魔女扱いされて国を追われた聖女は、隣国の王子に溺愛される~いまさら戻ってきてくれなんて言われてももう遅いです~

さら

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第27話 子どもたちの笑顔と忍び寄る罠

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 朝の陽射しを受けながら、私はマリアンヌと共に城下の孤児院へ向かった。石畳の道を馬車が進むと、子どもたちの笑い声が遠くから聞こえてくる。胸が高鳴り、同時に緊張も広がった。私が彼らに何を与えられるのか、答えはまだ見えていなかったからだ。

     ◇

 孤児院は小さな教会に併設されており、古びた壁を花で飾っていた。扉を開けると、十数人の子どもたちが駆け寄ってきた。マリアンヌを見て歓声を上げ、次に私を見て首を傾げる。

「この人はね、セリーナ様。お兄様――殿下が大切にしている方よ」

 王女の紹介に、子どもたちは驚いたように目を丸くした。私はしゃがみ込み、微笑んで声をかける。
「初めまして。今日は皆さんとお話したくて来ました」

 最初は警戒していた子どもたちも、やがて興味深そうに近づいてきた。私は懐から薬草を取り出し、簡単な茶を作って見せる。香りが漂うと、子どもたちの顔がぱっと明るくなった。

「いい匂い!」
「これ飲んでいいの?」

 小さな手に杯を渡すと、彼らは夢中で飲み、笑顔を見せた。その姿に胸が熱くなる。私は“聖女”としてではなく、ただの人として子どもたちに受け入れられている――そう感じられた瞬間だった。

     ◇

 その後、庭で遊ぶ子どもたちと一緒に花冠を編んだ。指先で不器用に編みながらも、笑い合う声が響く。ある少女が花冠を私の頭に載せ、にこりと笑った。
「セリーナ様は、ぜったい魔女なんかじゃない。だって優しいもん」

 胸がじんわりと温かくなり、目頭が熱くなる。子どもたちの純粋な言葉は、どんな証明よりも力強かった。

     ◇

 夕刻、孤児院を後にする頃には、周囲の人々も集まり始めていた。子どもたちと笑う私の姿を見て、囁きは感謝へと変わっていく。
「聖女様……いや、セリーナ様だ」
「魔女ではない。本当に人を救う方だ」

 その声を耳にし、胸の奥に確かな光が灯る。

     ◇

 だがその一方で。孤児院から離れた路地裏では、黒衣の男たちが密かに集まっていた。
「人々の心が彼女に傾きすぎている」
「このままでは我らの立場が危うい。次の手を打たねば」

 彼らの瞳は冷たく光り、計画を練る声が夜の帳に溶けていった。

     ◇

 城に戻ると、アレクが待っていた。彼は子どもたちと触れ合った私の話を聞き、真剣な眼差しで言った。
「君は確かに人の心を動かしている。もう誰も君を魔女と呼べはしない」

 私は微笑み、静かに答えた。
「それでも、まだ影は残っています。だから……私は逃げません」

 彼は力強く頷き、私の手を握った。
「共に立ち向かおう。君となら、必ず」

     ◇

 窓の外に灯る街の光を眺めながら、私は心に誓った。
 ――人々の笑顔を守るために。
 どんな陰謀が迫ろうとも、私は彼と共に進む。
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