50 / 70
第五十話 決着
しおりを挟む
雪の降りしきる王都の広場。特別法廷は、もはや裁きの場ではなかった。
――檻に戻れと叫ぶ王太子殿下と。
――自由を選ぶと誓うわたしと。
――そして、どちらを未来とするかを見極めようとする民衆。
広場全体が、国の命運を懸けた舞台となっていた。
◇
「クラリッサ!」
殿下が叫ぶ。硝子の微笑は砕け、怒気に満ちた顔だけがそこにあった。
「お前が罪を認めぬ限り、この国に未来はない!」
「いいえ、殿下」
わたしは扇を閉じ、真っ直ぐに答える。
「檻に閉じ込められる未来こそ、この国を滅ぼします。わたしは檻には戻りません!」
群衆がざわめき、声が広がっていく。
――「そうだ、檻はいらない!」
――「自由を選べ!」
殿下の顔が紅潮し、拳を振り上げる。
◇
「兄上!」
レオンハルトが壇上に進み出る。軍装に身を包んだ姿は堂々として、真剣な瞳が輝いていた。
「クラリッサは罪人ではない。檻を拒んだだけだ。……それを罪と呼ぶなら、罪深いのはあなたの方だ!」
「黙れ、裏切り者!」殿下が怒号を放つ。
「裏切りではない! 私は未来を選んでいる!」
鋭い声が広場を震わせ、民の心に火を灯した。
◇
その時、一人の重臣が進み出た。
「殿下。……民の声をお聞きください。彼らはクラリッサ嬢を罪人とは見ていない。むしろ希望と見ている」
さらに別の重臣が声を上げる。
「強硬すぎる策は国を分断します。このままでは王家の威信そのものが失われましょう」
重臣たちの言葉に殿下の顔が歪む。
「お前たちまで私を裏切るのか!」
◇
群衆の中から拍手が広がった。最初は小さく、やがて大きな波となり、広場全体を揺らした。
「クラリッサ嬢は自由の象徴だ!」
「檻には戻らせるな!」
兵士たちも動きを止め、視線を交わす。殿下の命令よりも、民の声の方が強くなっていた。
◇
「殿下」
わたしは一歩前に進み、静かに言った。
「わたしはもう檻には戻りません。……たとえこの身がどうなろうとも」
レオンハルトが隣に立ち、力強く続ける。
「そして私は、その彼女を必ず守る!」
広場を揺らすほどの歓声が沸き起こった。
◇
王太子殿下はなおも叫んだが、その声は歓声に掻き消されていった。硝子の微笑も、怒りの叫びも、もはや誰の胸にも届かない。
やがて重臣たちの決議が下された。
――王太子殿下の権限停止。
――第二王子レオンハルトの補佐のもとで政務を執り行う。
殿下の敗北は、国中に宣言された。
◇
夜。新居の寝室で、わたしは白いハンカチを胸に抱いた。
「……終わったのね」
「いや、始まりだ」レオンハルトが優しく囁く。「君と共に歩む、自由な未来の始まりだ」
彼の温もりに包まれながら、静かに微笑んだ。
◇
――悪役令嬢クラリッサは、断罪と布告を越え。
――ついに国の未来を左右する存在となった。
――檻に戻れと叫ぶ王太子殿下と。
――自由を選ぶと誓うわたしと。
――そして、どちらを未来とするかを見極めようとする民衆。
広場全体が、国の命運を懸けた舞台となっていた。
◇
「クラリッサ!」
殿下が叫ぶ。硝子の微笑は砕け、怒気に満ちた顔だけがそこにあった。
「お前が罪を認めぬ限り、この国に未来はない!」
「いいえ、殿下」
わたしは扇を閉じ、真っ直ぐに答える。
「檻に閉じ込められる未来こそ、この国を滅ぼします。わたしは檻には戻りません!」
群衆がざわめき、声が広がっていく。
――「そうだ、檻はいらない!」
――「自由を選べ!」
殿下の顔が紅潮し、拳を振り上げる。
◇
「兄上!」
レオンハルトが壇上に進み出る。軍装に身を包んだ姿は堂々として、真剣な瞳が輝いていた。
「クラリッサは罪人ではない。檻を拒んだだけだ。……それを罪と呼ぶなら、罪深いのはあなたの方だ!」
「黙れ、裏切り者!」殿下が怒号を放つ。
「裏切りではない! 私は未来を選んでいる!」
鋭い声が広場を震わせ、民の心に火を灯した。
◇
その時、一人の重臣が進み出た。
「殿下。……民の声をお聞きください。彼らはクラリッサ嬢を罪人とは見ていない。むしろ希望と見ている」
さらに別の重臣が声を上げる。
「強硬すぎる策は国を分断します。このままでは王家の威信そのものが失われましょう」
重臣たちの言葉に殿下の顔が歪む。
「お前たちまで私を裏切るのか!」
◇
群衆の中から拍手が広がった。最初は小さく、やがて大きな波となり、広場全体を揺らした。
「クラリッサ嬢は自由の象徴だ!」
「檻には戻らせるな!」
兵士たちも動きを止め、視線を交わす。殿下の命令よりも、民の声の方が強くなっていた。
◇
「殿下」
わたしは一歩前に進み、静かに言った。
「わたしはもう檻には戻りません。……たとえこの身がどうなろうとも」
レオンハルトが隣に立ち、力強く続ける。
「そして私は、その彼女を必ず守る!」
広場を揺らすほどの歓声が沸き起こった。
◇
王太子殿下はなおも叫んだが、その声は歓声に掻き消されていった。硝子の微笑も、怒りの叫びも、もはや誰の胸にも届かない。
やがて重臣たちの決議が下された。
――王太子殿下の権限停止。
――第二王子レオンハルトの補佐のもとで政務を執り行う。
殿下の敗北は、国中に宣言された。
◇
夜。新居の寝室で、わたしは白いハンカチを胸に抱いた。
「……終わったのね」
「いや、始まりだ」レオンハルトが優しく囁く。「君と共に歩む、自由な未来の始まりだ」
彼の温もりに包まれながら、静かに微笑んだ。
◇
――悪役令嬢クラリッサは、断罪と布告を越え。
――ついに国の未来を左右する存在となった。
22
あなたにおすすめの小説
これって私の断罪じゃなくて公開プロポーズですか!?
桃瀬ももな
恋愛
「カタリーナ・フォン・シュバルツ! 貴様との婚約を破棄し、国外追放に処す!」
卒業パーティーの最中、第一王子アルフォンスから非情な宣告を突きつけられた公爵令嬢カタリーナ。
生まれつきの鋭い目つきと、緊張すると顔が強張る不器用さゆえに「悪役令嬢」として孤立していた彼女は、ついに訪れた「お決まりの断罪劇」に絶望……するかと思いきや。
(……あれ? 殿下、いま小さく「よっしゃあ!」ってガッツポーズしませんでした!?)
【完結済】破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします
紫
恋愛
水不足に喘ぐ貧困侯爵家の次女エリルシアは、父親からの手紙で王都に向かう。
王子の婚約者選定に関して、白羽の矢が立ったのだが、どうやらその王子には恋人がいる…らしい?
つまりエリルシアが悪役令嬢ポジなのか!?
そんな役どころなんて御免被りたいが、王サマからの提案が魅力的過ぎて、王宮滞在を了承してしまう。
報酬に目が眩んだエリルシアだが、無事王宮を脱出出来るのか。
王子サマと恋人(もしかしてヒロイン?)の未来はどうなるのか。
2025年10月06日、初HOTランキング入りです! 本当にありがとうございます!!(2位だなんて……いやいや、ありえないと言うか…本気で夢でも見ているのではないでしょーか……)
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
※小説家になろう様にも掲載させていただいています。
※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。
※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。
※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。
※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。
※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。
※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。
※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
P.S. 推し活に夢中ですので、返信は不要ですわ
汐瀬うに
恋愛
アルカナ学院に通う伯爵令嬢クラリスは、幼い頃から婚約者である第一王子アルベルトと共に過ごしてきた。しかし彼は言葉を尽くさず、想いはすれ違っていく。噂、距離、役割に心を閉ざしながらも、クラリスは自分の居場所を見つけて前へ進む。迎えたプロムの夜、ようやく言葉を選び、追いかけてきたアルベルトが告げたのは――遅すぎる本心だった。
※こちらの作品はカクヨム・アルファポリス・小説家になろうに並行掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる