悪役令嬢ですが、ヒロインより先に幸せを掴みます

さら

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第六十六話 最後の集会

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 王都から半日離れた丘の上に、古びた石造りの城があった。かつては貴族の居城だったが、今は瓦礫と蔦に覆われ、鳥すら巣を作らぬ荒れ地となっている。その荒城に、王太子派の残党が集まっていた。
 ――「自由など偽りだ!」
 ――「檻こそ秩序!」
 怒号が夜空に響き、たいまつが不気味に揺れていた。

 ◇

 「クラリッサ様、あの城に残党が……」
 家臣の報告に、レオンハルトは険しい顔で頷いた。
 「予想通りだ。最後の集会だろう。国を覆す最後の足掻きだ」
 父が低く唸る。「無理に攻めれば血が流れる。だが放置はできぬ」
 母はわたしの手を取り、不安げに見つめる。「どうか……お気をつけて」

 白いハンカチを胸に押し当て、わたしは静かに言った。
 「ええ。俯きません。檻には戻りません」

 ◇

 夜半。荒城の広間に踏み込んだとき、残党の怒号が一斉に浴びせられた。
 「裏切りの令嬢!」
 「王家を貶めた女!」
 「檻に戻れ!」

 だが、わたしは怯まず進み出た。
 「皆さま! わたしは罪人ではありません。檻を拒んだだけです!」

 怒号は続いた。けれども、その中に小さなざわめきが混じる。
 「……俯かなかった」
 「自由を選んだと……?」

 ◇

 「クラリッサ!」
 レオンハルトが剣を掲げ、広間に声を轟かせた。
 「檻を秩序と呼ぶのは間違いだ! 彼女は罪人ではない! ……国の未来を示した象徴だ!」

 残党の一部は動揺し、剣を下ろした。だが、狂信的な者たちは叫ぶ。
 「騙されるな! 檻こそ救いだ!」

 その刃が向けられた瞬間、わたしはハンカチを高く掲げ、声を放った。
 「わたしは檻には戻りません! ……自由を拒む刃にも屈しません!」

 ◇

 ざわめきが広間を覆い、やがて一人の若者が剣を捨てた。
 「……もういい。檻に戻っても、何も変わらない」
 その声に呼応するように、次々と武器が床に落ちていく。

 最後まで叫び続けていた残党の頭領も、やがて力尽きたように膝を折った。
 「……なぜ、俯かぬ……」
 「未来を選ぶためです。わたしは檻には戻りません」

 ◇

 城の外に出たとき、東の空が白み始めていた。
 「クラリッサ。君の声が、最後の足掻きを鎮めた」
 レオンハルトが微笑み、強く抱き寄せる。
 「いいえ。……わたしは檻を拒んだだけです」
 「その拒絶が、この国を変えたんだ」

 白いハンカチを胸に抱きしめ、夜明けの光を見つめる。

 ◇

 ――悪役令嬢クラリッサは、残党の最後の集会を越え。

 ――国に、真の自由の夜明けをもたらした。
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