34 / 42
最終話 その後の2人
しおりを挟む星空に花畑が咲いたあの奇跡の夜から2ヶ月が経った。
今日は実は、辰支くんとデートだ。
今までデートはしたことあるが、本気で好きな人とデートは初めてである。
カッコつけていくべきか悩んだが、下手にカッコつけて引かれたら最悪だ。
だから、普通がベストだと思い、いつもと同じ服で集合場所の駅へ向かう。
辰支くんがもう着いており、俺が話しかけると、彼はいつもの可愛い笑顔を向けてくれる。
相変わらず、優しくて暖かい笑顔だ。
この笑顔も醜いと言われていたらしいが、この笑顔を見てそう思ったやつは目が節穴なんだなと思う。
辰支くんはあれ以来少しずつだが、心を開いていき、順調に回復している。
辛いことがあっても、俺をよく頼ってくれて、1人で抱え込まないでいてくれる。
最初はやはり話はしてくれなかったが、最近はよく甘えてくれる。
今日は水族館でデートをすることになっている。
辰支くんは絶叫系が苦手らしく、遊園地ではどちらも楽しめないと言われたので、水族館か動物園のどちらにするか悩んだが、水族館の方が落ち着くのではと思い、俺が水族館に行こうと提案した。
辰支くんも水族館の方が良かったみたいだ。
改札を通り、駅のホームで電車で待っていると、
「デートって初めてなんですよね…」
最初耳を疑ったが、辰支くんの表情を見たら、凄く顔を赤くしていた。
それを見て、俺は凄く嬉しい気持ちになり、さらにテンションが、上がった。
気分の高揚を抑えながら、今日1日を最高なものにしようと思った。
水族館の最寄り駅に着き、駅から出て、少し歩いたところに水族館がある。
入口からもう既に暗い空間になっている。その中に綺麗に、水槽が光っているように見える。
チケットを買って、中に入って行く。暗いので辰支くんと離れそうになったので、どうしようかと思ったが、思い切って彼の手を握る。
暗い中でも辰支くんが驚き、戸惑っているのがわかる。
「暗いから大丈夫。離れたら大変だから。」
と俺が言うと、辰支くんは渋々了承した。
手を繋ぎながら、色々回る。鑑賞から触れ合いコーナーまで隅々と見ていった。
辰支くんは楽しそうにしている時もあれば、少し悲しそうな顔をしている時もあった。
また、1人で何か考えてるな…
俺はそう気づいた。
お昼に水族館内にあるフードコートで昼飯を食べながら水族館の生物が綺麗で可愛くて癒されるなどの話をしていた。
「少し浮かない顔をしている時もあったけど、何か感じたの?」
俺がそっと聞いてみると、辰支くんは少し悲しそうに笑って、
「いえ、僕がただ思っていることですから。」
と言った。
俺にはまだ話してくれないのかなと思い、少し悲しくなってしまった。
水族館のイルカショーなども楽しみ、あっという間に夕方になっていた。
楽しい時間はあっという間だ。
水族館を出て、ブラブラしていると、観覧車があるのが見えた。
そこにいって見ると、どうやらよくある観覧車だけ建っている場所だ。
「乗ろうか?」
俺が辰支くんに聞くと、彼は笑顔で頷いた。デートの最後に観覧車はベタだけど、やっぱりいいものだ。
今までもデートを何度もしてきたが、やっぱり、本当に好きな人とのデートは凄く楽しい。
ここ最近気づいたが、どんどんと辰支くんのことが好きになっていっている。
あんまりがっついて嫌われたくないので、今はまだ我慢している。
俺が色々と振り返っていると、「あの…」と辰支くんが俺の隣に座ってきてくれる。
急な出来事に心臓がドキドキする。
「今日はありがとうございました。本当に楽しい1日でした。」
辰支くんが俺の肩に頭を傾けながら言った。
その可愛い仕草に俺はもう大変な状態だ。
「今日だけじゃなくて、また次もその次も一緒に来よう。」
と俺が冷静に話す。
「実は、今日考えてたのは、少し悲しくなっちゃったんです。」
辰支くんが先程のことを話し始めてくれる。
俺は黙って聞く。
「水族館の生物達は、ある意味閉じ込められて、見せ物にされているけれど、彼らは今の暮らしの方が野生で生きるより良いのかなと考えたら、少ししんみりしちゃって…」
どうやら、水族館や動物園にいる生物のことを考えて悲しくなっちゃったみたいだ。
「でも、彼らは人間に感謝の意味で色々と見せてくれてるのかも、と、そう考えたらそれはそれでいい事かもと思いました。」
辰支くんが言うには、生物達は、人間達に育ててもらっていることに感謝をして、恩返しに人間達を楽しませてくれているのかなということと、人間も感謝の気持ちをもっと強く持った方が良いと思うらしい。
「例えば、お店や病院でわざとならそりゃダメですが、わざとではなく、本当に失敗してしまったことは、少しは良しとしてあげても良いと思うんです。何事も店のせいにして、弱い立場のものを責めるのはただの八つ当たりと同じだと思います…」
淡々と辰支くんは続ける。
俺は、きちんと聞きながら頷く。そして最後に彼は、
「人間はしてもらうことに対して当たり前という気持ちを持ちすぎてるんでしょうね。ちゃんとしてもらったことには愛想良く感謝しないといけないと思うんですよね…」
水族館の話から大分離れたが、大体、考えだしたら最初の話から離れる時もあると思う。
それに彼は人について考えすぎ、また知りすぎたんだと思う。
だから余計に辛い思いをしたのだろう。
ともあれ、彼の言う通り、感謝をすることは1番大事なことだ。
店でしてもらったことを何事も当たり前ではなく、してくれたことに感謝する気持ちは持った方が絶対に良いと思う。
人はどちらかと言うと、ある意味感謝しなさすぎだと俺は思う。
「ごめんなさい…こんなことを話してしまって…貴方になら言えるかなと思って…」
俺にとってその言葉は嬉しい以外にない言葉だった。
ちゃんと頼ってもらえてると再確認出来た。
観覧車が頂上に来た時、
「それはそれとして、本当にありがとうございます…護也さん…なんちゃって…」
と言いながら辰支くんが頬にキスをした。
今の言葉と行動にに俺は驚きを隠せなかった。
辰支くんは耳まで真っ赤で俺の方を向かずにいる。
俺がこっち向くように言っても、彼は向こうとしない。
だから、俺は、
「こっち向いて、辰支」
と言った。
辰支くんは驚いたようで振り返り、その瞬間に俺は彼の唇と自分の唇を重ねた。
一瞬時間が止まった気がした。
口を離した後、2人とも顔を真っ赤にしながら見つめ合う。
「これからもよろしく、辰支…」
俺が静かにそう言うと、辰支くんは笑いながら
「こちらこそ、よろしくお願い致します。護也さん」
と言ってくれた。
観覧車の1番高い場所で2人して笑い合った。
今まで俺の心は空っぽだった。
だが、花を追いかけたら君を見つけて救われた。
君は星を追いかけて俺を見つけてくれた。
俺達はこれからどんな困難があっても、守り、支え、理解し合い、助け合いながら、感謝を忘れずに生きていく。
それが良い生き方だと俺達は信じている。
俺達は今すぐに感謝するなら星と花だ。
こんな素敵な人と巡り会わせてくれたことに心から何度も感謝をした。
だから、生かしてくれたこの星と花達へのお礼として、俺達は生きていく。
これからもずっと、幸せに…
0
あなたにおすすめの小説
【完結】毎日きみに恋してる
藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました!
応援ありがとうございました!
*******************
その日、澤下壱月は王子様に恋をした――
高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。
見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。
けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。
けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど――
このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。
【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?
キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。
知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。
今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど——
「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」
幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。
しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。
これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。
全8話。
【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー
AI比較企画作品
何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか
風
BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。
……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、
気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。
「僕は、あなたを守ると決めたのです」
いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。
けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――?
身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。
“王子”である俺は、彼に恋をした。
だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。
これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、
彼だけを見つめ続けた騎士の、
世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。
目線の先には。僕の好きな人は誰を見ている?
綾波絢斗
BL
東雲桜花大学附属第一高等学園の三年生の高瀬陸(たかせりく)と一ノ瀬湊(いちのせみなと)は幼稚舎の頃からの幼馴染。
湊は陸にひそかに想いを寄せているけれど、陸はいつも違う人を見ている。
そして、陸は相手が自分に好意を寄せると途端に興味を失う。
その性格を知っている僕は自分の想いを秘めたまま陸の傍にいようとするが、陸が恋している姿を見ていることに耐えられなく陸から離れる決意をした。
いい加減観念して結婚してください
彩根梨愛
BL
平凡なオメガが成り行きで決まった婚約解消予定のアルファに結婚を迫られる話
元々ショートショートでしたが、続編を書きましたので短編になりました。
2025/05/05時点でBL18位ありがとうございます。
作者自身驚いていますが、お楽しみ頂き光栄です。
心からの愛してる
マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。
全寮制男子校
嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります
※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる