彼女に裏切られて自暴自棄になってたら、超絶美少女でお嬢様なむかしの幼馴染に拾われた〜復縁してくれ?今の環境が最高なのでお断りします〜

片野丙郎

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1章

デート開始

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「うーん、どこでご飯食べよっか?」

「ハル君……。あの……実は私、お弁当を作ってきてるんだ! だから……近くの公園で一緒に食べませんか?」

 歩きながら、幼馴染の宇佐美にどこでお昼ご飯を食べようかと話しかけると、宇佐美は顔を赤くしながら俺に提案してくる。

「あっ、ああ。良いと思います」

 宇佐美の突然の提案に、俺は動揺しつつも快く了承する。

 宇佐美、もしかしなくても今日のために作ってくれたのか? もし、今日俺が断ってたら無駄になった可能性もあったのに。

 俺は宇佐美がわざわざお弁当を作ってきてくれたという感情とせっかく作った弁当が無駄になるというリスクを度外視で作ってくれたという感情が交わり、胸の奥が温かくなる。

「……ありがとな」

「ん? 何か言ったハル君?」

「いや、何でもないさ。行こうぜ宇佐美!」

「うん! こっちだよハル君!」

 俺は無意識にこぼれた言葉を誤魔化し、宇佐美の手に引かれるまま公園へと歩みを進める。5分ほど歩くと、子供用のブランコとすべり台だけが置かれた小さな公園に着く。

「あっ……!」

 公園に唯一設置されているベンチには既に先客がいた。ベンチに座っている男は、耳にイヤホンを付け、片手でスマートフォンをいじっている。どうやら携帯でゲームをしているようで、その様子から見てもどいてもらう事は難しいだろうと分かる。

「しかたない……。宇佐美、どこか別の場所を探そうか?」

「あっ! ハル君、あそこに名状しがたいバールのようなものを持った美少女が!」

「ん?」

 宇佐美が指差す方を見るが、そこにはなにもなく、道の端に立つお地蔵さんがなんとも言えない表情で立っているのが印象に残る。

「おい宇佐美、あっちには誰もいないぞ?」

「あっ、あれぇ!? おっ、おかしいなぁ、たしかに見えたんだけどなぁ……。あのお地蔵さんと見間違えたんでしょうか!?」

 宇佐美は慌ただしく目線をキョロキョロとさせる。

「そっ、それより見てください! 男の人がどこかに行ったようですよ! 今のうちに座りましょう!」

「あれ?」

 俺が目を離した一瞬の間にどこかに行ったのか?にしても、いくらなんでも早くないか? 目を離してたのは30秒ぐらいだぞ!?

「どっ、どうしたんですかハル君!? 早く座りましょう!」

「おっ、おう……」

 俺は何か釈然としないものを感じつつも、公園のベンチに座る。遅れてベンチに座った宇佐美は、カバンの中から風呂敷に包まれた弁当を取り出す。

「今日はハル君の好きなものばかり入れてきたんですよ!」

 そう言って、宇佐美が弁当箱の蓋を開ける。すると、中にはぎっしりとおかずが詰まっており、はたから見てもとても美味しそうだ。

「とりの唐揚げにネギ入り卵焼き、アスパラベーコンにほうれん草のおひたし。全部ハル君の好きなものですから!」

 確かに、弁当の中身は俺の好物ばかりだった。しかし、だとすると疑問が出てくる。

「宇佐美、お前俺の好物のこと、どこで知ったんだ?」

 俺は不思議に思ったことを宇佐美にぶつける。

「ふふっ。それはハル君のお母さんをおど……じゃなかった、教えてもらったんだよ」

 そう言って宇佐美は頬を吊り上げ、笑顔を作る。しかし、なぜだろう。笑っているはずなのに、今の宇佐美の笑顔からは朗らかな雰囲気は感じられない。俺はこれ以上突っ込んだら危ないなと思い、話を切り上げる。

「そっ、そうか。……とりあえず、食べるか!」

「はい!」

 その後、俺たちは宇佐美が作ってきた弁当をつまみながら、しばらく公園のベンチで談笑するのだった。ちなみに言うと、お弁当はとてもおいしかった。



ーーーーーーーーーー



《二条纏視点》

γガンマδデルタ、標的の排除、ご苦労様でした。引き続き、よろしくお願いします」

「了解。気絶させた男はどうしますか?」

「周囲から見えない位置に適当に捨てておきなさい」

「イエッサー!」

 公園のベンチに座っていた男を排除し終え、私は男の排除を実行したγとδを労う。眼下では2人の男女が仲睦まじく、お弁当をつつき合っている。その様子は、何も知らない者が見ればカップルに見えることは間違いないが、だが実際は、2人はまだ付き合っていない。

 しかし、2人を見ていると、25歳にもなって恋人の1人もできたことがない自分に焦りを感じてくる。メイドの仕事は楽しいし、充実もしているが、男性との出会いがあるかと言われるとノーと言わざるを得ない。同僚の「あと数年で結婚適齢期が過ぎちゃう!」という悲痛な叫びを思い出すと、とても悲しくなってしまう。私も同じ運命を辿ってしまうのだろうか……。

 私が自分の将来に暗い不安を抱えていると、ついに2人が動き出す。昼食を食べ終えてもしばらく喋っていた2人だったが、ついにベンチから立ち上がり、移動を開始する。それと同時に、私の耳に主人の声が届く。

「昼食の間の人払い、ご苦労。今からデパートの方へ移動します。引き続き、サポートの方よろしくお願いします」

「かしこまりました」

 主人からの命令を、私はプレアデスに伝える。

「お嬢様が移動を開始します。到着予定地はデパート、排除対象の増加が予想されます。気を引き締めてかかるように!」

「イエッサー!」

 プレアデスへの命令を終えると同時に、主人と周防様が移動を開始する。私は今後のことも予想し、変装用のカツラを被り、変装の完成を急ぐ。
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