パーティーから追放され、ギルドから追放され、国からも追放された俺は、追放者ギルドをつくってスローライフを送ることにしました。

さくら

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第35話 聖戦宣言

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 谷に戻ってから数日、追放者連合は着実に力を増していた。
 鍛冶場ではガンツと弟子たちが剣や槍を鍛え、薬草畑ではミーナとセリウスが夜を徹して薬を調合する。リナの炊き出しは一度に百人分に膨れ上がり、エレナは布を織り続けて戦士たちの衣服を整えた。

 フィオは訓練場で魔力の制御を学び、以前より安定して炎を操れるようになっていた。
「みんなを燃やさない……私、絶対に暴発しない」
 その小さな決意に、仲間たちは頷き、励ました。

 だが、迫る脅威の影は一層濃くなっていた。



 王都。

 大聖堂の鐘が鳴り響き、人々が広場に集まっていた。壇上に立つのは王、そして聖職者たち。
「余はここに宣言する!」王の声が響き渡る。
「辺境に巣食う追放者どもは、王国の秩序を乱す反逆者である! これは聖戦である!」

 人々のざわめきが広がり、やがて歓声と怒号が入り混じった。

「勇者様の物語を汚す連中を許すな!」
「聖戦だ! 追放者を根絶やしにせよ!」

 大軍の編制が始まった。五千、いや一万を超える兵が各地から召集され、補給部隊や魔導師団、聖騎士団までもが動き出す。



 その報はすぐに谷へ届いた。

「王都が……聖戦を宣言したそうです!」斥候が息を切らして駆け込んできた。
「数は一万を超えるとか……」

 広場に重い空気が流れる。村人も追放者も言葉を失った。

「聖戦……」リナが唇を震わせる。
「私たちを……悪として討つつもりなんですね」

 セリウスが帳簿を閉じ、冷静に言った。
「大義名分を得た以上、王都は退かない。……これは全面戦争です」

 グレンが笑い飛ばした。
「上等じゃねえか! 一万だろうが十万だろうが、やってやる!」

「……冗談で済ませる数じゃない」俺は低く言った。



 その夜、追放者連合の幹部たちを集め、俺は地図を広げた。

「正面からぶつかれば壊滅だ。だが俺たちは追放者。物語の主役じゃない。派手な一撃より、地道な段取りで勝つ」

「段取り……?」

「ゲリラ戦だ。谷を要塞化し、森を迷路に変え、敵の補給を断つ。――持久戦で相手を削る」

 セリウスが頷いた。
「合理的です。兵站を絶てば、どれほど大軍でも崩壊します」

 ロディが竪琴を鳴らす。
「その間、俺たちの歌で周辺に広めよう。“追放者は悪ではない”とな」

「それでも怖い……」フィオが小声で言った。

 俺は彼女の肩に手を置き、はっきり告げた。
「怖いのは当然だ。だが逃げれば何も残らない。ここは俺たちの国だ。必ず守る」



 谷の夜空に、炎に照らされた旗が揺れた。
 誰もが知っていた――これまでの戦いは序章にすぎないことを。

 ――“聖戦”という名の大軍が迫っている。
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