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雪がやんで三日が過ぎた。森の木々にはまだ白が残り、昼の光を反射してまぶしく輝いている。吐く息は相変わらず白く、けれどその冷たさにも少しずつ慣れてきた。
小屋の中は静かだった。暖炉の火が一定のリズムで燃え、時折ぱちんと音を立てる。その音が妙に心地よくて、私は椅子に座りながら針仕事をしていた。
ルシアンが作ってくれた布の切れ端を縫い合わせ、小さな袋を作っている。中に乾いた月草を詰めて、香り袋にするつもりだった。彼が眠るとき、少しでも安らげるように——そんなことを考えている自分に、気づけば微笑んでしまう。
扉の向こうで、雪を踏む音がした。外に出ていたルシアンが戻ってきたらしい。
扉が開くと、冷たい風と一緒に森の匂いが流れ込んでくる。彼の肩には雪の粉が積もっていて、髪の端が濡れて光っていた。
「おかえりなさい」
「ああ。少し森を見回ってきた」
「何かあったんですか?」
「足跡があった。人のものだ」
その言葉に、胸がきゅっと縮む。
「人……?」
「村の者かもしれん。けれど、見覚えのない靴跡だった」
ルシアンの声が低く、警戒を帯びていた。
私は無意識に立ち上がり、彼の外套の袖を掴んだ。
「危険なんですか?」
「まだわからん。しばらくは外に出るな」
「でも、もし——」
「大丈夫だ。ここはすぐには見つからない」
ルシアンがそう言って私の手を包む。その手は冷たいはずなのに、驚くほど温かく感じられた。
外の世界に再び“誰か”がいるかもしれない——その事実が、恐ろしいようで、どこか懐かしくもあった。
王都を離れて以来、他人という存在を避けてきた。それなのに、心のどこかで、人の声を求めていたのかもしれない。
「……私、怖いのかもしれません」
「当然だ」
「あなたは?」
「俺は、慣れている」
彼の声には、どこか哀しみがあった。
戦で失った過去を、私は思い出した。彼の「慣れ」は、痛みの積み重ねの上にあるもの。
それがどんなに重いか、少しだけ理解できた気がした。
「……もし、誰かがここを見つけたら、どうします?」
「必要なら追い払う」
「殺すんですか?」
その言葉が、自分の口から出た瞬間、空気が凍った。
ルシアンはしばらく無言だった。やがて、深く息を吐いた。
「殺さずに済むなら、それが一番だ」
それだけを言って、暖炉の前に座る。
私はその背中を見つめながら、胸の奥が締めつけられるのを感じた。
「……ルシアンさん」
「なんだ」
「もし、あなたが誰かを傷つけてでも私を守ると言ったら……私は、逃げます」
ルシアンが振り向く。その灰色の瞳が静かに揺れた。
「なぜだ」
「あなたが自分を責める姿を、もう見たくないから」
沈黙が落ちた。暖炉の火の音が、やけに大きく響く。
彼は何も言わずに私を見つめていたが、やがて小さく頷いた。
「……約束しよう。お前を守るときは、自分も壊さない」
その言葉が、あまりに優しくて、涙がこぼれそうになった。
私は慌てて笑って誤魔化す。
「それなら、守られます」
「そうか」
ルシアンの口元がかすかに動いた。笑ったように見えた。
外では雪が再び降り始め、静かな音を立てて地面を覆っていく。
◇
夜になり、森は深い闇に沈んだ。
風の音も、鳥の声もなく、ただ雪だけがしんしんと降り続けている。
暖炉の前でルシアンが木を削っていた。小さな音が一定のリズムで響き、私の心を落ち着かせていく。
「何を作っているんですか?」
「箱だ」
「箱?」
「ああ。食料を入れておく」
「……もしかして、私のために?」
「自分の分もある」
「それでも、嬉しいです」
彼は手を止めずに言った。
「お前は、変わった」
「そうでしょうか」
「最初にここへ来たときは、まるで凍った花のようだった」
「凍った花?」
「ああ。触れたら崩れそうで、でも冷たく光っていた」
胸が熱くなる。彼の言葉はどこか詩のようで、優しさが滲んでいた。
「今は?」
「今は……」
彼が木片を置き、こちらを見る。
火の明かりが彼の瞳に映り、影が頬をなぞる。
「今は、生きている花だ」
その一言で、何も言えなくなった。
心臓が音を立てて跳ね、喉が熱を持つ。
言葉よりも確かな何かが、胸の奥で静かに広がっていく。
「……ありがとう、ございます」
そう言うのが精一杯だった。
ルシアンは何も言わず、ただ木を削り続けた。
けれど、その横顔は確かに柔らかく、火の明かりに包まれていた。
外では雪が積もり続けている。
それでも、小屋の中には確かな温もりがあった。
ふたりでいることが、こんなにも自然で、静かで、幸せなことだと知った夜だった。
◇
夜が明けるころ、風がやみ、雪は音もなく止んでいた。森の上には薄い雲が広がり、東の空だけが淡い金色に染まっている。小屋の外では、樹々の枝からぽたぽたと雫が落ち、そのたびに静かな音が響いた。
私はいつもより早く目を覚ました。まだ寝台の上にはルシアンの外套が掛けられていて、その重みが心地よい。彼はすでに起きているようで、外から薪を割る音が聞こえていた。
静かな朝だった。
けれど、その静けさの奥に、言葉にならない予感のようなものがあった。
私は起き上がり、暖炉に残った火を整える。灰の下から小さな炎が顔を出し、部屋に再び光が戻る。木の香りと焦げた煙の匂いが混ざり合い、胸の奥をくすぐった。
扉の向こうから、ルシアンの低い声がした。
「起きたか」
「はい。雪、止んだんですね」
「ああ。今日は森が静かだ」
扉を開けると、彼が振り返った。
朝の光が彼の髪に差し、黒の中に金色が差し込んでいた。腕には束ねた薪、肩には霜が少し残っている。
彼の姿を見た瞬間、胸の奥が温かくなる。
こんなに静かな幸福があるなんて、少し前の自分には想像もできなかった。
「ルシアンさん」
「なんだ」
「……こうして朝を迎えられるのが、うれしいです」
私の言葉に、彼は一瞬だけ動きを止めた。
そして、短く頷いた。
「それは、いいことだ」
彼は薪を置き、小屋の隅にある木箱の蓋を開けた。
昨日削っていた箱だ。滑らかな木目が光を受けて美しく、丁寧に仕上げられている。
「完成したんですね」
「ああ。だが少し小さかった。食料は半分しか入らん」
「ふふ、それでも立派です。……ありがとうございます」
「礼を言うほどのことじゃない」
彼はいつものように言葉を短く切る。けれど、その声音にはどこか柔らかさがあった。
私は棚から布袋を取り出し、箱の中に月草の香り袋をそっと忍ばせた。
「これ、入れておいてもいいですか?」
「それは……お前が作ったのか」
「はい。眠りやすくなる香りだって、あなたが教えてくれたから」
ルシアンは無言で袋を見つめ、やがて小さく息を吐いた。
「勝手にしろ」
そう言いながらも、彼は箱の中を丁寧に整え、香り袋を隅に置いた。
その仕草が、どこまでも不器用で優しい。
私は胸の奥で、何かがじんわりと広がるのを感じた。
◇
昼になると、森の奥から微かな鳥の声が聞こえてきた。
雪解けの水が小さな流れを作り、地面の下で春の準備を始めているのだろう。
私は小屋の前に出て、乾いた木の枝を拾い集めていた。手袋越しに冷たい感触が伝わる。
ふと背後で足音がして、ルシアンが近づいてきた。
「一人で動くなと言っただろう」
「森の入口までです。危険なことはしていません」
「約束は守れ」
「守っています。ただ……」
「ただ?」
「少し、歩いてみたかったんです。ここに来てから、森の景色が変わるたびに、なんだか新しい世界に触れている気がして」
ルシアンは無言のまま私を見つめていたが、やがて目を伏せた。
「お前は本当に、ここが好きなんだな」
「ええ。あなたがいるから」
その瞬間、彼の肩がわずかに動いた。
言葉を探しているように、目線を宙に彷徨わせ、やがて小さく息をつく。
「……俺は、特別なことなどしていない」
「特別なことをしなくても、あなたは特別です」
その言葉が自然と口をついて出た。
言ってから、頬が熱くなる。けれど、嘘ではなかった。
ルシアンはしばらく黙ったまま、森の奥を見ていた。
雪の反射光が彼の瞳に入り、灰色の中で金がきらめく。
「……お前がそう思うなら、それでいい」
ようやくそう言って、彼は視線を戻した。
それだけの言葉なのに、胸が高鳴る。
彼の声は、氷を溶かす春風のように優しかった。
「さあ、戻れ。冷える」
「はい」
小屋へ戻る途中、彼の後ろ姿を見つめた。
広い背中。歩幅を少しだけ狭めてくれているのが分かる。
その小さな気遣いが、言葉よりもずっと強く、私の心に届いていた。
◇
夜。再び火を灯し、二人で温かなスープを飲んだ。
ルシアンが手にした木の器は、私の作った布で包まれている。湯気が立ち、香草の匂いが柔らかく広がった。
彼がゆっくりと口をつける。その仕草が妙に穏やかで、見ているだけで胸が安らぐ。
「……この味、悪くない」
「また“悪くない”ですか」
「誉め言葉だ」
「ええ、知っています」
二人の間に小さな笑いがこぼれた。
それはまるで、夜の静寂に溶ける火の粉のように儚く、けれど確かな温度を持っていた。
しばらくして、彼が呟くように言った。
「エリシア」
「はい」
「お前は……もし明日、またあの足跡の主が来たとしても、恐れずにいられるか」
私は少し考え、そして頷いた。
「あなたがいるなら、大丈夫です」
彼の瞳が揺れた。
それは雪明かりのように淡く、しかしどこまでも深い光だった。
「……なら、俺も負けないようにしないとな」
その言葉に、思わず微笑む。
「負ける?」
「お前の強さに」
静かな夜の中で、火の灯がゆっくりと揺れた。
その炎が、彼の顔を照らし、影を柔らかく包み込む。
私はその光景を胸に焼きつけるように見つめながら、そっと囁いた。
「……あなたがいる限り、私は怖くありません」
ルシアンが目を伏せ、わずかに唇を動かした。
「……俺もだ」
その声が、火の揺らめきの中に溶けていった。
◇
翌朝、雪は完全に溶けていた。森の中を流れる小川のせせらぎが、久しぶりに耳に届く。夜のあいだに氷が割れ、透明な水が流れ始めたのだろう。木々の根元にはまだ白が残っていたが、そこから新しい芽が顔を出していた。
私は扉を開け、冷たい空気を胸いっぱいに吸い込む。冷たさの中に、どこか柔らかな匂いが混じっていた。冬の終わり、そして春の予感。
背後から、足音が近づく。ルシアンだ。いつものように無言で外に出てきて、隣に立つ。彼の肩にも朝の光が当たり、淡い金の縁が浮かんでいた。
「雪、全部消えましたね」
「ああ。森の息が戻った」
「生きているみたいに、音がします」
「実際、生きている。人間が何をしなくても、森は勝手に季節を変える」
その言葉に、私は微笑む。
彼の隣に立っていると、世界が穏やかに回り始める気がする。
以前の私は、何かを取り戻すために生きていた。失ったものの痛みを抱え、それを埋めるために動いていた。
けれど今は違う。ただ、この時間があればいいと思えるようになっていた。
小屋に戻り、朝食の準備をする。パンを火で炙り、スープを温め、果実の蜜を少し垂らす。湯気が立ち上ると、ルシアンが椅子に腰を下ろした。
彼は食事の前に短く手を合わせた。その動作があまりに自然で、思わず尋ねる。
「……祈っているんですか?」
「ああ。戦場では、毎日やっていた。誰かのために、というより、せめて自分が生きて戻れるように」
「それでも、あなたは今ここにいる」
「運がよかっただけだ」
「運じゃありません。……生きようとしたから、生きられたんです」
ルシアンがスープを口にしながら、わずかに笑う。
「お前は、本当に強くなったな」
「あなたのそばにいると、強くなれる気がするんです」
「それは錯覚だ」
「いい錯覚です。消えないでほしい」
私の言葉に、彼は何も言わず、ただ静かに視線を逸らした。
その横顔に、微かな苦笑が浮かんでいた。
◇
昼過ぎ、外で薪を割るルシアンの背を見ながら、私は洗濯物を干していた。風が少し強く、布がはためくたびに陽光が透ける。
森の奥からは遠く鳥の鳴き声が聞こえ、雪解けの水が地面を伝って流れていく音がした。
私はその音を聞きながら、ふと自分の名前を呼ばれるのを待っていた。
「エリシア」
そう呼ぶ彼の声が、今では私の一日の始まりになっている。
けれど、その声は今日は聞こえなかった。代わりに、ルシアンの斧が止まる音がした。彼が森の方を見つめている。
胸がざわめいた。私は布を干す手を止め、彼の隣に歩み寄った。
「どうしました?」
「……誰かがいた」
「え?」
「森の奥、三つ目の岩の向こう。煙が見えた」
息が詰まる。
足跡だけではなかった。実際に、人が近くにいる。
「村の人……ではないんですか?」
「わからん。だが、動きが静かすぎる。狩人なら焚き火をもっと高くする」
ルシアンの声が鋭くなる。
私は思わず裾を握りしめた。手の中が汗ばんで冷たくなる。
「……怖いです」
「中にいろ」
そう言って彼は短剣を腰に差し、外套を羽織る。
私は慌てて彼の腕を掴んだ。
「待ってください。ひとりで行く気ですか?」
「俺以外に誰が行く」
「でも、危険かもしれない」
「お前を守るほうが危険だ」
「そんなの、嫌です!」
叫んでしまった。
ルシアンが驚いたように振り返る。
その瞬間、胸の奥にあるものが堰を切ったようにあふれ出した。
「あなたが傷つくのは、もう見たくありません。あなたがいない世界なんて、嫌です」
沈黙。
雪解けの水が小屋の軒先を滴り落ちる音だけが聞こえた。
ルシアンは目を細め、しばらく私を見つめていたが、やがて深く息を吐いた。
「……なら、一緒に来るか」
「え……?」
「離れるな。俺の背後を歩け」
その言葉に、胸が高鳴った。
怖いはずなのに、不思議と心は落ち着いていた。
ルシアンと一緒なら、どんな闇でも越えられる気がした。
◇
森の奥へと進む。雪解けの地面がぬかるみ、足音が柔らかく吸い込まれていく。
木々の合間からは光がこぼれ、枝の先に小鳥が止まる。けれど、その美しさとは裏腹に、空気の底には緊張が満ちていた。
ルシアンは迷いのない足取りで進み、時折立ち止まっては耳を澄ませる。
「煙はこの先だ」
「誰か、本当にいるんですね……」
「ああ」
彼の声が低く落ちる。
やがて、森の切れ間が現れた。そこには古びた荷車がひとつ、傾いたまま放置されていた。
その脇に、小さな焚き火。けれど、火はもう消えかけている。
ルシアンは慎重に近づき、周囲を見回した。
「人の気配は……ない?」
「いや。ここにいた」
彼は地面の跡を指差した。雪が踏み荒らされ、二人分の足跡が残っている。
その先、森の奥へと続いていた。
「二人……」
「おそらく旅人か、あるいは——」
「——私を探している人?」
言葉が震える。
ルシアンがこちらを見た。その瞳の奥に、一瞬だけ光が走る。
「可能性はある」
胸の奥が冷たくなる。
王都の影。あの場所での裏切りは、もう終わったと思っていたのに。
私を“追う理由”がまだ誰かに残っているのだろうか。
「ルシアンさん……もし、私のせいであなたが危険な目にあったら……」
「その時は、お前の手を離さなければいいだけだ」
「え?」
「逃げるときは一緒に逃げる。それでいい」
彼の言葉が、胸に深く染みた。
私は小さく頷く。涙がにじむのを必死でこらえた。
森の奥で、風が吹く。
落ち葉が舞い、木々の間から光が差す。
その光の中で、私はルシアンの背を見つめていた。
——この人となら、どこへでも行ける。
そんな確信が、静かに心に宿っていた。
小屋の中は静かだった。暖炉の火が一定のリズムで燃え、時折ぱちんと音を立てる。その音が妙に心地よくて、私は椅子に座りながら針仕事をしていた。
ルシアンが作ってくれた布の切れ端を縫い合わせ、小さな袋を作っている。中に乾いた月草を詰めて、香り袋にするつもりだった。彼が眠るとき、少しでも安らげるように——そんなことを考えている自分に、気づけば微笑んでしまう。
扉の向こうで、雪を踏む音がした。外に出ていたルシアンが戻ってきたらしい。
扉が開くと、冷たい風と一緒に森の匂いが流れ込んでくる。彼の肩には雪の粉が積もっていて、髪の端が濡れて光っていた。
「おかえりなさい」
「ああ。少し森を見回ってきた」
「何かあったんですか?」
「足跡があった。人のものだ」
その言葉に、胸がきゅっと縮む。
「人……?」
「村の者かもしれん。けれど、見覚えのない靴跡だった」
ルシアンの声が低く、警戒を帯びていた。
私は無意識に立ち上がり、彼の外套の袖を掴んだ。
「危険なんですか?」
「まだわからん。しばらくは外に出るな」
「でも、もし——」
「大丈夫だ。ここはすぐには見つからない」
ルシアンがそう言って私の手を包む。その手は冷たいはずなのに、驚くほど温かく感じられた。
外の世界に再び“誰か”がいるかもしれない——その事実が、恐ろしいようで、どこか懐かしくもあった。
王都を離れて以来、他人という存在を避けてきた。それなのに、心のどこかで、人の声を求めていたのかもしれない。
「……私、怖いのかもしれません」
「当然だ」
「あなたは?」
「俺は、慣れている」
彼の声には、どこか哀しみがあった。
戦で失った過去を、私は思い出した。彼の「慣れ」は、痛みの積み重ねの上にあるもの。
それがどんなに重いか、少しだけ理解できた気がした。
「……もし、誰かがここを見つけたら、どうします?」
「必要なら追い払う」
「殺すんですか?」
その言葉が、自分の口から出た瞬間、空気が凍った。
ルシアンはしばらく無言だった。やがて、深く息を吐いた。
「殺さずに済むなら、それが一番だ」
それだけを言って、暖炉の前に座る。
私はその背中を見つめながら、胸の奥が締めつけられるのを感じた。
「……ルシアンさん」
「なんだ」
「もし、あなたが誰かを傷つけてでも私を守ると言ったら……私は、逃げます」
ルシアンが振り向く。その灰色の瞳が静かに揺れた。
「なぜだ」
「あなたが自分を責める姿を、もう見たくないから」
沈黙が落ちた。暖炉の火の音が、やけに大きく響く。
彼は何も言わずに私を見つめていたが、やがて小さく頷いた。
「……約束しよう。お前を守るときは、自分も壊さない」
その言葉が、あまりに優しくて、涙がこぼれそうになった。
私は慌てて笑って誤魔化す。
「それなら、守られます」
「そうか」
ルシアンの口元がかすかに動いた。笑ったように見えた。
外では雪が再び降り始め、静かな音を立てて地面を覆っていく。
◇
夜になり、森は深い闇に沈んだ。
風の音も、鳥の声もなく、ただ雪だけがしんしんと降り続けている。
暖炉の前でルシアンが木を削っていた。小さな音が一定のリズムで響き、私の心を落ち着かせていく。
「何を作っているんですか?」
「箱だ」
「箱?」
「ああ。食料を入れておく」
「……もしかして、私のために?」
「自分の分もある」
「それでも、嬉しいです」
彼は手を止めずに言った。
「お前は、変わった」
「そうでしょうか」
「最初にここへ来たときは、まるで凍った花のようだった」
「凍った花?」
「ああ。触れたら崩れそうで、でも冷たく光っていた」
胸が熱くなる。彼の言葉はどこか詩のようで、優しさが滲んでいた。
「今は?」
「今は……」
彼が木片を置き、こちらを見る。
火の明かりが彼の瞳に映り、影が頬をなぞる。
「今は、生きている花だ」
その一言で、何も言えなくなった。
心臓が音を立てて跳ね、喉が熱を持つ。
言葉よりも確かな何かが、胸の奥で静かに広がっていく。
「……ありがとう、ございます」
そう言うのが精一杯だった。
ルシアンは何も言わず、ただ木を削り続けた。
けれど、その横顔は確かに柔らかく、火の明かりに包まれていた。
外では雪が積もり続けている。
それでも、小屋の中には確かな温もりがあった。
ふたりでいることが、こんなにも自然で、静かで、幸せなことだと知った夜だった。
◇
夜が明けるころ、風がやみ、雪は音もなく止んでいた。森の上には薄い雲が広がり、東の空だけが淡い金色に染まっている。小屋の外では、樹々の枝からぽたぽたと雫が落ち、そのたびに静かな音が響いた。
私はいつもより早く目を覚ました。まだ寝台の上にはルシアンの外套が掛けられていて、その重みが心地よい。彼はすでに起きているようで、外から薪を割る音が聞こえていた。
静かな朝だった。
けれど、その静けさの奥に、言葉にならない予感のようなものがあった。
私は起き上がり、暖炉に残った火を整える。灰の下から小さな炎が顔を出し、部屋に再び光が戻る。木の香りと焦げた煙の匂いが混ざり合い、胸の奥をくすぐった。
扉の向こうから、ルシアンの低い声がした。
「起きたか」
「はい。雪、止んだんですね」
「ああ。今日は森が静かだ」
扉を開けると、彼が振り返った。
朝の光が彼の髪に差し、黒の中に金色が差し込んでいた。腕には束ねた薪、肩には霜が少し残っている。
彼の姿を見た瞬間、胸の奥が温かくなる。
こんなに静かな幸福があるなんて、少し前の自分には想像もできなかった。
「ルシアンさん」
「なんだ」
「……こうして朝を迎えられるのが、うれしいです」
私の言葉に、彼は一瞬だけ動きを止めた。
そして、短く頷いた。
「それは、いいことだ」
彼は薪を置き、小屋の隅にある木箱の蓋を開けた。
昨日削っていた箱だ。滑らかな木目が光を受けて美しく、丁寧に仕上げられている。
「完成したんですね」
「ああ。だが少し小さかった。食料は半分しか入らん」
「ふふ、それでも立派です。……ありがとうございます」
「礼を言うほどのことじゃない」
彼はいつものように言葉を短く切る。けれど、その声音にはどこか柔らかさがあった。
私は棚から布袋を取り出し、箱の中に月草の香り袋をそっと忍ばせた。
「これ、入れておいてもいいですか?」
「それは……お前が作ったのか」
「はい。眠りやすくなる香りだって、あなたが教えてくれたから」
ルシアンは無言で袋を見つめ、やがて小さく息を吐いた。
「勝手にしろ」
そう言いながらも、彼は箱の中を丁寧に整え、香り袋を隅に置いた。
その仕草が、どこまでも不器用で優しい。
私は胸の奥で、何かがじんわりと広がるのを感じた。
◇
昼になると、森の奥から微かな鳥の声が聞こえてきた。
雪解けの水が小さな流れを作り、地面の下で春の準備を始めているのだろう。
私は小屋の前に出て、乾いた木の枝を拾い集めていた。手袋越しに冷たい感触が伝わる。
ふと背後で足音がして、ルシアンが近づいてきた。
「一人で動くなと言っただろう」
「森の入口までです。危険なことはしていません」
「約束は守れ」
「守っています。ただ……」
「ただ?」
「少し、歩いてみたかったんです。ここに来てから、森の景色が変わるたびに、なんだか新しい世界に触れている気がして」
ルシアンは無言のまま私を見つめていたが、やがて目を伏せた。
「お前は本当に、ここが好きなんだな」
「ええ。あなたがいるから」
その瞬間、彼の肩がわずかに動いた。
言葉を探しているように、目線を宙に彷徨わせ、やがて小さく息をつく。
「……俺は、特別なことなどしていない」
「特別なことをしなくても、あなたは特別です」
その言葉が自然と口をついて出た。
言ってから、頬が熱くなる。けれど、嘘ではなかった。
ルシアンはしばらく黙ったまま、森の奥を見ていた。
雪の反射光が彼の瞳に入り、灰色の中で金がきらめく。
「……お前がそう思うなら、それでいい」
ようやくそう言って、彼は視線を戻した。
それだけの言葉なのに、胸が高鳴る。
彼の声は、氷を溶かす春風のように優しかった。
「さあ、戻れ。冷える」
「はい」
小屋へ戻る途中、彼の後ろ姿を見つめた。
広い背中。歩幅を少しだけ狭めてくれているのが分かる。
その小さな気遣いが、言葉よりもずっと強く、私の心に届いていた。
◇
夜。再び火を灯し、二人で温かなスープを飲んだ。
ルシアンが手にした木の器は、私の作った布で包まれている。湯気が立ち、香草の匂いが柔らかく広がった。
彼がゆっくりと口をつける。その仕草が妙に穏やかで、見ているだけで胸が安らぐ。
「……この味、悪くない」
「また“悪くない”ですか」
「誉め言葉だ」
「ええ、知っています」
二人の間に小さな笑いがこぼれた。
それはまるで、夜の静寂に溶ける火の粉のように儚く、けれど確かな温度を持っていた。
しばらくして、彼が呟くように言った。
「エリシア」
「はい」
「お前は……もし明日、またあの足跡の主が来たとしても、恐れずにいられるか」
私は少し考え、そして頷いた。
「あなたがいるなら、大丈夫です」
彼の瞳が揺れた。
それは雪明かりのように淡く、しかしどこまでも深い光だった。
「……なら、俺も負けないようにしないとな」
その言葉に、思わず微笑む。
「負ける?」
「お前の強さに」
静かな夜の中で、火の灯がゆっくりと揺れた。
その炎が、彼の顔を照らし、影を柔らかく包み込む。
私はその光景を胸に焼きつけるように見つめながら、そっと囁いた。
「……あなたがいる限り、私は怖くありません」
ルシアンが目を伏せ、わずかに唇を動かした。
「……俺もだ」
その声が、火の揺らめきの中に溶けていった。
◇
翌朝、雪は完全に溶けていた。森の中を流れる小川のせせらぎが、久しぶりに耳に届く。夜のあいだに氷が割れ、透明な水が流れ始めたのだろう。木々の根元にはまだ白が残っていたが、そこから新しい芽が顔を出していた。
私は扉を開け、冷たい空気を胸いっぱいに吸い込む。冷たさの中に、どこか柔らかな匂いが混じっていた。冬の終わり、そして春の予感。
背後から、足音が近づく。ルシアンだ。いつものように無言で外に出てきて、隣に立つ。彼の肩にも朝の光が当たり、淡い金の縁が浮かんでいた。
「雪、全部消えましたね」
「ああ。森の息が戻った」
「生きているみたいに、音がします」
「実際、生きている。人間が何をしなくても、森は勝手に季節を変える」
その言葉に、私は微笑む。
彼の隣に立っていると、世界が穏やかに回り始める気がする。
以前の私は、何かを取り戻すために生きていた。失ったものの痛みを抱え、それを埋めるために動いていた。
けれど今は違う。ただ、この時間があればいいと思えるようになっていた。
小屋に戻り、朝食の準備をする。パンを火で炙り、スープを温め、果実の蜜を少し垂らす。湯気が立ち上ると、ルシアンが椅子に腰を下ろした。
彼は食事の前に短く手を合わせた。その動作があまりに自然で、思わず尋ねる。
「……祈っているんですか?」
「ああ。戦場では、毎日やっていた。誰かのために、というより、せめて自分が生きて戻れるように」
「それでも、あなたは今ここにいる」
「運がよかっただけだ」
「運じゃありません。……生きようとしたから、生きられたんです」
ルシアンがスープを口にしながら、わずかに笑う。
「お前は、本当に強くなったな」
「あなたのそばにいると、強くなれる気がするんです」
「それは錯覚だ」
「いい錯覚です。消えないでほしい」
私の言葉に、彼は何も言わず、ただ静かに視線を逸らした。
その横顔に、微かな苦笑が浮かんでいた。
◇
昼過ぎ、外で薪を割るルシアンの背を見ながら、私は洗濯物を干していた。風が少し強く、布がはためくたびに陽光が透ける。
森の奥からは遠く鳥の鳴き声が聞こえ、雪解けの水が地面を伝って流れていく音がした。
私はその音を聞きながら、ふと自分の名前を呼ばれるのを待っていた。
「エリシア」
そう呼ぶ彼の声が、今では私の一日の始まりになっている。
けれど、その声は今日は聞こえなかった。代わりに、ルシアンの斧が止まる音がした。彼が森の方を見つめている。
胸がざわめいた。私は布を干す手を止め、彼の隣に歩み寄った。
「どうしました?」
「……誰かがいた」
「え?」
「森の奥、三つ目の岩の向こう。煙が見えた」
息が詰まる。
足跡だけではなかった。実際に、人が近くにいる。
「村の人……ではないんですか?」
「わからん。だが、動きが静かすぎる。狩人なら焚き火をもっと高くする」
ルシアンの声が鋭くなる。
私は思わず裾を握りしめた。手の中が汗ばんで冷たくなる。
「……怖いです」
「中にいろ」
そう言って彼は短剣を腰に差し、外套を羽織る。
私は慌てて彼の腕を掴んだ。
「待ってください。ひとりで行く気ですか?」
「俺以外に誰が行く」
「でも、危険かもしれない」
「お前を守るほうが危険だ」
「そんなの、嫌です!」
叫んでしまった。
ルシアンが驚いたように振り返る。
その瞬間、胸の奥にあるものが堰を切ったようにあふれ出した。
「あなたが傷つくのは、もう見たくありません。あなたがいない世界なんて、嫌です」
沈黙。
雪解けの水が小屋の軒先を滴り落ちる音だけが聞こえた。
ルシアンは目を細め、しばらく私を見つめていたが、やがて深く息を吐いた。
「……なら、一緒に来るか」
「え……?」
「離れるな。俺の背後を歩け」
その言葉に、胸が高鳴った。
怖いはずなのに、不思議と心は落ち着いていた。
ルシアンと一緒なら、どんな闇でも越えられる気がした。
◇
森の奥へと進む。雪解けの地面がぬかるみ、足音が柔らかく吸い込まれていく。
木々の合間からは光がこぼれ、枝の先に小鳥が止まる。けれど、その美しさとは裏腹に、空気の底には緊張が満ちていた。
ルシアンは迷いのない足取りで進み、時折立ち止まっては耳を澄ませる。
「煙はこの先だ」
「誰か、本当にいるんですね……」
「ああ」
彼の声が低く落ちる。
やがて、森の切れ間が現れた。そこには古びた荷車がひとつ、傾いたまま放置されていた。
その脇に、小さな焚き火。けれど、火はもう消えかけている。
ルシアンは慎重に近づき、周囲を見回した。
「人の気配は……ない?」
「いや。ここにいた」
彼は地面の跡を指差した。雪が踏み荒らされ、二人分の足跡が残っている。
その先、森の奥へと続いていた。
「二人……」
「おそらく旅人か、あるいは——」
「——私を探している人?」
言葉が震える。
ルシアンがこちらを見た。その瞳の奥に、一瞬だけ光が走る。
「可能性はある」
胸の奥が冷たくなる。
王都の影。あの場所での裏切りは、もう終わったと思っていたのに。
私を“追う理由”がまだ誰かに残っているのだろうか。
「ルシアンさん……もし、私のせいであなたが危険な目にあったら……」
「その時は、お前の手を離さなければいいだけだ」
「え?」
「逃げるときは一緒に逃げる。それでいい」
彼の言葉が、胸に深く染みた。
私は小さく頷く。涙がにじむのを必死でこらえた。
森の奥で、風が吹く。
落ち葉が舞い、木々の間から光が差す。
その光の中で、私はルシアンの背を見つめていた。
——この人となら、どこへでも行ける。
そんな確信が、静かに心に宿っていた。
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