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1章
11話
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転精11話
「うむ、知っているぞ! なんせ私は最深部への道を守るためにこの扉の前にいたのだからな!」
僕はカヴァリエの言葉を聞き、唖然とする。
(そういえば狂精霊の時も守るとか言ってたもんなぁ……。しかし、狂精霊になったことを自分で気付いていることと言い、やっぱりカヴァリエはノールとは少し違うようだ。明らかに何かを隠しているし……。まぁ、でも間違いなく良い人なのは確かだ)
僕はカヴァリエの様子に少し疑問を持ちつつも、一旦棚上げにし、扉の前に立つ。
「それじゃカヴァリエ、いこうか」
僕は顔をカヴァリエの方へ向け、口を開く。
「ああ! 我が主よ!」
僕達は巨大な扉を一緒に押し、その中へと足を進める。
ーーーーーーーーーー
「ところでカヴァリエは何が出来るの?」
僕は今後のためにも必要だと思い、カヴァリエに出来ることを尋ねる。そんな僕の周りにはカヴァリエが出した【小雷光】という魔法によって出た、光の小さい球が飛んでいる。
「ふむ、私が出来るのは今出している【小雷光】と【雷光】、後は【雷撃】と【雷玉】、【雷装】と【雷膜】に【雷剣】だな。」
僕はそのそうそうたる魔法の数にカヴァリエが上級精霊であったことを思い出す。
「えーっと……それじゃあ一つずつ見せてくれない?」
「うむ、承った」
僕が魔法の実演を頼むとカヴァリエは快く受けてくれた。
「それじゃあまず、【小雷光】からだが…………」
ーーーーーーーーーー
「…………という訳だ。これが私が使える魔法だ」
あれからカヴァリエは一つずつ説明を挟みながら、僕に説明してくれた。
カヴァリエの説明と実演した魔法を簡潔に訳すと、【小雷光】は明かりを出す魔法、【雷光】は目眩しの魔法、【雷撃】が直線状の雷を射出する魔法、【雷玉】が【雷撃】の球形バージョン、【雷装】が雷を纏う魔法、【雷膜】が自身を中心に雷の膜を張る魔法、【雷剣】が雷を武器に纏わせる魔法ということらしい。
(さすが上級精霊だな~。使える魔法の数も質も僕とは比べ物にならないな)
「すごいよカヴァリエ! 君と一緒なら最深部へも行けるかもって気がしてきたよ!」
「ふふん、そうだろう。なんせ私はかの精霊この……いや何でもない……」
カヴァリエは途中までは胸を張っていたが、何かを言いかけたかと思うと、それ以上話すのをやめる。
(やっぱり何か隠してるな……。まぁ、でも今は……)
「それじゃ、最深部へ向かいましょう!」
僕はカヴァリエの事を一旦置いて、最深部へとカヴァリエを促す。
ーーーーーーーーーー
最深部へと向かって数時間が経っただろうか。僕とカヴァリエは時折出てくる狂精霊を撃退しながら、談笑も交えて最深部へと足を進めてきた。
その甲斐もあってか、遂に【狂精の墓場】2度目の人工物らしき巨大な扉の前まで来ていた。
「…………さま……」
カヴァリエはこの扉に見覚えがあるのか、先ほどから横でぶつぶつと呟いていた。カヴァリエの様子に尋常でないものを感じながらも、僕とカヴァリエは扉に手を置き、両手で扉を押し開ける。
ズシンとした重厚な扉を開くと……中には立派な髭と長髪を携えた一人の老人が立っていた。
「……老水《ラオシュイ》様!」
カヴァリエは目の前の老人の事を知っているようで、その老人の名を口ずさむ。老人はカヴァリエの声に気がつくと、眉らしき場所が上がり、その青い眼を晒す。
「ふむ、カヴァリエか……。久しいのぉ。息災であったか?」
老人は知り合いらしいカヴァリエに尋ねる。
「はい……! カヴァリエは……息災であります! 老水様も……息災なようで……私はとても……とても嬉しいです」
老水という名らしき老人からの言葉を聞くと、カヴァリエは途端にその相貌を歪め、泣きながら返答を返す。
「ホッホッホ、それならば良い。……時にカヴァリエよ。お主の隣におる少年は何者であるのかな?」
カヴァリエは涙と鼻水だらけの顔を拭くと、勢いよく僕を紹介する。
「この方は我が主であられるグレイ殿という! 私を狂精霊の呪いから解放してくれた御仁であられます!」
「ホホゥ、お主がカヴァリエを助けてくれた御仁であるか……」
僕は目の前の老人の雰囲気に気圧されながら返答する。
「はい、僕がカヴァリエの主になったグレイと言います。助けたという訳でもないですけど……」
老人は僕の返答を聞くと、満足そうに頷く。
「ホッホッホ! 謙遜なさらんでも良い。狂精霊を精霊に戻すなど、お主以外でできる者などおらん」
老人はそう言って笑い出す。僕は好々爺然とした老人の姿に戸惑うばかりだ。
「時にお主達、こんな場所へ何をしにきたのじゃ?」
「いや、それがカヴァリエがここに来たいって言うので……」
来訪の目的を尋ねる老人に僕はカヴァリエが望んだ事だと話す。
「ホホゥ……ではカヴァリエよ。お主は何故この場へ来たのだ?」
「それは……もちろん精霊王様を復活させよ「カヴァリエ!」」
老人はカヴァリエの言葉の途中で雰囲気を一変させて、怒鳴る。
「カヴァリエよ……。精霊王様の復活はお主一人の手でなせる程簡単ではない」
「わかっております! しかし、私にはこのまま何もしないのは耐えきれません!」
僕は目の前で飛び交う新単語にすっかり混乱していた。
(精霊王? 二人は何の話をしているんだ?)
僕は目の前で白熱し続ける議論に勇気を出して、割りこむ。
「あっ、あのー……。精霊王って何なんですか?」
僕の言葉を聞き、二人はやっと口論をやめてくれる。
「カヴァリエ……お主この御仁に何も説明せぬままこんな場所まで来たのか……!」
「……うっ!」
老人の言葉にカヴァリエは気まずそうな表情を浮かべる。それを見て、老人はため息を吐く。
「はぁ……。カヴァリエの主よ。お主には話そう。この【狂精の墓場】が何故できたのか、過去に何があったかをな……」
「うむ、知っているぞ! なんせ私は最深部への道を守るためにこの扉の前にいたのだからな!」
僕はカヴァリエの言葉を聞き、唖然とする。
(そういえば狂精霊の時も守るとか言ってたもんなぁ……。しかし、狂精霊になったことを自分で気付いていることと言い、やっぱりカヴァリエはノールとは少し違うようだ。明らかに何かを隠しているし……。まぁ、でも間違いなく良い人なのは確かだ)
僕はカヴァリエの様子に少し疑問を持ちつつも、一旦棚上げにし、扉の前に立つ。
「それじゃカヴァリエ、いこうか」
僕は顔をカヴァリエの方へ向け、口を開く。
「ああ! 我が主よ!」
僕達は巨大な扉を一緒に押し、その中へと足を進める。
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「ところでカヴァリエは何が出来るの?」
僕は今後のためにも必要だと思い、カヴァリエに出来ることを尋ねる。そんな僕の周りにはカヴァリエが出した【小雷光】という魔法によって出た、光の小さい球が飛んでいる。
「ふむ、私が出来るのは今出している【小雷光】と【雷光】、後は【雷撃】と【雷玉】、【雷装】と【雷膜】に【雷剣】だな。」
僕はそのそうそうたる魔法の数にカヴァリエが上級精霊であったことを思い出す。
「えーっと……それじゃあ一つずつ見せてくれない?」
「うむ、承った」
僕が魔法の実演を頼むとカヴァリエは快く受けてくれた。
「それじゃあまず、【小雷光】からだが…………」
ーーーーーーーーーー
「…………という訳だ。これが私が使える魔法だ」
あれからカヴァリエは一つずつ説明を挟みながら、僕に説明してくれた。
カヴァリエの説明と実演した魔法を簡潔に訳すと、【小雷光】は明かりを出す魔法、【雷光】は目眩しの魔法、【雷撃】が直線状の雷を射出する魔法、【雷玉】が【雷撃】の球形バージョン、【雷装】が雷を纏う魔法、【雷膜】が自身を中心に雷の膜を張る魔法、【雷剣】が雷を武器に纏わせる魔法ということらしい。
(さすが上級精霊だな~。使える魔法の数も質も僕とは比べ物にならないな)
「すごいよカヴァリエ! 君と一緒なら最深部へも行けるかもって気がしてきたよ!」
「ふふん、そうだろう。なんせ私はかの精霊この……いや何でもない……」
カヴァリエは途中までは胸を張っていたが、何かを言いかけたかと思うと、それ以上話すのをやめる。
(やっぱり何か隠してるな……。まぁ、でも今は……)
「それじゃ、最深部へ向かいましょう!」
僕はカヴァリエの事を一旦置いて、最深部へとカヴァリエを促す。
ーーーーーーーーーー
最深部へと向かって数時間が経っただろうか。僕とカヴァリエは時折出てくる狂精霊を撃退しながら、談笑も交えて最深部へと足を進めてきた。
その甲斐もあってか、遂に【狂精の墓場】2度目の人工物らしき巨大な扉の前まで来ていた。
「…………さま……」
カヴァリエはこの扉に見覚えがあるのか、先ほどから横でぶつぶつと呟いていた。カヴァリエの様子に尋常でないものを感じながらも、僕とカヴァリエは扉に手を置き、両手で扉を押し開ける。
ズシンとした重厚な扉を開くと……中には立派な髭と長髪を携えた一人の老人が立っていた。
「……老水《ラオシュイ》様!」
カヴァリエは目の前の老人の事を知っているようで、その老人の名を口ずさむ。老人はカヴァリエの声に気がつくと、眉らしき場所が上がり、その青い眼を晒す。
「ふむ、カヴァリエか……。久しいのぉ。息災であったか?」
老人は知り合いらしいカヴァリエに尋ねる。
「はい……! カヴァリエは……息災であります! 老水様も……息災なようで……私はとても……とても嬉しいです」
老水という名らしき老人からの言葉を聞くと、カヴァリエは途端にその相貌を歪め、泣きながら返答を返す。
「ホッホッホ、それならば良い。……時にカヴァリエよ。お主の隣におる少年は何者であるのかな?」
カヴァリエは涙と鼻水だらけの顔を拭くと、勢いよく僕を紹介する。
「この方は我が主であられるグレイ殿という! 私を狂精霊の呪いから解放してくれた御仁であられます!」
「ホホゥ、お主がカヴァリエを助けてくれた御仁であるか……」
僕は目の前の老人の雰囲気に気圧されながら返答する。
「はい、僕がカヴァリエの主になったグレイと言います。助けたという訳でもないですけど……」
老人は僕の返答を聞くと、満足そうに頷く。
「ホッホッホ! 謙遜なさらんでも良い。狂精霊を精霊に戻すなど、お主以外でできる者などおらん」
老人はそう言って笑い出す。僕は好々爺然とした老人の姿に戸惑うばかりだ。
「時にお主達、こんな場所へ何をしにきたのじゃ?」
「いや、それがカヴァリエがここに来たいって言うので……」
来訪の目的を尋ねる老人に僕はカヴァリエが望んだ事だと話す。
「ホホゥ……ではカヴァリエよ。お主は何故この場へ来たのだ?」
「それは……もちろん精霊王様を復活させよ「カヴァリエ!」」
老人はカヴァリエの言葉の途中で雰囲気を一変させて、怒鳴る。
「カヴァリエよ……。精霊王様の復活はお主一人の手でなせる程簡単ではない」
「わかっております! しかし、私にはこのまま何もしないのは耐えきれません!」
僕は目の前で飛び交う新単語にすっかり混乱していた。
(精霊王? 二人は何の話をしているんだ?)
僕は目の前で白熱し続ける議論に勇気を出して、割りこむ。
「あっ、あのー……。精霊王って何なんですか?」
僕の言葉を聞き、二人はやっと口論をやめてくれる。
「カヴァリエ……お主この御仁に何も説明せぬままこんな場所まで来たのか……!」
「……うっ!」
老人の言葉にカヴァリエは気まずそうな表情を浮かべる。それを見て、老人はため息を吐く。
「はぁ……。カヴァリエの主よ。お主には話そう。この【狂精の墓場】が何故できたのか、過去に何があったかをな……」
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