魔女扱いされて国を追われた聖女は、隣国の王子に溺愛される~いまさら戻ってきてくれなんて言われてももう遅いです~

さら

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第34話 追い詰められた伯爵家と最後の抵抗

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 伯爵家の名が公に晒されてから、王都の空気は大きく変わった。広場では連日「伯爵家を裁け!」という声が響き、兵士たちは民の暴走を抑えるのに苦心していた。だが、その声は同時に私を守る盾にもなっていた。もはや「魔女」と呼ぶ者はほとんどいない。
 ――けれど、追い詰められた獣ほど恐ろしいものはない。
 その予感は、日を追うごとに濃くなっていった。

     ◇

 午前。執務室でアレクは重苦しい表情を浮かべていた。机の上には密書が積まれ、封蝋が次々と割られていく。
「伯爵家は自らの領地に兵を集めているらしい」

 家臣の報告に、部屋の空気が凍る。アレクは鋭い眼差しで答えた。
「反乱を起こすつもりか……」

 私は息を呑んだ。陰口や陰謀ではなく、ついに力を行使する段階に入ったのだ。
「殿下……私のせいで……」

「違う!」

 アレクの声は鋭かった。
「君がいなければ、伯爵家の腐敗は永遠に表に出なかった。これは避けられぬ闘いだ。だから俺は君を責めない」

 その言葉に胸が熱くなる。恐怖の中でも、彼の声は確かな光だった。

     ◇

 夕刻。庭園で風に当たりながら、マリアンヌと話していた。王女は心配そうに眉を寄せる。
「お兄様は強いけれど、あなたを想うあまり無茶をするかもしれない。……支えてあげて」

「私に……できるでしょうか」

「できるわ。あなたの声は人の心を動かす。お兄様にとっても、あなたは力そのものよ」

 その言葉に背中を押される。私は彼を支えると誓った。

     ◇

 夜。執務を終えたアレクが私の部屋を訪れた。彼の瞳には疲労が滲んでいたが、揺るぎない強さが宿っていた。
「伯爵家は追い詰められている。だが、最後の抵抗を見せるはずだ。君を狙う可能性もまだある」

 私は彼の手を取った。
「どんなことがあっても、私は逃げません。あなたの隣にいます」

 彼は驚いたように目を見開き、やがて深い微笑を浮かべた。
「……君がそう言ってくれることが、何よりの力だ」

 彼の手が私の頬に触れる。温かさが広がり、胸が震える。
「セリーナ。俺は君を愛している。人々がどう思おうと、俺の答えは変わらない」

 その告白に、息が止まる。涙が溢れ、言葉が震える。
「私も……殿下を愛しています」

 互いの想いが静かに、けれど確かに結ばれた瞬間だった。

     ◇

 だが同じ夜。城の外れの館で、伯爵家の主が冷たく笑んでいた。
「追い詰められた? いいや、これからだ。最後に一矢を放ち、この女を必ず葬る」

 蝋燭の炎が揺れ、影が壁を這う。嵐の前の静けさが、確かに迫っていた。

     ◇

 窓辺に立ち、アレクの告白を反芻する。心は恐怖に震えながらも、同時に確かな炎で満ちていた。
 ――私は彼と共にある。愛と共に、この国の未来を選ぶ。
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