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1章 貴族の息子編
第4話 貴族によるボランティア
しおりを挟む下町で、庶民に懇願された私は、それを聞き入れることにした。
それを屋敷に帰ってリオン兄様に報告すると、
「何を考えているんだい?!昔はあれだけ庶民を嫌い、我々にも庶民の嫌さを訴えていたではないか!」
と諌められる。
「長い間眠りについて気づいたのです。庶民もこのような苦しみがあるのかという事を今までと今回余計な事を言ってしまい、申し訳ありません。」
と私が謝罪する。
勿論庶民に対して何とかしてあげたいとも思ったが、何より、
物語を見せてくれたお礼をしなきゃいけないしね!
更に言うと、この先更に良い物語が見守れるかもしれない!
という期待もある。
私の謝罪にリオン兄様は
「分かった。それならお前が責任を持ってしなさい。何かして欲しければ、僅かでも力は貸そう。」
と許可をしてくれた。
理解ありすぎでしょ!この長男!
と心の中で思いながら、
「ありがとうございます。精一杯尽くします。」
と言って、部屋を出た。
兄様は一応許可してくれたが、やはり、貴族は元から庶民を見下して嫌っているところがある。
前の私がそうだ。
意味もなく庶民の人々を嫌い、貴族達にもそういった態度をとっていた。
…まっ、今の私にはそんなのどうでもいいけど
ただ物語を見たいから動く。それだけだ。
そして、貴族による庶民のための相談会の日程を決めて、それを街の1番目立つところに貼らせる。
「フターミ様、こんなに長く相談会をされるのですか?」
とラルフに聞かれる。
紙の時間には、第1回の開催期間、まずは4日間にして、時間は1人40分ほどで、今日は40番までの人が相談できる。
ちなみに時間の見方や読み方は前の世界と同じだ。時計は街で1番目立つ塔の上にある。
それ以外はない。あるのは砂時計ぐらいだ。
「いえいえ、一日に40人までにして、次の日に同じようにして、これを繰り返すのです。」
これなら皆公平に相談会が出来る。
ラルフにお願いした後、私は自分の部屋で準備をしていく。
どんな悩みを言われるか少し心配だけど、
何かしらの物語を聞けるかもしれないぞふふふふふ…
っといけない、いけない
自分の趣味を心の中で抑えて、準備を進める。
一通り終わり、あとは明日を待つだけである。
明日から貴族によるボランティアの始まりである。
そしてその次の日に、相談会の場所へ護衛2人と一緒に行く。
相談はテントの中ですることになっていて、待機する者はそれ用にテントが張ってある。
私がそうお願いした。
聞かれたくないこともあるだろうし…
呼び方も番号で呼ぶようにお願いした。
その方が「おい」などの乱暴な物言いが少しだが、柔らかくなるだろう。
そして、いよいよ相談会の始まりだ。
私が「1番の方どうぞ~」と言うと、テントに1人の中年の男性がおそるおそる入ってきた。
「心配しなくても大丈夫ですよ。あなた方がおかしなことさえしなければ何もおきませんから。ですが、聞いて欲しいことは遠慮なく話してください。」
僕が一通り言ったら、男性は驚いた表情をしていた。
おそらく貴族がこんな話し方をしているのが珍しいのだろう。
でもこうでもしないと怖がられるからね。
男性は座り、私が話すように促すと、男性は口を開く。
「実は私の家は妻と息子と娘の4人家族なんですが、最近違う土地の貴族が管理する工場で仕事をしていたのですが、利益にならないからと潰されてしまいました…」
男性曰く、うちとは別の貴族が管理する工場は、なかなか貴族の思うようにいかなかったため、潰されて男性は職を失くしたらしい。その後も仕事を探したが、なかなか良いところがなかったり、暴力を振るうところだったりと大変な思いをしたようだ。
それを私は用意した紙にメモっていく。
男性は話終えると、「助けてください…」と消えそうな声で手を合わせ、涙を流しながらお願いしてきた。
確かに、それでは家族を養えないな…
「事情は分かりました。大変な思いをされましたね…結果は後日になりますから今すぐには出来ませんが、その期間の間はこちらから食料を送らせていただきます」
私のこの言葉に男性の顔が明るくなり、
「あ、ありがとうございます!大変助かります!私などの声を聞いていただき、ありがとうございます!」
と土下座された。相当貴族は冷たいようだ。さっき言ったように、男性家族には期間中食料などを送ることにした。
うちはそれだけ余裕がある。
いや、逆にありすぎて驚く。
竜輝時代に節約やお金の使い方などを考えたりしたり、仕事で接客をしていたから相手を興奮させずに話を終わらせることも可能。
これぐらい序の口。
元貧乏庶民を舐めんなよ?
自分で言って凹んでしまう。
そして、男性から40番まで沢山の相談を受けた。
家庭の話から仕事の話、更には資金の話まで。
一通り終わり、書いたメモを分ける。
例えば最初の男性が1番だったから、そのメモに1番と書いて、大切に保存する。
そして持ち帰り、どうするかを考える。
これぞフターミ流貴族ボランティアだ!
これが上手くいけばいいなと思う。
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