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第12話 揺れる評判と近づく影
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翌朝の城はざわめいていた。侍女の小さな怪我を癒やしたことが噂になり、廊下を歩くとひそひそ声が追いかけてくる。けれど昨日までの冷たい視線と違い、そこには驚きと好奇の色が混ざっていた。
「聖女の力は本物だったのか」
「魔女などではなかったのだな」
「殿下がお認めになったのも納得だ」
半信半疑の声ではあったが、拒絶の気配は和らいでいる。胸の奥で小さな安堵が広がった。
◇
午前、私は再び医務室を訪れた。昨夜癒やした侍女が笑顔で迎えてくれる。
「本当にありがとうございました。おかげで仕事に戻れました」
その言葉に心が温かくなり、自然と微笑みが零れる。
すると別の若い兵士が戸惑いがちに声をかけてきた。
「す、すみません……肩を痛めてしまって。もしよければ……」
彼の声は震えていた。恐れと期待が入り混じるその瞳に頷き、手を添える。淡い光がじわりと広がり、兵士の表情が緩む。
「……楽になった。ありがとうございます」
医務室にいた人々がその様子を見て、静かな感嘆の声を上げた。恐怖の囁きは、少しずつ感謝の囁きに変わり始めている。
◇
しかし全てが好意に変わったわけではなかった。昼下がり、回廊を歩いていると、背後から冷たい声が聞こえた。
「殿下に取り入るために力を見せびらかしているのだろう」
「国を追われた身が、この城で居場所を得るなど許されない」
振り返ると、若い貴族の娘たちが鋭い視線を投げていた。彼女たちにとって、王子の隣に立つ私の存在は容認できないのだろう。胸が締め付けられたが、反論はしなかった。言葉を返しても、信じてもらえるとは思えなかったから。
けれど、その場にアレクが現れた。
「君たち、今の言葉は俺への侮辱だ」
冷ややかな声に娘たちが青ざめる。アレクは私の隣に立ち、はっきりと言い放った。
「セリーナは俺の客人であり、力を持つがゆえに追放された不遇の人だ。彼女を貶めることは、この俺を貶めることに等しい」
言葉は鋭く、揺るがなかった。娘たちは顔を伏せ、慌ただしく去っていく。
私はその横顔を見つめながら、胸が熱くなるのを感じた。彼がこうして守ってくれることが嬉しくて、同時に――守られるだけの自分を変えたいと、改めて強く思った。
◇
その夜、アレクが私の部屋を訪れた。窓辺に座って星を見上げていた私は、扉が開く音に振り返る。
「今日は……ご迷惑をかけてしまいましたね」
「迷惑だと? 違う。俺が選んで君をここに迎えた。何があっても迷惑などではない」
真剣な声に胸が震える。けれど、思わず俯いてしまった。
「でも、私がいることであなたに負担が……」
言葉を遮るように、彼が歩み寄り、そっと手を取った。温かさが指先から心臓まで届く。
「セリーナ。君は俺にとって負担ではない。むしろ……君が隣にいることが、俺を強くする」
その瞳に宿る光は真実で、視線を逸らせなかった。胸が高鳴り、息が浅くなる。
――この人の隣に立ちたい。守られるだけでなく、共に歩みたい。
その思いが強く、確かな形を持ちはじめていた。
◇
夜が更け、窓の外の月が高く昇る。アレクは扉の前で振り返り、静かに告げた。
「いつか必ず、皆に君の価値を証明してみせる。だが、それ以上に……君自身が自分を信じてほしい」
扉が閉まったあと、私は胸に手を当てた。彼の言葉が熱となって残っている。
――私は、私を信じなければ。
そう強く思った時、心に芽生えた決意は、もう簡単には揺らがないものになっていた。
「聖女の力は本物だったのか」
「魔女などではなかったのだな」
「殿下がお認めになったのも納得だ」
半信半疑の声ではあったが、拒絶の気配は和らいでいる。胸の奥で小さな安堵が広がった。
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午前、私は再び医務室を訪れた。昨夜癒やした侍女が笑顔で迎えてくれる。
「本当にありがとうございました。おかげで仕事に戻れました」
その言葉に心が温かくなり、自然と微笑みが零れる。
すると別の若い兵士が戸惑いがちに声をかけてきた。
「す、すみません……肩を痛めてしまって。もしよければ……」
彼の声は震えていた。恐れと期待が入り混じるその瞳に頷き、手を添える。淡い光がじわりと広がり、兵士の表情が緩む。
「……楽になった。ありがとうございます」
医務室にいた人々がその様子を見て、静かな感嘆の声を上げた。恐怖の囁きは、少しずつ感謝の囁きに変わり始めている。
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しかし全てが好意に変わったわけではなかった。昼下がり、回廊を歩いていると、背後から冷たい声が聞こえた。
「殿下に取り入るために力を見せびらかしているのだろう」
「国を追われた身が、この城で居場所を得るなど許されない」
振り返ると、若い貴族の娘たちが鋭い視線を投げていた。彼女たちにとって、王子の隣に立つ私の存在は容認できないのだろう。胸が締め付けられたが、反論はしなかった。言葉を返しても、信じてもらえるとは思えなかったから。
けれど、その場にアレクが現れた。
「君たち、今の言葉は俺への侮辱だ」
冷ややかな声に娘たちが青ざめる。アレクは私の隣に立ち、はっきりと言い放った。
「セリーナは俺の客人であり、力を持つがゆえに追放された不遇の人だ。彼女を貶めることは、この俺を貶めることに等しい」
言葉は鋭く、揺るがなかった。娘たちは顔を伏せ、慌ただしく去っていく。
私はその横顔を見つめながら、胸が熱くなるのを感じた。彼がこうして守ってくれることが嬉しくて、同時に――守られるだけの自分を変えたいと、改めて強く思った。
◇
その夜、アレクが私の部屋を訪れた。窓辺に座って星を見上げていた私は、扉が開く音に振り返る。
「今日は……ご迷惑をかけてしまいましたね」
「迷惑だと? 違う。俺が選んで君をここに迎えた。何があっても迷惑などではない」
真剣な声に胸が震える。けれど、思わず俯いてしまった。
「でも、私がいることであなたに負担が……」
言葉を遮るように、彼が歩み寄り、そっと手を取った。温かさが指先から心臓まで届く。
「セリーナ。君は俺にとって負担ではない。むしろ……君が隣にいることが、俺を強くする」
その瞳に宿る光は真実で、視線を逸らせなかった。胸が高鳴り、息が浅くなる。
――この人の隣に立ちたい。守られるだけでなく、共に歩みたい。
その思いが強く、確かな形を持ちはじめていた。
◇
夜が更け、窓の外の月が高く昇る。アレクは扉の前で振り返り、静かに告げた。
「いつか必ず、皆に君の価値を証明してみせる。だが、それ以上に……君自身が自分を信じてほしい」
扉が閉まったあと、私は胸に手を当てた。彼の言葉が熱となって残っている。
――私は、私を信じなければ。
そう強く思った時、心に芽生えた決意は、もう簡単には揺らがないものになっていた。
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