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第25話 揺れ動く宮廷と語られた想い
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小部屋に囚われた一件は、瞬く間に王宮全体を揺らした。捕らえられた貴族の名は人々の間で囁かれ、表立っては誰も語らぬものの、廊下の空気は一層張り詰めていた。
兵士たちは警備を強化し、侍女たちは私に微笑みかけながらも、どこか怯えたような瞳をしている。陰謀が完全に終わったわけではないことを、誰もが知っていた。
◇
その日の午後、大広間に人々が集められた。事件の報告と、国としての対応を明らかにするためだった。壇上に立つアレクの姿は威風堂々としていた。
「先日、我が国の客人セリーナを害そうとする者がいた。だが、その企みは失敗に終わった。彼女は無事であり、今もここにいる」
人々の視線が私に集まる。心臓が早鐘を打つ。けれど、今逃げてはいけない。私は一歩前に出た。
「私は……追放され、この国に来ました。居場所を失い、ただ流れ着いたに過ぎませんでした。けれど、ここで人を救う機会を得て、多くの方々の温かい声に触れました」
声は震えていたが、胸の奥から湧き上がる思いを抑えられなかった。
「私は聖女としてではなく、一人の人間として、皆さまのお役に立ちたいのです。どうか恐れず、必要であれば声をかけてください。それが、私の存在をここに置いてくださる唯一の証だと思っています」
沈黙の後、兵士の一人が声を上げた。
「聖女様のおかげで怪我が癒えました! 本当に感謝しています!」
次いで侍女たちが口々に頷き、やがて広間全体がざわめきから感謝の声に変わった。胸に熱いものが込み上げ、視界が滲む。
◇
その夜。広間での出来事を思い返しながら部屋に戻ると、アレクが待っていた。彼は迷いのない瞳で私を見つめ、ゆっくりと口を開いた。
「今日の君の言葉、胸を打たれた。俺がどれほど守ると言っても、人々の心を変えるのは君自身の言葉だ」
「……本当に届いたのでしょうか」
「届いた。確かに」
彼はそう断言し、私の両手を包んだ。
「セリーナ。君はもう、この国の一部だ。誰が否定しても、俺は決して揺るがない。そして……俺は一人の男として、君を離さない」
その言葉に心臓が大きく跳ね、頬が熱くなる。守られるだけの存在から、一緒に未来を見据える存在へ。二人の距離はもう迷うほど遠くなかった。
◇
窓の外には、王都の灯火がきらめいていた。街を照らす光は、確かに人々の声そのものだ。
――私は、もう一人ではない。
アレクの隣で、この国の人々と共に。そう信じられる夜だった。
兵士たちは警備を強化し、侍女たちは私に微笑みかけながらも、どこか怯えたような瞳をしている。陰謀が完全に終わったわけではないことを、誰もが知っていた。
◇
その日の午後、大広間に人々が集められた。事件の報告と、国としての対応を明らかにするためだった。壇上に立つアレクの姿は威風堂々としていた。
「先日、我が国の客人セリーナを害そうとする者がいた。だが、その企みは失敗に終わった。彼女は無事であり、今もここにいる」
人々の視線が私に集まる。心臓が早鐘を打つ。けれど、今逃げてはいけない。私は一歩前に出た。
「私は……追放され、この国に来ました。居場所を失い、ただ流れ着いたに過ぎませんでした。けれど、ここで人を救う機会を得て、多くの方々の温かい声に触れました」
声は震えていたが、胸の奥から湧き上がる思いを抑えられなかった。
「私は聖女としてではなく、一人の人間として、皆さまのお役に立ちたいのです。どうか恐れず、必要であれば声をかけてください。それが、私の存在をここに置いてくださる唯一の証だと思っています」
沈黙の後、兵士の一人が声を上げた。
「聖女様のおかげで怪我が癒えました! 本当に感謝しています!」
次いで侍女たちが口々に頷き、やがて広間全体がざわめきから感謝の声に変わった。胸に熱いものが込み上げ、視界が滲む。
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その夜。広間での出来事を思い返しながら部屋に戻ると、アレクが待っていた。彼は迷いのない瞳で私を見つめ、ゆっくりと口を開いた。
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「……本当に届いたのでしょうか」
「届いた。確かに」
彼はそう断言し、私の両手を包んだ。
「セリーナ。君はもう、この国の一部だ。誰が否定しても、俺は決して揺るがない。そして……俺は一人の男として、君を離さない」
その言葉に心臓が大きく跳ね、頬が熱くなる。守られるだけの存在から、一緒に未来を見据える存在へ。二人の距離はもう迷うほど遠くなかった。
◇
窓の外には、王都の灯火がきらめいていた。街を照らす光は、確かに人々の声そのものだ。
――私は、もう一人ではない。
アレクの隣で、この国の人々と共に。そう信じられる夜だった。
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