女川君は女性運が悪い〜俺は普通の高校生なのにいつも女性に絡まれている。もう放っといてくれないかな〜

片野丙郎

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3章

罪の記憶13

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 透が罪を認めた次の日、教室の空気は最悪だった。朝は透が教室に入るなり、あちこちから聞こえるように透の悪口が飛び交った。

「性犯罪者」、「レ○プ野郎」、「人間のクズ」、「一生、学校に来るな」と遠慮のない言葉のナイフが透に突き刺さる。

 終いには、初瀬さんの事件に怒った女子たちが透にクラスメートたちが見守る中、堂々と土下座しろと要求した。

 事件の当事者でもないのに何を要求しているのか。透には彼女たちの要求を受け入れる必要はない。

 しかし、当の透は驚くほどあっさりと土下座の態勢を取るなり、すぐに自分の席に座り直してしまった。

 透の反応に面白くなかったのか、女子たちは激昂したが、罵声を浴びせられる透は涼しい顔で平然と罵声を受けている。

 教室でたったひとり孤立する透。でも、どれだけ透に嫌がらせや罵声を浴びせても、まったく堪えた様子のない透。

 透の心は強い。そう、異常なほどに。

 普通なら、大なり小なり心に傷を負って然るべき状況なのに、透の強さが傷を跳ね返す。

 或いは、本当は傷付いているのに強過ぎるあまり、気付くことが出来ないのか。

 そんな透の姿に私は、強さ以上に不安を感じずにはいられない。今は透がその心の強さでいかなる攻撃にも耐えている。

 でも、いつか耐えられない攻撃が透を襲ったら?

 透はいったい、どうなってしまうの?

 その時、透は壊れずに済むの?

 もしかしたら、取り返しのつかないほど壊れてしまうかもしれない。そうなったら、誰が透を癒してくれるというのか。

 できる事なら、私が透を癒してあげると言いたい。

 でも、透を一度傷付け、今回の件でも何も出来なかった私には、そんな大それたことは言えない。

 結局、透への陰口は朝の朝礼が始まるまで続いた。





ーーーーーーーーーー





 放課後になっても、透への口さがない陰口は止まらない。先生が教室を去るなり、教室中が透への陰口で埋め尽くされる。

 むしろ、抵抗しない透の余裕を崩そうと陰口の内容は朝から比べて、かなり悪化していた。

 それでも、陰口を叩かれている当人はピクリとも表情を変えない。ボーっと虚空を見つめるばかりだ。

 ーーガタッ。

 しばしの間、虚空を見つめていた透はさっさとカバンに荷物を詰めて、席を立つ。帰ろうとしているのは誰の目にも明白だ。

 帰る準備を終えた透は、そそくさと教室を去っていく。

 見てばっかりじゃダメよ、私!

 追いかけて透と話さなくちゃいけないわ。

 決めたじゃない。何があっても、透の味方でいようって。

 去っていく透の背中を私は追う。

「まっ、待ってよ透ッ! お願い、止まってよ透ッ!」

「ハァ……。なんですか、白雪さん?」

 私の必死の問いかけに、透が立ち止まる。しかし、その目を見れば透が私に対して面倒だと考えているのは一目瞭然だ。

 透が私のことを面倒だと思っていたとしても、私はここで引くわけにはいかない。

「私……透に話したくて……! 私は……透の味方だって……!」

「……俺の味方? なにを言ってるんですか?」

「だっ、だって透は今ひとりでーー」

「俺に味方なんか要りませんので、白雪さんはどうぞ俺にお構いなく」

 透には私の言葉のひとつとして届かない。

「そんな……ダメだよ!」

「なにがダメかは分かりませんけど……。ああ、そうだ」

 不意に、透がなにかを思い出したようでカバンを漁り出す。透がカバンからなにか四角い紙を出す。

「これ、返しますね。それじゃ、俺は用事がありますので……」

「透……!」

 透から渡されたのは、便箋のようだった。透は返すと言っていたが、私にはこの便箋に心当たりが無かった。

「これはいったい……」

 疑問を解決するためにも便箋を開く。便箋を開くと、私は驚愕することになる。

『拝啓、女川透様。
今日の昼休み、校舎3階、視聴覚室で話があります。貴方が来るのを一日千秋の思いでお待ちしております。
     白雪真代』

 便箋には私が透に宛てた手紙が入っていたからだ。

 私、こんな手紙書いた覚えない!
 誰がこんな手紙を……。

 手紙の字は私の字体に似せているが、本人である私にはこの手紙の字が自分のものではないと分かる。

「ッ!」

 手紙の最後、名前の欄を見て驚愕する。

 手紙の最後に書かれた白雪真代という字。これだけは間違いなく、私の字体であった。

 しかし、問題はそこではない。

 この字には覚えがある。数日前、片桐くんに頼まれて書いた署名用紙に署名した字にそっくりであった。

 いったいどう言うこと……!

 どうして署名用紙に書いたはずの名前がこの手紙に……!

 問いただすべきは唯ひとり。
 署名用紙を預かっていた張本人、片桐颯太その人だ。

 私はすぐに、片桐くんを問いただすべく教室に一目散に戻る。しかし、教室に片桐くんの姿は無い。

「片桐くんはッ! 片桐くんはどこに行ったの!!!」

 近くにいた生徒に尋ねる。焦る私は、かなり強い語気で尋ねる。

「かっ、片桐ならさっき、初瀬さんと一緒に出て行ったよ……。たしか、図書室がある方に向かって行ったよ……」

「そう……。ありがとう」

 私はすぐに片桐くんを探しに図書室がある方へと向かう。
 程なくして図書室に辿り着く。

 図書室からは誰かの話し声が聞こえる。中を覗くと、片桐くんと初瀬さんの姿が確認できる。

 見つけたわ、片桐颯太ッ!
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