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第六十一話 忙しき日々
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王太子退位からひと月。王都は穏やかな陽光に包まれ、雪に覆われていた街並みにも、少しずつ春の色が差し始めていた。
広場には露店が並び、子どもたちが駆け回る声が響く。かつて断罪の舞台となった場所は、今では「自由の広場」と呼ばれるようになり、人々はそこに集って笑い合っていた。
「……本当に、変わりましたわね」
馬車の窓から景色を眺めながら呟くと、隣に座るレオンハルトが微笑んだ。
「君が俯かずに立ったからだ。誰もが、その姿に励まされたんだよ」
「そんな、大げさですわ」
「大げさじゃない」彼は即座に首を振り、真剣な瞳でわたしを見つめる。「君は檻を拒んだ娘であり、自由を示した妻だ」
頬が熱くなり、思わず窓の外に視線を逸らした。
◇
しかし、国を変えるということは、甘やかな日々だけでは済まされなかった。
「クラリッサ様、こちらの書類にご署名を」
「クラリッサ様、会議の時間です」
「クラリッサ様、各地の報告が……!」
朝から晩まで、次々と仕事が運び込まれてくる。政務は山のように積み重なり、時に息が詰まりそうになるほどだった。
「……少しは休んでください」
執務室で書簡に目を通していると、レオンハルトがため息混じりに言った。
「あなたこそ。机の上の書類はわたしよりも多いでしょう?」
「君に言われると弱いな……」
二人で笑い合う。疲れはあっても、この笑顔がある限り乗り越えられる――そう思えた。
◇
だが、国の隅々にはまだ王太子派の影が潜んでいた。
「クラリッサ様、地方の村で不審な集会が開かれております。“檻に戻れ”と囁く者たちが……」
報告を聞いた父が顔を曇らせる。
「まだ残っているか。根深いな」
母は心配げにわたしの手を握った。
「どうか無理はなさらないで。……けれど、あなたが立つことで人々は勇気を得ているのも事実なのね」
白いハンカチを胸に押し当て、わたしは頷いた。
「ええ。俯いてはいけません。……檻には戻らないと、何度でも示します」
◇
夜。寝室で、窓から月を眺めながらレオンハルトに抱き寄せられる。
「クラリッサ。疲れていないか?」
「少し。でも……あなたの温もりで、不思議と元気になりますわ」
「ならよかった。……君と共になら、どんな忙しさも越えていける」
彼の声に安心し、肩を預ける。
◇
――悪役令嬢クラリッサは、自由の広場を持つ国の中で。
――政務に追われながらも、愛する夫と共に俯かず立ち続けていた。
広場には露店が並び、子どもたちが駆け回る声が響く。かつて断罪の舞台となった場所は、今では「自由の広場」と呼ばれるようになり、人々はそこに集って笑い合っていた。
「……本当に、変わりましたわね」
馬車の窓から景色を眺めながら呟くと、隣に座るレオンハルトが微笑んだ。
「君が俯かずに立ったからだ。誰もが、その姿に励まされたんだよ」
「そんな、大げさですわ」
「大げさじゃない」彼は即座に首を振り、真剣な瞳でわたしを見つめる。「君は檻を拒んだ娘であり、自由を示した妻だ」
頬が熱くなり、思わず窓の外に視線を逸らした。
◇
しかし、国を変えるということは、甘やかな日々だけでは済まされなかった。
「クラリッサ様、こちらの書類にご署名を」
「クラリッサ様、会議の時間です」
「クラリッサ様、各地の報告が……!」
朝から晩まで、次々と仕事が運び込まれてくる。政務は山のように積み重なり、時に息が詰まりそうになるほどだった。
「……少しは休んでください」
執務室で書簡に目を通していると、レオンハルトがため息混じりに言った。
「あなたこそ。机の上の書類はわたしよりも多いでしょう?」
「君に言われると弱いな……」
二人で笑い合う。疲れはあっても、この笑顔がある限り乗り越えられる――そう思えた。
◇
だが、国の隅々にはまだ王太子派の影が潜んでいた。
「クラリッサ様、地方の村で不審な集会が開かれております。“檻に戻れ”と囁く者たちが……」
報告を聞いた父が顔を曇らせる。
「まだ残っているか。根深いな」
母は心配げにわたしの手を握った。
「どうか無理はなさらないで。……けれど、あなたが立つことで人々は勇気を得ているのも事実なのね」
白いハンカチを胸に押し当て、わたしは頷いた。
「ええ。俯いてはいけません。……檻には戻らないと、何度でも示します」
◇
夜。寝室で、窓から月を眺めながらレオンハルトに抱き寄せられる。
「クラリッサ。疲れていないか?」
「少し。でも……あなたの温もりで、不思議と元気になりますわ」
「ならよかった。……君と共になら、どんな忙しさも越えていける」
彼の声に安心し、肩を預ける。
◇
――悪役令嬢クラリッサは、自由の広場を持つ国の中で。
――政務に追われながらも、愛する夫と共に俯かず立ち続けていた。
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