沈黙の後、リーダー格の男がふっと笑った。
「お前……嘘じゃねぇな。いいだろう、王都に殴られるなら一緒に殴られてやる」



 最後に訪れたのは荒野の廃教会。そこには元聖職者たちが集まっていた。
「“奇跡が足りない”と見捨てられた者たちです」ロディが説明する。

 彼らは最初こそ戸惑っていたが、ミーナとエレナが膝をつき、真剣に頭を下げた。
「怪我人や病人を救える人が必要です。どうか力を貸してください」

 年老いた神官はしばし考え、やがて微笑んだ。
「奇跡はここにあったのだな。……お前たちの旗の下に加わろう」



 数日後、谷に戻ると、そこには新たに数十名の追放者が集まっていた。老人、子ども、盗賊崩れ、元聖職者、元騎士――多種多様だ。

 グレンが豪快に笑った。
「おいおい! どんだけ増えるんだよ! もう国どころか軍隊だぞ!」

 リナは目を潤ませて呟いた。
「みんな……居場所を探してたんだね」

 セリウスは帳簿をめくり、静かに頷いた。
「数は力。だが管理が必要だ。だが――これで抗える」



 その夜。焚き火の前に立ち、俺は皆に向かって声を張り上げた。

「俺たちは追放された。無能と笑われ、物語から弾かれた。だが今、こうして一つに集まった。――これはもう、ただのギルドじゃない」

 旗が風に翻り、皆の視線が集まる。

「ここに、“追放者連合”を宣言する!」

 歓声が爆発し、夜空を揺るがした。



 その頃、王都。

「……奴らは仲間を集めているようです」報告に将軍が頭を下げる。
「追放者連合だと? 愚か者どもが……」

 王は玉座で怒りを露わにした。
「ならば余は“聖戦”と称して討つまでだ! 追放者どもに、王国の恐ろしさを思い知らせてやれ!」



 谷の夜空に翻る旗は、もはや一つの村の象徴ではなかった。
 ――それは、追放者すべての希望の象徴となりつつあった。
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