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第五十七話 王太子の影
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残党の最後の策謀は潰えた――はずだった。
だが、国の空気は落ち着きを取り戻さない。広場での勝利の余韻は確かにあった。けれど、夜の街角ではこう囁かれていた。
――「王太子殿下はまだ生きている」
――「殿下ご自身が、最後の一手を放つだろう」
人々の期待と不安が入り混じり、王都は次なる嵐を待つように揺れていた。
◇
「クラリッサ様!」
執務室に駆け込んだ家臣が、息を切らせて報告する。
「王太子殿下が御自ら布告を出されました。“自らの手で逆賊を討つ”と!」
「……ついに」
父は険しい顔をし、母は青ざめて椅子に腰を下ろした。
「つまり……殿下は直接、こちらへ刃を向けてくるつもりなのですね」
「そうだ。最後の決戦だ」
わたしは白いハンカチを胸に押し当て、深く息を吐いた。
「檻に戻せぬのなら、直接閉じ込めに来る……。でも、わたしは俯きません」
◇
その夜。新居の居間で、レオンハルトと向き合った。
「兄上は兵を率いてこちらへ向かうだろう。だが、君が檻を拒む限り、民は必ず立ち上がる」
「……わたしが」
「そうだ。君はもう“悪役令嬢”ではない。自由を示す象徴なんだ」
彼は真剣に言い、わたしの手を強く握った。
「クラリッサ。君と共になら、どんな刃も越えられる」
「レオン……わたしは檻には戻りません」
◇
翌日。王都の広場は再び人で溢れ返った。
壇上に現れたのは王太子殿下。以前の硝子の微笑は消え、ただ憔悴と焦燥を帯びた顔がそこにあった。
「クラリッサ! お前こそ国を乱した元凶だ! 今ここで断罪する!」
怒号と共に兵士たちが動く。群衆がざわめき、不安が広がる。
「皆さま!」
わたしは壇上に立ち、声を張り上げた。
「わたしは罪人ではありません! 檻を拒んだだけです! ……自由を選ぶことが罪だと言うのなら、喜んでその罪を背負います!」
群衆の中から拍手が起こり、やがて波のように広がった。
「クラリッサ嬢を守れ!」
「檻に戻すな!」
◇
「兄上!」
レオンハルトが前に進み、剣を抜いた。
「彼女は罪人ではない! ……この国の未来だ!」
殿下の顔に怒りが走り、刃が抜かれる。壇上に鋭い音が響き、兵士たちが動き出した。
――国の未来を決める最後の戦いが、ついに始まろうとしていた。
◇
夜。寝室で白いハンカチを胸に抱きしめ、窓の外の月を見上げる。
「……檻には戻らない。たとえ殿下が自ら刃を向けてきても」
背後からレオンハルトがそっと抱き寄せ、低く囁いた。
「共に戦おう、クラリッサ。君となら必ず未来を掴める」
「ええ。わたしは檻には戻りません」
◇
――悪役令嬢クラリッサは、王太子自身の影に晒されながらも。
――最後の嵐に向け、俯かず立ち続けた。
だが、国の空気は落ち着きを取り戻さない。広場での勝利の余韻は確かにあった。けれど、夜の街角ではこう囁かれていた。
――「王太子殿下はまだ生きている」
――「殿下ご自身が、最後の一手を放つだろう」
人々の期待と不安が入り混じり、王都は次なる嵐を待つように揺れていた。
◇
「クラリッサ様!」
執務室に駆け込んだ家臣が、息を切らせて報告する。
「王太子殿下が御自ら布告を出されました。“自らの手で逆賊を討つ”と!」
「……ついに」
父は険しい顔をし、母は青ざめて椅子に腰を下ろした。
「つまり……殿下は直接、こちらへ刃を向けてくるつもりなのですね」
「そうだ。最後の決戦だ」
わたしは白いハンカチを胸に押し当て、深く息を吐いた。
「檻に戻せぬのなら、直接閉じ込めに来る……。でも、わたしは俯きません」
◇
その夜。新居の居間で、レオンハルトと向き合った。
「兄上は兵を率いてこちらへ向かうだろう。だが、君が檻を拒む限り、民は必ず立ち上がる」
「……わたしが」
「そうだ。君はもう“悪役令嬢”ではない。自由を示す象徴なんだ」
彼は真剣に言い、わたしの手を強く握った。
「クラリッサ。君と共になら、どんな刃も越えられる」
「レオン……わたしは檻には戻りません」
◇
翌日。王都の広場は再び人で溢れ返った。
壇上に現れたのは王太子殿下。以前の硝子の微笑は消え、ただ憔悴と焦燥を帯びた顔がそこにあった。
「クラリッサ! お前こそ国を乱した元凶だ! 今ここで断罪する!」
怒号と共に兵士たちが動く。群衆がざわめき、不安が広がる。
「皆さま!」
わたしは壇上に立ち、声を張り上げた。
「わたしは罪人ではありません! 檻を拒んだだけです! ……自由を選ぶことが罪だと言うのなら、喜んでその罪を背負います!」
群衆の中から拍手が起こり、やがて波のように広がった。
「クラリッサ嬢を守れ!」
「檻に戻すな!」
◇
「兄上!」
レオンハルトが前に進み、剣を抜いた。
「彼女は罪人ではない! ……この国の未来だ!」
殿下の顔に怒りが走り、刃が抜かれる。壇上に鋭い音が響き、兵士たちが動き出した。
――国の未来を決める最後の戦いが、ついに始まろうとしていた。
◇
夜。寝室で白いハンカチを胸に抱きしめ、窓の外の月を見上げる。
「……檻には戻らない。たとえ殿下が自ら刃を向けてきても」
背後からレオンハルトがそっと抱き寄せ、低く囁いた。
「共に戦おう、クラリッサ。君となら必ず未来を掴める」
「ええ。わたしは檻には戻りません」
◇
――悪役令嬢クラリッサは、王太子自身の影に晒されながらも。
――最後の嵐に向け、俯かず立ち続けた。
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