星空に咲く花畑

セイカ

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3話 初めての悲しみ 前編

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ああ、今度はどんな夢だ?

いつもの懐かしく虚しい夢だ。夢を見なかった日などないが、この夢はしっかりと見えてくる。


あの男の子だ…少し大きいな。


いつも出てくる男の子が少し大きくなった姿で現れた。「小学生くらいかな」と思う。
そして小学校の教室の席らしきところに座っている。そこに数人の男子が寄ってきた。友達かなと思ったが、その予想は大ハズレ。まるで挨拶代わりのように男の子の頭を叩いてきた。男の子は痛そうな顔をするが、男子たちはにやにやしながら他にも様々な暴力を振るい暴言を吐いた。

男の子の頬に近距離で輪ゴムを飛ばし、「お前ほんと見た目変だよな?」「カッコつけてるわけ?」と言いながら男の子の髪を引っ張ってきた。男の子は苦痛の表情を浮かべる。

男の子は他の子達と違い、髪をオールバックにしている。それをからかわれているようだ。

男の子に触れた男子たちは「うわっ!きたね!ーーー菌だー!」と名前の後ろに菌とつけ、「きたね」など「こっち近づけるなよ!」などと言い続ける。

男の子は今にも泣きそうなのを我慢している。その様子を見て、男子だけでなく周りにいたクラスメイト達はクスクス笑いながら「えっ、何泣いてんの」「気持ち悪!」「情けな!」などと大声で言うものもいれば、コソコソと話す子達もいる。


ああ…いじめか…

なんで人間はそういうことができるのだろうか?

姿形、肉体も心も同じなのに…なぜ蔑む…
なぜ厭う…なぜ苦しめる…

今自分の中ではそんな疑問が浮かんでいる。

その後男の子は担任の先生に相談していたが、先生は助けてくれなかった…

なんで…?どうして助けない?
酷すぎるよ…

そんな思いが胸を締め付けた。












朝を知らせる鳥の鳴き声が聞こえる。
閉じていた瞼をゆっくり上げると、窓から朝の日差しが差し込んでいる。
ベッドから体を起こし窓のカーテンを開ける。

不思議ととても清々しい気持ちだ。
昨日の夜での出来事のおかげだろうか?
思い返してみてもすごく…いや、死ぬほど恥ずかしい出来事だった。
だが、初めて本当の涙を流した気がする。

仕事の準備するか…

現在6時57分。まだ早い時間だが、準備をして、歩いて駅近のコンビニで昼飯を買いに行き、電車に乗って、会社の最寄り駅に着くのは少し時間がかかる。
なので、先に朝飯を食おうと食パンを焼き、コーヒーを入れる。
朝飯を食ったあとは、時間までテレビを見てニュースを見る。
いい時間になるとスーツに着替え、持ち物を確かめて、家を出る。
家を出ると冬の冷たい風が全身に直撃する。

「寒いな…まあ、冬だし当たり前か。」

そんなことを口にしながらマンションを出て、駅へ歩いていく。
しばらく歩いているとコンビニに着き、今日の昼飯を買うために入る。


「今日はパンを5つぐらいでいいか。」

俺は大食いなので本当はもっと食べるが、時間の関係で5つにしておく。パンと牛乳をカゴに入れ、レジで会計をしてもらう。
会計が終わり、コンビニを出てすぐに駅へ入った。
電車はあと10分くらいで来る。

少し早く着いたか?

などと思いながら携帯を見る。メッセージアプリを確認すると、仕事のメール、友達からのメールが届いていたが、彼女からは何もなかった。
自分が最後に送った、「最近調子どう?」というメッセージのあと、返信が無い。

「やっぱりないか…もう飽きられちゃったかな…」

と心の中でそう呟いた。
でも何か思うところがあるなら言って欲しい。
それか自分から別れ話をしようか。色々と考えていた。

「考えても仕方ねえよな」

少し考えたあと、もう自分からメッセージを送ろうと思い、メールを送った。
メールの内容は

「久しぶり、最近連絡ないけど、もし俺に飽きちゃったら、もう別れる?」

とド直球な別れ話の文を送った。その後すぐ丁度に電車が来たため携帯をしまった。
ド直球すぎたかなと電車の中でメッセージの内容について考えていた。


会社の最寄り駅に着き、電車をおり、駅から会社まですぐなため、会社に着いたのが、8時12分だ。まだ仕事が始まるには早い。

資料の作成でもするか…

そう思い、次の仕事に必要な資料を作ろうとした時に、携帯が鳴る。
見てみると、彼女の美波(みなみ)だった。
内容は、勿論先程のメールの返信。
見てみると、

「え?!嫌だよ!どうして?!私護也と一緒じゃないと嫌だよ!」

と書かれていた。
美波の返信には今度会って話すことを約束した。
正直、分からなくなった。どうしたいんだという気持ちが強かった。ホッとした気持ちも特にはなかった。
仕事の時間が始まったため、複雑な気持ち、モヤモヤした気持ちを持ったまま、仕事に取りかかる。
いつも通り仕事をして、昼飯を食って、また仕事をして、定時に帰る。
いつも通りだ。
会社を出て、最寄りの駅まで歩き、電車に乗り、自分のマンションの最寄り駅で降りる。
駅から出てきてすぐにコンビニがあるため、そこで夕食を買おうと思い、コンビニに入る。
するとアイスのコーナーに昨日の男の子、辰支くんがいた。
彼を見た瞬間朝からあったモヤモヤがなくなった。
俺はすぐにアイスコーナーへ行き、辰支くんに

「こんばんは」

と挨拶をして話しかける。すると辰支くんが俺の方を見て笑顔で

「ああ!星野さん!こんばんは!お仕事帰りですか?お疲れ様です。何か買いに来られたのですか?」

と返事をしてくれた。あの夜は顔が見えててもやっぱり暗かったのでしっかりと見ることは出来なかった。とても綺麗な顔をしている上に星が輝いたようなあるいは花が咲いたような笑顔が素敵な印象を与える。
その笑顔を見ているとすごく癒されていく。
そう考えていると辰支くんが「あの?」と心配そうな顔でこちらを見ていた。
いつの間にか彼の笑顔に見とれて喋っていなかったらしい。

恥ずかしい…

急いで俺は、

「あ、えっと、俺は夕食を買いに来たんだよ。いつもこういう店で買うか外食なんだ。あはは。」

と質問に答えたが、それを聞いた辰支くんの顔が少し暗い顔をしていた。

(え、どうしたんだろ?!俺変なこと言ったかな?)

と思い、急いで何か言おうと思い、口を開けたが、それより先に辰支くんが話し始めた。

「大丈夫ですか?それでは健康に悪いでしょう?」

と言った。どうやら俺の健康の心配をしてくれていたようだ。俺は料理ができないことだけを言おうとしたが、

「仕方ないよ。俺料理なんて出来ないし、彼女も料理なんてしないからな。」

とサラッと彼女のことも話してしまった。
多分朝から彼女のことを考えていたからだ。
俺は心の中で「しまった…」と思っていると辰支くんが、

「よろしければ、近くの公園でお話しませんか?僕はお話したいと思っているのですが…
星野さんがよろしければ…」

と誘ってくれた。勿論俺は彼と話したい。けど、

「アイスが溶けちゃったらダメでしょ…」

とアイスの心配をしてしまう。すると辰支くんは少し笑いながら、

「お優しいですね。大丈夫です。今日はお目当てのアイスはありませんから。」

と言った。それならと俺は夕食だけを買った。辰支くんもお菓子と飲み物を買っていた。

コンビニを出て、駅と自分のマンションとはまた別の方向にすぐ公園がある。そこの公園のベンチに座って話すことにした。

「昨日は情けない姿を見せてしまって、ごめんよ。」

俺は昨日の夜の出来事で泣いたことを謝った。すると彼は、優しく微笑み。

「いいえ、少しでも楽になったようでよかったです。でも、謝る必要は全くありませんよ。時と場合によるのかもしれませんが泣くことは基本必要で大事なものだと僕は思いますよ…」

と優しい口調で話した。自分にはその言葉は本当に暖かく心地よいものだったが、何故か彼は「すみません」と謝ってきた。
俺はどうしたのかと聞いたら、

「また偉そうなことを言ってしまいました。ダメですね…すぐお節介なことを言ってしまいます…」

と答えた。確かに言い方や人によっては偉そうなどと思われるかもしれないが、何故だろう…この子の言葉は基本誰であろうと偉そうとは思わないだろうと思ってしまう。

「そんなことないよ。少なくとも俺は嬉しいよ。言い方がキツかったりしたら嫌だろうけど、君のはそんなんじゃないからね。」

俺は自分の気持ちをそのまま口にした。
辰支くんは、ニコッと笑いながら「ありがとうございます」とお礼を言ってくれた。

その後、しばらく世間話をして、今の俺の環境の話をしていたら、辰支くんが

「また何か悩まれてるのでしたら、遠慮せず言ってください。勿論話したくなければ、大丈夫ですよ。」

と相変わらず優しい口調で言った。
俺は友達以外にこれを話すことはないと思っていたが、何故か彼にはなんでも話したくなる。俺はゆっくりと話し出す。

大学からの付き合いで、就職を機に落ち着きたかったこと、最初は上手くいっていたが、何故か最近はあまり会っておらず、上手くいっていないということを話すと、辰支くんは少し考えたあと話し始める。

「まず、僕が思ったのは、貴方自身彼女をどう思っているのかということですね。まずそこを知らなければ次に進めないのではないかなと僕は思います。」

言われたことを考えてみた。彼女をどう思っているのかということ。
そう考えてみると、本気で好きとは感じない…
どうしてだろう…好き同士だから付き合ったはずなのに、何も感じない…
もしかして俺は最低なことをしているんじゃ…
と頭の中でいっぱい考えていると、辰支くんが

「すぐに答えはでないと思います。ゆっくり考えたら良いんです。」

と優しく言ってくれたが、今気づいたことを言えば、この優しさももう無くなるのかもしれない…そう考えていると、分かりやすかったのか、辰支くんが
「もしかして、気づきました?」

と言ってきた。気づかれてしまった以上、嘘は言えない。言えば、なんだか良くないというのがわかる。
俺はゆっくりと口を開く。

「実は今考えてみたんだけど、多分俺は初めから彼女のこと本気で好きではなかったんだと思う…友達くらいにしか思わなかったのかも…すごく最低なことをしてるね…」

一通り話終えると、辰支くんはしばらく黙っていた。
呆れられて失望してるのかなと思っていると、

「焦りすぎたのかもですね…」

と辰支くんが話し出す。

「え?」

俺がキョトンとしているが、彼は続けて話す。

「先程落ち着きたいと仰ってましたよね?僕が思うに、落ち着きたいという感情が強すぎて、偶然告白してくれた彼女を選んだんじゃないかなと思います。
それに、どんな事でも、いい意味でダメだと気づけるのは凄いことだと思います。
そういうのって気づかない人がほとんどですから…」

彼の変わらない優しい口調と笑顔を見た俺は、心底ホッとした。その次に彼は、

「しかし、そのまま続けるのはお互いにとって良くはないんじゃないかなと僕は思います。これからどうするかはあなた方が決めることだとも思います。」

と今度は指摘をして、感じたことを話す。
その言葉はまた言い方や人によっては不快な思いをさせるかもしれないが、この子の話はそれを全く感じない。不思議だ…

そう思いながらも自分がどうするべきなのか考える。
そして、次に会う日にきちんと話して自分の気持ちを正直に話そう。

何故だろう…すごくやる気と言うか、とにかくきちんとしようという気持ちが強くなった。





本当に不思議だ…この子と話しただけなのに…
不思議だけど、とても暖かく気持ちがいい…
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