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第14話 嫉妬と小さな衝突
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薬草茶の出来事から数日が経った。城の中で私に向けられる視線は、少しずつ変わり始めていた。以前は恐れや疑いが濃かったのに、今は好奇と期待が入り混じっている。医務室を訪ねてくる兵士や侍女は後を絶たず、私はできる限り応えていた。
けれど、誰もが歓迎しているわけではない。力を認められつつある分、嫉妬や反発も強まっていた。
◇
ある午後のこと。中庭の回廊で、二人の貴族の娘に呼び止められた。鮮やかなドレスを纏い、扇を持つ姿は優雅そのものだが、瞳の奥には冷たい光が宿っている。
「まあ、あなたが噂の聖女様?」
「ふふ、聖女と呼ばれるのも今は居心地がいいのでしょうね。魔女と罵られていた頃よりは」
皮肉を含んだ笑みに胸が冷える。けれど逃げてはいけない。私は深く息を吸い、静かに答えた。
「私は……ただ、人の役に立ちたいと思っているだけです」
「役に立つ? 王子殿下に甘い茶を差し出して取り入っているだけでしょう」
「そうよ。殿下の隣に立つのは、あなたのような素性の怪しい女ではなく――」
最後まで言わせる前に、背後から低い声が響いた。
「面白いな。俺の隣に立つのは誰だと、君たちが決めるのか?」
振り返ると、アレクが立っていた。冷たい眼差しに二人の娘が青ざめる。
「セリーナを侮辱することは、この俺を侮辱することだ。覚えておけ」
鋭い言葉に娘たちは震え、慌てて礼をして去っていった。
◇
その場に残された私は、安堵よりも胸の痛みを覚えていた。庇ってくれるのは嬉しい。けれど、このままでは私はただの負担になってしまう。俯く私に、アレクは歩み寄り、声を低くした。
「気にするな。嫉妬は真実を歪める。だが俺は真実を知っている。君がどれほど誠実か、誰よりもわかっている」
「……それでも、私がいることで殿下に迷惑が……」
言いかけると、彼は手を取り、しっかりと握った。
「迷惑ではない。俺は君と共に歩むことを望んでいる。それ以上の理由はいらない」
その言葉は真っ直ぐで、胸に突き刺さった。目頭が熱くなり、視界が揺れる。けれど、もう涙に流されるだけの自分ではいたくない。
◇
夕刻、私はマリアンヌにその出来事を話した。王女は眉をひそめ、ため息をつく。
「予想していたことよ。けれど、あなたは逃げなかった。それが大事なの」
「逃げたい気持ちはありました。でも……彼の隣にいたいと思ったから」
そう口にすると、マリアンヌは微笑んだ。
「なら、胸を張りなさい。お兄様はいつだって正直で誠実よ。そんな人が選んだあなたを、私は信じる」
その言葉に力をもらう。小さな衝突は避けられない。けれど、それを越えていけば、きっと本当の居場所に辿り着ける。
◇
夜、部屋で薬草を刻みながら、今日の出来事を思い返す。恐れも迷いも消えたわけではない。けれど、胸の奥には確かに灯があった。
――私は彼の隣に立つ。守られるだけではなく、自分の力で。
刻まれたその誓いは、もう揺るぎようのないものになりつつあった。
けれど、誰もが歓迎しているわけではない。力を認められつつある分、嫉妬や反発も強まっていた。
◇
ある午後のこと。中庭の回廊で、二人の貴族の娘に呼び止められた。鮮やかなドレスを纏い、扇を持つ姿は優雅そのものだが、瞳の奥には冷たい光が宿っている。
「まあ、あなたが噂の聖女様?」
「ふふ、聖女と呼ばれるのも今は居心地がいいのでしょうね。魔女と罵られていた頃よりは」
皮肉を含んだ笑みに胸が冷える。けれど逃げてはいけない。私は深く息を吸い、静かに答えた。
「私は……ただ、人の役に立ちたいと思っているだけです」
「役に立つ? 王子殿下に甘い茶を差し出して取り入っているだけでしょう」
「そうよ。殿下の隣に立つのは、あなたのような素性の怪しい女ではなく――」
最後まで言わせる前に、背後から低い声が響いた。
「面白いな。俺の隣に立つのは誰だと、君たちが決めるのか?」
振り返ると、アレクが立っていた。冷たい眼差しに二人の娘が青ざめる。
「セリーナを侮辱することは、この俺を侮辱することだ。覚えておけ」
鋭い言葉に娘たちは震え、慌てて礼をして去っていった。
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その場に残された私は、安堵よりも胸の痛みを覚えていた。庇ってくれるのは嬉しい。けれど、このままでは私はただの負担になってしまう。俯く私に、アレクは歩み寄り、声を低くした。
「気にするな。嫉妬は真実を歪める。だが俺は真実を知っている。君がどれほど誠実か、誰よりもわかっている」
「……それでも、私がいることで殿下に迷惑が……」
言いかけると、彼は手を取り、しっかりと握った。
「迷惑ではない。俺は君と共に歩むことを望んでいる。それ以上の理由はいらない」
その言葉は真っ直ぐで、胸に突き刺さった。目頭が熱くなり、視界が揺れる。けれど、もう涙に流されるだけの自分ではいたくない。
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夕刻、私はマリアンヌにその出来事を話した。王女は眉をひそめ、ため息をつく。
「予想していたことよ。けれど、あなたは逃げなかった。それが大事なの」
「逃げたい気持ちはありました。でも……彼の隣にいたいと思ったから」
そう口にすると、マリアンヌは微笑んだ。
「なら、胸を張りなさい。お兄様はいつだって正直で誠実よ。そんな人が選んだあなたを、私は信じる」
その言葉に力をもらう。小さな衝突は避けられない。けれど、それを越えていけば、きっと本当の居場所に辿り着ける。
◇
夜、部屋で薬草を刻みながら、今日の出来事を思い返す。恐れも迷いも消えたわけではない。けれど、胸の奥には確かに灯があった。
――私は彼の隣に立つ。守られるだけではなく、自分の力で。
刻まれたその誓いは、もう揺るぎようのないものになりつつあった。
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