悪役令嬢ですが、ヒロインより先に幸せを掴みます

さら

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第六十五話 決戦前夜

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 視察の旅を終え、王都へ戻る頃には「自由の令嬢」という呼び名は国の隅々にまで響き渡っていた。
 だが同時に、最後の影が動き始めていた。
 ――「王太子派残党の最終集会」
 その報せは重く、国全体をざわめかせた。

 ◇

 「クラリッサ様。残党が郊外の古城に集結しております」
 家臣の報告に、父は眉をひそめる。
 「やはり最後の足掻きか。……だが、侮ってはならぬ」
 母は蒼白な顔でわたしの手を握り、震える声で言った。
 「どうか……どうか気をつけて」

 わたしは白いハンカチを胸に押し当て、静かに頷いた。
 「ええ。俯きません。檻には戻りません」

 ◇

 夜。新居の寝室。
 「兄上は退いた。だが、彼を信じている残党がまだいる」
 レオンハルトの声は低く、険しかった。
 「彼らは“檻こそ秩序”と信じている。……最後の策を仕掛けてくるだろう」

 「ならばわたしたちも、最後の答えを示す時なのですね」
 「そうだ」

 彼は強くわたしの手を握り、真剣に見つめてきた。
 「クラリッサ。君が俯かない限り、民は必ず自由を選ぶ。だから、どうか一緒に立ってほしい」
 「レオン。わたしは檻には戻りません。必ずあなたと共に立ちます」

 温もりが指先から胸へと広がり、不安よりも誇りが勝っていった。

 ◇

 翌日、広場に人々が集まり始めた。
 「残党が決起するらしい」
 「クラリッサ嬢はどうするのか」
 「必ず立ってくれるはずだ」

 人々の視線はすでに、わたしの選択に注がれていた。

 ◇

 「……決戦前夜か」
 窓から月を眺めるレオンハルトが呟いた。
 わたしは隣に並び、白いハンカチを掲げた。
 「ええ。けれど、俯きません」
 彼は静かに微笑み、わたしを抱き寄せる。
 「君と共に、未来を掴もう」
 「はい。檻には戻りません」

 ◇

 ――悪役令嬢クラリッサは、国の未来を決める最後の戦いを前に。

 ――俯かず、愛する夫と共に立つ誓いを固めた。
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