悪役令嬢ですが、ヒロインより先に幸せを掴みます

さら

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第四十七話 広がる支持

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 王都の空気は日ごとに変わっていた。
 かつて「悪役令嬢」と囁かれた名は、今や「自由を選んだ娘」として市井に語られるようになり、王太子派の布告すらその声を抑え込むことができなくなっていた。

 「クラリッサ様は俯かなかった」
 「兵に囲まれても檻に戻らなかった」
 「彼女こそ真の淑女だ」

 市場や広場で交わされるその声は、やがて重臣たちの耳にも届き始めていた。

 ◇

 公爵家の応接室に新たな使者が現れた。
 「辺境伯よりの書状にございます。……“公爵家と第二王子殿下に同調する”と」
 父は驚き、母は小さく息を呑む。

 「さらに、伯爵家の一部も賛同の意を表しているとのこと。……クラリッサ様の姿が彼らの心を動かしたのです」

 わたしは胸に白いハンカチを押し当てた。責任の重さが増すほどに、決意もまた強まっていく。

 ◇

 「クラリッサ」
 夜、レオンハルトが居間で静かに言った。
 「支持は広がっている。だが、兄上も必ず次の策を講じるだろう。追い詰められた者ほど危険だからな」
 「……どんな策でも構いません。わたしは檻には戻りません」

 彼の瞳が強く揺らぎ、やがて誇りに満ちた光を宿す。
 「その言葉を聞けただけで、私は戦える」
 「レオン……」

 彼の手を握り返し、互いの温もりを確かめ合った。

 ◇

 しかし、王太子派の動きは激しさを増していた。
 「第二王子とクラリッサは王位を狙っている」
 「公爵家は野心に満ち、国を裏切った」

 そんな噂が意図的に流され、社交界の場でも囁かれる。だが、同時に反発も強まっていた。
 「殿下の策は強硬すぎる」
 「クラリッサ嬢は悪役ではない。……真の王家の光はどちらにあるのか」

 社交界すらも、真っ二つに割れつつあった。

 ◇

 ある晩、父が深刻な顔で告げた。
 「殿下は“特別法廷”を設けようとしている。王太子自ら裁きを行い、反逆者と決めつける舞台を作るのだ」

 「再び……断罪の舞台」
 わたしは思わず呟いた。
 「けれど、檻には戻りません。たとえどんな舞台でも」

 父は沈痛な表情をしつつも、やがて誇らしげに頷いた。
 「その覚悟があるのなら、我らも共に立とう」

 ◇

 夜。寝室でレオンハルトがわたしを抱き寄せ、低く囁いた。
 「クラリッサ。君はもう一人ではない。君の声は国を動かし、私たちの未来を切り拓く」
 「……ええ。だからこそ、檻には戻らない」

 白いハンカチを胸に押し当てる。もはやそれは恐怖の象徴ではなく、自由の旗印だった。

 ◇

 ――悪役令嬢クラリッサは、広がる支持のただ中で。

 ――自由の象徴として、国の未来を左右する存在となり始めていた。
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