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1章
4話
しおりを挟む「…………スキル保持者の死亡を確認。転生者特典【シシャソセイ】が発動しました」
「……周辺に敵対反応のある個体を確認。……殲滅する」
グレイの体が光を放ったかと思うと、閃光が周囲に放たれる。怪物は上半身を吹き飛ばされ、死亡する。静寂が辺りを包む中、グレイの体が淡い光を放つ。
「スキル保持者の周辺環境を確認……。危険度SSSと断定。……現環境での【シシャソセイ】発動後の生存は絶望的。肉体の強化が必要……スキル保持者の肉体での強化では限界」
グレイの体の周りをレーダーのような光が周る。
「……周辺にスキル保持者と同種族の個体を複数確認。……スキル保持者との肉体の融合を試行」
グレイの周りにある狂精霊の死骸がグレイに集まり、強い光を放ち始めたグレイの光に吸い込まれる。しばらく光を放ち、やがて収まる。
「……スキル保持者の肉体強化に成功。……現環境での生存には不十分と判断。……スキルの付与を試行。スキル保持者の意思と照合し、スキルを作成。……スキルの作成に成功。現環境での生存は可能と判断。……スキル保持者の蘇生を行う」
再度、グレイの体が光に包まれる。しばらくの間光り、やがて体からはゆっくりと光が収まる。
ーーーーーーーーーー
「うっ、う~ん」
突如、目覚めた意識に僕はまだはっきりしない意識の中で自問自答する。
(僕は死んだんじゃないのか? ということは2度目の転生!? 確かに死ぬ前に次があったらとか言ったけど本当に転生するか!? )
僕はだんだんと意識がはっきりしてきたこともあり、重い瞼を開き、体を起こす。辺りを見渡すと、辺りは岩でできているが明るく、そこそこの広さがあり、僕が死んだ洞窟の部屋ぐらいの大きさが広がっている。
(随分明るい洞窟だなぁ……。)
辺りをよく見渡すと、壁にはいくつも何かが当たったような傷があり、その下には砕けた岩が転がってある。
(!? 違う! ここは僕が死んだ洞窟だ。壁のいたるところについた傷は僕や狂精霊が怪物に吹き飛ばされた時の傷だ!)
僕は混乱しながらも、部屋の中を散策していると、自分が持っていたと思われる壊れた短剣を見つける。
(これは僕の短剣!? 間違いない、ここは僕が死んだ洞窟だ! すると何で僕は生きているんだ? たくさんあった死骸も無くなっているし!? それに僕が来た時より部屋が明るい! どうなっているんだ!?)
僕はますます混乱する。すると、トドメを刺すかのように狂精霊が部屋の入り口に足を止める。僕の頭の混乱が未だ解決しないまま、狂精霊は僕に歯を剥き出しにして威嚇をする。
「シャーーーッ!」
僕は手に持っていた壊れた短剣を捨て、武器を探す。
(武器っ! 武器っ! 武器はどこかにないのか!?)
慌てて辺りを見回す。すると、僕を襲っていた怪物が持っていた巨大な大剣を見つける。
(一か八かだ!)
僕は一か八か大剣を持ち上げようとする。しかし、大剣は僕が想像していたほど重さが無く、あっさりと持ち上がる。
(あれっ、意外と軽い!?)
僕が不可思議に思っていると、その考える隙も与えまいと狂精霊が飛びかかる。僕は大剣を構え、迎撃体制を整える。
(あれっ、動きが遅い?)
僕は緩慢な動きで攻撃してくる狂精霊の攻撃を難なく避けるとすれ違い様に背中を2、3度袈裟斬りにする。すると、狂精霊はあっけなく倒れ、少しして完全に動きを止める。
(あまりに遅いから何度か斬ってしまった……。それにしてもさっきの狂精霊は一体どうしたんだ……)
僕は元々怪我をしていたのだろうかと思い、狂精霊を調べるも外傷は見つからなかった。
(狂精霊に異常はない……。となると……おかしいのは僕なのか!?)
僕は慌てて【ステータス閲覧】を自分に行う。
名前:グレイ
種族:せ◾︎レi
Lv:2
【無属性魔法 : Lv MAX】、【隷王の書 : Lv 1】、【女面鳥王の眼 : Lv 1】
(知らないスキルが増えてる!? 【隷王の書】に【女面鳥王の眼】ってなんだ? それに元々あった【ステータス閲覧】が消えてるし……。【無属性魔法】もレベルがMAXになってる……)
僕は混乱してじーっと突如出現したスキルを訝しげに凝視する。すると……
【隷王の書】
《一章》 『使役』
といった表示が急に現れる。
(これは一体何だ!?)
さらに次は意識して凝視すると……
【隷王の書】
《かつて世界を支配していたとされる隷王が所持していた魔導書。これを持って隷王は世界中の生物を私兵とし、世界を支配した》
『使役』
《生物を支配下に置くことができる》
条件:支配下に置きたい生物の距離10メートル以内に入り、隷王の書の一章を読む
謎のスキルの詳細が現れる。僕は混乱しながらも書かれている内容を読む。
(……【隷王の書】。かつて世界を支配していた王様が持っていた魔導書か。なぜそんな物が僕のスキルに現れたんだ!?)
僕は意識して【隷王の書】を発動しようとする。すると、突然右手に不気味な幾何学模様が表紙の黒い本が現れる。
(……本当に出た! もしかしてこれが【隷王の書】……。)
意を決して本を開く。すると、本の中身は今まで見たこともないような文字で書かれており、読むことができない。
(何だこの文字は!? 大体文字が読めないんじゃ『使役』の条件なんて達成できるわけないじゃないか!)
僕は落胆しながらパラパラと本を捲っていると、突然、読める箇所が出てくる。
(何だ? 相変わらず意味不明の文字なのに何故かこの文字が、この文字の発音が分かるぞ!?)
僕は謎の現象に戸惑うも、それを一旦棚上げにして残っていたもう一つの謎のスキルを凝視する。
【女面鳥王の眼】
《かつて世界中の空を支配していた女面鳥の女王、女面鳥王が有していた世界の万象すべてを見渡したとされる眼。この眼で女面鳥王は女面鳥達と地上の人間を見張っていたと言われる》
(……【女面鳥王の眼】! もしかしなくても洞窟が明るく見えるのはこのスキルが原因か! ……う~ん、おそらく無くなった【ステータス閲覧】はこのスキルに吸収されたと見るべきだな。世界の万象すべてを見渡したとか書いてあるし……。スキルの詳細が見えるようになったのは【女面鳥王の眼】の影響かな?)
謎の現象の原因にあたりをつけ、なんとか頭を切り替える。
(うーむ。とりあえずスキルの事は棚上げにして【狂精の墓場】から出よう。どうして生きているかは謎だけど、いつさっき殺されかけた怪物みたいな奴に遭うか分からないし)
ビリッ。僕は大剣を破いた自分の服で無理矢理背中に結び、壊れた短剣の刀身の部分を布に巻き、レッグホルスターにしまう。そして僕は、怪物に殺されかけた部屋を出て【狂精の墓場】の出口を目指す。
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