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第25話 雪に閉ざされた日々
〇
冬の初雪は静かに降り始めたが、やがて谷を真っ白に埋め尽くした。屋根も畑も木々も雪に覆われ、村はまるで別世界のように沈黙している。冷たい風が吹くたびに窓が軋み、遠くの森は灰色の影に閉ざされていた。
クラリッサは厚い毛布をまとい、朝早くから暖炉の火を絶やさぬように動き回っていた。薪をくべ、煮込みを温め、薬草茶を準備する。王都では召使いに任せていたことばかりだが、今は自らの手でこなす。
「奥方様、こちらに!」
リーネが駆け込んできた。頬は赤く、吐く息が白い。
「子どもたちが外で遊んで、手を真っ赤に凍らせちゃって……」
クラリッサは急いで薬草の軟膏を用意し、暖炉のそばに子どもたちを座らせた。
「大丈夫。これを塗ればじきに温まるわ」
子どもたちが安心したように笑い、母親たちは頭を下げる。その様子に、クラリッサの胸はじんわりと温まった。雪に閉ざされても、人の心は寄り添えば温め合えるのだ。
△
昼頃になると、ライナルトが雪を払って屋敷へ戻ってきた。肩には薪の束を抱え、外套には白い雪片が積もっている。
「森までの道が塞がれていた。明日からは近くの薪を節約しなければならん」
「そうですか……。では、薬草園の乾燥庫に残してあるハーブで、体を温める飲み物を増やしましょう」
二人は並んで作業を始めた。鍋から立ち上る湯気と香りが部屋を満たし、冷え切った体をじんわりと解きほぐす。
その夜、村人たちが屋敷に集まり、共に暖を取った。マルタが焼いた黒パンを配り、子どもたちは薪の炎を見ながら歌を口ずさむ。外は吹雪でも、中は笑い声で溢れていた。
「王都には確かに贅沢がありました。でも……この温もりは、ここでしか得られません」
クラリッサの言葉に、村人たちは深く頷いた。
◇
数日後、雪はさらに積もり、村は完全に外界と隔絶された。食糧も薪も限られている。だが、誰ひとり不満を漏らさなかった。皆が支え合い、工夫を凝らしながら日々を乗り越えていた。
クラリッサは窓辺に座り、白銀の世界を見つめながら手編みのマフラーを編んでいた。ぎこちない手つきだったが、ライナルトのためにと心を込めた一本だった。
「……お前が作ったのか?」
帰宅したライナルトがそれを受け取り、太い指で触れる。クラリッサは照れながら答えた。
「下手ですが……少しでも暖かくなればと思って」
彼は黙ってマフラーを巻き、その大きな掌で彼女の頭を撫でた。
「十分だ。心まで温まる」
クラリッサは胸がいっぱいになり、そっと彼の腕に寄り添った。雪に閉ざされた日々は厳しい。けれど、その厳しさの中でこそ、人と人の絆は強く結ばれていく。
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冬の初雪は静かに降り始めたが、やがて谷を真っ白に埋め尽くした。屋根も畑も木々も雪に覆われ、村はまるで別世界のように沈黙している。冷たい風が吹くたびに窓が軋み、遠くの森は灰色の影に閉ざされていた。
クラリッサは厚い毛布をまとい、朝早くから暖炉の火を絶やさぬように動き回っていた。薪をくべ、煮込みを温め、薬草茶を準備する。王都では召使いに任せていたことばかりだが、今は自らの手でこなす。
「奥方様、こちらに!」
リーネが駆け込んできた。頬は赤く、吐く息が白い。
「子どもたちが外で遊んで、手を真っ赤に凍らせちゃって……」
クラリッサは急いで薬草の軟膏を用意し、暖炉のそばに子どもたちを座らせた。
「大丈夫。これを塗ればじきに温まるわ」
子どもたちが安心したように笑い、母親たちは頭を下げる。その様子に、クラリッサの胸はじんわりと温まった。雪に閉ざされても、人の心は寄り添えば温め合えるのだ。
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昼頃になると、ライナルトが雪を払って屋敷へ戻ってきた。肩には薪の束を抱え、外套には白い雪片が積もっている。
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二人は並んで作業を始めた。鍋から立ち上る湯気と香りが部屋を満たし、冷え切った体をじんわりと解きほぐす。
その夜、村人たちが屋敷に集まり、共に暖を取った。マルタが焼いた黒パンを配り、子どもたちは薪の炎を見ながら歌を口ずさむ。外は吹雪でも、中は笑い声で溢れていた。
「王都には確かに贅沢がありました。でも……この温もりは、ここでしか得られません」
クラリッサの言葉に、村人たちは深く頷いた。
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数日後、雪はさらに積もり、村は完全に外界と隔絶された。食糧も薪も限られている。だが、誰ひとり不満を漏らさなかった。皆が支え合い、工夫を凝らしながら日々を乗り越えていた。
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「……お前が作ったのか?」
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「下手ですが……少しでも暖かくなればと思って」
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「十分だ。心まで温まる」
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