魔女扱いされて国を追われた聖女は、隣国の王子に溺愛される~いまさら戻ってきてくれなんて言われてももう遅いです~

さら

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第11話 小さな決意と認められる一歩

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 翌朝、窓から差し込む光は澄んでいて、昨夜誓った言葉を思い出させた。――私は彼の隣にいる、迷わず胸を張って。
 けれど、胸に浮かんだ決意をどう形にすればよいのかはまだわからない。守られるだけでなく、自分からも動きたい。そう思いながら、私は侍女に頼み、城内の仕事を少し手伝わせてもらうことにした。

     ◇

 午前中は書庫で巻物の整理を任された。高い棚に並ぶ書物の山は、祈りの書に慣れた私には未知の世界のようだった。紙の香りとインクの色褪せた匂いが漂う。侍女と肩を並べながら、本を分類する作業は単調だが不思議と心が落ち着いた。
 ふと古びた一冊を手に取り、ページを開く。そこには薬草と祈りに関する記録が綴られていた。病に効く植物と、それを用いた治療法。聖女として歩んできた日々を思い出し、指先に熱が宿る。

「これなら……私にできることがあるかもしれない」

 独り言が零れる。もし病や傷を癒やす力を恐れられるのなら、それを正しく知ってもらうことが必要だ。書庫に眠る知識を生かし、薬草や祈りを人々の役に立てれば――。

     ◇

 午後、マリアンヌが庭園に呼んでくれた。彼女は色鮮やかな布を広げ、刺繍をしていた。
「お兄様から聞いたわ。あなたが厨房や書庫を手伝っているって」

「ほんの少しです。役に立てるかわかりませんが……」

 そう答えると、王女は針を止めてこちらを見つめた。
「それで十分よ。誰かのために何かをしたいと思う気持ちが、きっと皆の心を変えていくの」

 その真剣な瞳に胸が熱くなる。花壇の薔薇が風に揺れ、花弁が一枚舞い落ちた。私はそれを拾い上げ、思わず口にする。
「私も……この国で自分の居場所を見つけたい。守られるだけじゃなく、私自身の価値を示したいんです」

 マリアンヌは笑みを浮かべて頷いた。
「それなら大丈夫。あなたならきっとできる」

     ◇

 夕方、城の医務室で小さな出来事があった。侍女の一人が作業中に指を切り、血が滲んでいた。慌てる彼女に私は駆け寄り、布で手を包みながら深く息を吸った。

 ――恐れるな。これは呪いではない。癒やすための力。

 掌に光を集めると、淡い輝きが傷口を覆い、血が止まった。侍女は目を見開き、震える声を漏らす。
「……痛みが、消えました」

 私は微笑み、手をそっと離した。
「大丈夫。少し休んでください」

 その場にいた他の侍女たちがざわめき、すぐに感謝の言葉が溢れた。恐れではなく、感謝。久しく感じていなかった反応に、胸の奥が震えた。

     ◇

 夜、廊下を歩いているとアレクが現れた。私を見るなり微笑を浮かべ、真っ直ぐに近づいてくる。
「今日は随分と動いていたな。疲れていないか?」

「ええ……少し疲れましたが、でも充実しています。医務室で怪我をした方を癒やすこともできました」

 彼の瞳が真剣に輝く。
「そうか。それを聞けて嬉しい。君が誰かを救ったことを、この城にいる皆が知れば、必ず心は変わる」

 そう言って、彼はそっと私の手を握った。温かな掌に力が込められ、心が支えられる。

「セリーナ。君は守られるだけの存在ではない。君自身が、人を守れる存在だ」

 その言葉に涙がにじんだ。信じてもらえることが、こんなにも強さになるとは思わなかった。

     ◇

 部屋に戻り、窓から星空を見上げる。今夜の星はひときわ明るい。
 ――私は確かに、この国で役に立てる。
 その確信が小さな芽となり、心の奥で確かに育ち始めていた。
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