パーティーから追放され、ギルドから追放され、国からも追放された俺は、追放者ギルドをつくってスローライフを送ることにしました。

さら

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第36話 森を要塞に

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 王都が“聖戦”を宣言したという報は、谷の隅々にまで届いていた。子どもでさえもその言葉を覚え、焚き火のそばで不安そうに呟いていた。
 だが俺たちはもう怯えるだけでは終わらない。――迎撃の準備を始めた。



「まず森を迷路にする。敵の大軍を分断し、時間を稼ぐ」
 俺は仲間に指示を出した。

 ガンツ率いる鍛冶組は木を伐り倒し、太い丸太を組み合わせてバリケードを築く。
「こいつは地味だが……壊れねぇぞ!」

 フィオは火力を調整し、焼けた土で煉瓦を作り、道を塞ぐ壁を築いた。
「暴発しないで済んだ……成功!」

 セリウスとミーナは薬草と粉を調合し、森中に仕掛けた瓶に詰めていく。
「これは眠りを誘う香。兵士が吸えば数時間は動けません」
「煙幕と組み合わせればさらに効果的です!」

 リナは保存食を大量に作り、エレナは布で旗や目印を縫い上げる。
「これが道標。味方だけが分かる印です」

 ロディとマリアは歌いながら森を歩き、皆の不安を和らげていた。



 森の奥では、元騎士ランデルが村人を鍛えていた。
「槍を構えろ! 恐れるな! 退くな!」
 泥だらけになりながらも、かつて農具しか握ったことのなかった村人たちが、少しずつ兵士の顔つきになっていった。

「俺たちは……もうただの村人じゃない」
「追放されたけど、今は戦える!」

 その声を聞きながら、俺は剣を握りしめた。



 谷の入口も要塞化が進んでいた。
 二重三重の柵の前に落とし穴、上からは落石と煮えたぎる油。さらに谷に入る一本道はわざと狭くし、数を活かせないよう作り替えられた。

「地味な仕掛けばかりだな」グレンが笑う。
「だが、俺たちは地味で追放された連中だ。その地味さで勝つ」俺も笑った。



 夜。見張り台の上で、俺は仲間と地図を広げていた。

「兵数は一万以上。正面から戦えば押し潰される。だが、森で分断し、補給を絶てば必ず崩れる」

 セリウスが頷いた。
「合理的です。持久戦に徹すれば勝機はあります」

 リナが拳を握った。
「時間を稼げば……村人や子どもを守れる」

 フィオが小さな声で続けた。
「私……炎で道を焼き尽くせる。最後の手段として」

「無茶はするな。ただし――必要なら頼む」俺は真剣に言った。



 その夜、旗の下で皆が集まり、火を囲んだ。

「俺たちは追放者だ。王都に見捨てられた。だが……ここで生き直した」
 俺はゆっくり言葉を重ねた。
「森を要塞に変えたのも、薬も、歌も、料理も、全部“無駄だ”と追放された力だ。だが今、その全部が必要なんだ」

 仲間たちの目に炎が映り、一斉に頷いた。



 一方その頃、王都の軍営では。

「敵は森を要塞化している模様です」
「ふん、烏合の衆の悪あがきだ。数で押し潰せ」

 将軍は笑っていたが、伝令はわずかに震えていた。
「しかし……“黒鉄の騎士”ですら討たれた相手です」

 沈黙の後、将軍は低く呟いた。
「ならば今度は、英雄譚そのものをぶつけてやる。勇者を前に出せ」



 谷の夜風に揺れる旗を見上げながら、俺は心の中で呟いた。

「段取りを間違えなければ……必ず守れる。だが次は――英雄そのものが来る」
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