悪役令嬢ですが、ヒロインより先に幸せを掴みます

さら

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第四十四話 襲撃

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 新居での穏やかな日々は、長くは続かなかった。
 ある夜半、突如として屋敷の門前に騒ぎが起きた。怒号と金属のぶつかる音。窓の外を覗けば、たいまつを掲げた兵士たちが公爵家を取り囲んでいた。

 「王宮の命である! 反逆者クラリッサを捕らえよ!」

 声が響き、屋敷全体が凍りつく。

 ◇

 「お嬢様!」
 駆け込んできたメアリの顔は蒼白だった。
 「兵が門を破ろうとしています!」
 「……ついに来たのね」

 胸の奥が冷たくなる。だが、不思議と恐怖はなかった。わたしは白いハンカチを握りしめ、息を整えた。

 ◇

 「クラリッサ!」
 廊下の向こうから駆けてきたレオンハルトは軍装のまま、剣を腰に下げていた。その瞳は烈火のように燃えている。
 「兄上はついに兵を差し向けた。……だが、渡すわけにはいかない」
 「レオン……」
 「一緒に立とう。檻に戻らぬと誓った君を、私も守る」

 胸が熱くなる。恐怖を越えて、ただ強く頷いた。

 ◇

 屋敷の門が破られ、兵士たちが雪崩れ込んできた。重厚な扉が軋み、広間の中にたいまつの火が差し込む。
 「クラリッサを差し出せ!」
 「ここにいる!」

 わたしは一歩前に進み、群衆の前に立った。兵士たちの視線が突き刺さる。
 「けれど、わたしは罪人ではありません。檻を拒んだだけ。……捕らえられるとしても、俯きはしません!」

 声が広間に響き、兵士たちが一瞬動きを止めた。

 ◇

 「聞いたな」
 レオンハルトが剣を抜き、前に立ちはだかる。
 「彼女は罪人ではない。……どうしても手を伸ばすというのなら、まずは私を越えてみせろ!」

 鋭い声が広間に響き渡る。兵士たちがざわめき、動揺が走った。

 「殿下の命令だぞ!」
 「だが、第二王子殿下を敵に回すのか……?」

 動きが止まり、揺らぎが広がる。

 ◇

 夜明け近く、兵士たちはついに退いた。直接の捕縛は叶わず、屋敷は深い静寂に包まれる。

 「……乗り越えたのね」
 わたしは胸に白いハンカチを押し当てた。震えはあった。けれど、それ以上に確かな誇りがあった。

 「クラリッサ」
 レオンハルトが隣に立ち、静かに言う。
 「これは始まりにすぎない。兄上はさらに強い手を打つだろう」
 「ええ。けれど、檻には戻らない」

 ◇

 ――悪役令嬢クラリッサは、ついに兵の襲撃を受け。

 ――それでも俯かず、自由を選び続けた。
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