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第13話 自ら選んだ一歩
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朝の空気は澄んでいて、城壁を越えて届く鐘の音が胸に染み渡る。鏡の前で髪を整えながら、昨夜のアレクの言葉を思い返した。――「君自身が自分を信じてほしい」。
ただ守られるだけではなく、私の意思で動くときが来たのだ。
◇
午前、私は侍女に頼み、薬草庫へ案内してもらった。石造りの小部屋には乾燥させた薬草が棚いっぱいに吊るされ、独特の香りが漂っている。セージ、タイム、ラベンダー――祈りとともに学んだ草木の名前が次々と脳裏によみがえる。
「これを……調合してみてもいいでしょうか」
私の言葉に侍女は驚いたが、やがて小さく頷いた。私は水を張った小鍋を火にかけ、手際よく薬草を刻んで入れていく。祈りの言葉を心の中で唱えると、香りがふわりと広がった。
出来上がったのは簡素な薬草茶。咳を和らげ、疲れを癒やす効能がある。侍女に差し出すと、恐る恐る口をつけ、驚いたように目を見開いた。
「飲みやすい……体が温かくなります」
その声に胸が震える。これこそ、私ができること。人を癒やし、安心させること。
◇
その日の午後、城の廊下で偶然マリアンヌと出会った。彼女は鮮やかな黄色のドレスを揺らしながら、目を輝かせて言った。
「セリーナ、あなたの薬草茶の噂を聞いたわ! 皆、疲れが取れるって喜んでいたもの」
「本当ですか?」
「ええ。お兄様にも飲ませてあげて。きっと喜ぶわ」
王女の言葉に頬が熱くなる。アレクに役立つことができるかもしれない――それだけで心が高鳴った。
◇
夕刻、執務室を訪ねると、アレクが机に広げた書類に目を通していた。疲労が色濃く滲み、額に手を当てている。
「お疲れのようですね」
声をかけると彼は驚いたように顔を上げ、すぐに微笑を浮かべた。
「大丈夫だ。君が来てくれて、疲れなど吹き飛ぶ」
「……少しだけでも、これを飲んでみてください」
私は薬草茶を差し出した。香りが広がると、彼は興味深そうに杯を口に運んだ。しばし黙り、そして目を細める。
「温かい……心がほどけるようだ」
その表情に胸がじんわりと熱を帯びる。私が作ったものが、彼を癒やせている――それが何よりの喜びだった。
「セリーナ。君がこうして自ら考えて動いてくれることが、俺には何より嬉しい」
そう言って、彼はそっと私の手を取った。指先から伝わる熱に、涙が滲みそうになる。
◇
その夜、侍女が薬草茶を求めに来た。兵士の一人が体調を崩したという。私は迷わず調合し、彼に届けた。彼は驚き、そして深々と頭を下げた。
「ありがとうございます……明日からまた働けそうです」
その言葉を受けて、周囲の兵士たちが安堵の笑みを浮かべた。恐怖や疑念ではなく、感謝の眼差しが私に向けられている。
◇
部屋に戻り、窓辺に立つ。夜空の星々が瞬き、胸の奥に広がるものがあった。
――私は確かに、この城で役に立てる。
庇護されるだけではなく、私自身の手で。
そう思ったとき、心の奥で温かな光が灯った。それは消えない祈りのように、静かに強く輝いていた。
ただ守られるだけではなく、私の意思で動くときが来たのだ。
◇
午前、私は侍女に頼み、薬草庫へ案内してもらった。石造りの小部屋には乾燥させた薬草が棚いっぱいに吊るされ、独特の香りが漂っている。セージ、タイム、ラベンダー――祈りとともに学んだ草木の名前が次々と脳裏によみがえる。
「これを……調合してみてもいいでしょうか」
私の言葉に侍女は驚いたが、やがて小さく頷いた。私は水を張った小鍋を火にかけ、手際よく薬草を刻んで入れていく。祈りの言葉を心の中で唱えると、香りがふわりと広がった。
出来上がったのは簡素な薬草茶。咳を和らげ、疲れを癒やす効能がある。侍女に差し出すと、恐る恐る口をつけ、驚いたように目を見開いた。
「飲みやすい……体が温かくなります」
その声に胸が震える。これこそ、私ができること。人を癒やし、安心させること。
◇
その日の午後、城の廊下で偶然マリアンヌと出会った。彼女は鮮やかな黄色のドレスを揺らしながら、目を輝かせて言った。
「セリーナ、あなたの薬草茶の噂を聞いたわ! 皆、疲れが取れるって喜んでいたもの」
「本当ですか?」
「ええ。お兄様にも飲ませてあげて。きっと喜ぶわ」
王女の言葉に頬が熱くなる。アレクに役立つことができるかもしれない――それだけで心が高鳴った。
◇
夕刻、執務室を訪ねると、アレクが机に広げた書類に目を通していた。疲労が色濃く滲み、額に手を当てている。
「お疲れのようですね」
声をかけると彼は驚いたように顔を上げ、すぐに微笑を浮かべた。
「大丈夫だ。君が来てくれて、疲れなど吹き飛ぶ」
「……少しだけでも、これを飲んでみてください」
私は薬草茶を差し出した。香りが広がると、彼は興味深そうに杯を口に運んだ。しばし黙り、そして目を細める。
「温かい……心がほどけるようだ」
その表情に胸がじんわりと熱を帯びる。私が作ったものが、彼を癒やせている――それが何よりの喜びだった。
「セリーナ。君がこうして自ら考えて動いてくれることが、俺には何より嬉しい」
そう言って、彼はそっと私の手を取った。指先から伝わる熱に、涙が滲みそうになる。
◇
その夜、侍女が薬草茶を求めに来た。兵士の一人が体調を崩したという。私は迷わず調合し、彼に届けた。彼は驚き、そして深々と頭を下げた。
「ありがとうございます……明日からまた働けそうです」
その言葉を受けて、周囲の兵士たちが安堵の笑みを浮かべた。恐怖や疑念ではなく、感謝の眼差しが私に向けられている。
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部屋に戻り、窓辺に立つ。夜空の星々が瞬き、胸の奥に広がるものがあった。
――私は確かに、この城で役に立てる。
庇護されるだけではなく、私自身の手で。
そう思ったとき、心の奥で温かな光が灯った。それは消えない祈りのように、静かに強く輝いていた。
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