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第3話 予兆
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「宅配便でーす!」
始業式が終わった翌日。
インターホンから聞こえてくる男性の声を聞いて知樹は外へ出た。
そこには宅配業者、武蔵急便のトラックが家の前に止まっており、男性がダンボールを持っている。
「サインを……」
知樹が言われた通りに受け取り確認を済ませると、男性は「ありがとうございます」と、礼を言い、トラックを走らせる。
知樹が受け取ったダンボールは小さく、軽い。
新品のスマートフォンが封入されている箱のおよそ二倍のサイズしかなく、宅急便にしては珍しい。
それに、
「俺宛で届いているんだよな」
ダンボールに直接貼られた薄い紙には宛先として『八林知樹様』と書かれていた。
そして送り主は『結城ゲームズ』。
「この会社名、どこかで……」
見覚えのある文字の羅列に引っかかった何かを感じるも知樹は家に戻った。
始業式が終わった翌日。
土日に入ったため学校は休み。
となれば知樹がすることは1つである。
それは知樹がランク上位に食い込んでいる育成ゲームの推しキャラ、暁乃々華の育成だ。
荷物を取りに外へ出ただけなのでゲームが起動状態で放置されているパソコンを知樹は見る。
その横に未開封のダンボールを置いた。
ホーム画面には好きなキャラクターを1人だけ選び表示できる。
当然そこにいつも暁乃々華こと『のんちゃん』がいるのだが、
「のんちゃんが……いない」
そう、そこにいるはずの推しキャラがいない。
知樹はメニューからキャラクターの欄を表示した。
そこには数人の少女たちが『入手カード』として記録されている。
その欄に暁乃々華と表示されていない場合、カードを破棄したかデータの破損、または不具合となるのだ。
結論から言って『暁乃々華』という名前はあった。
だが名前の横のイラストがきれいさっぱり無くなっており、背景色だけが映っている。
「不具合ってことになるんだろうか」
この育成ゲーム【WITH二次元】は常時運営の管理下にあるゲームだ。
その為運営のチェックによりデータの不具合が検出されればすぐに修正にかかるだろう。
その場合は一部のアイテムがお詫びとして送られてくる為、一概にデメリットだけとは言えず、知樹も偶には不具合関連のアイテム支給が来ることを願うこともある。
「でも実際に起きると困るもんだな」
仕方ないという結論にたどり着いた知樹は、乃々華がいない=やる気が出ないという事で早々にパソコンと電源を切ろうとした。
だがちょうどその時、メールの受信を知らせる音が鳴った。
パソコンの画面の端にもそう表示されている。
シャットダウンする前に通知表示にカーソルを合わせる為マウスを動かすも。
またもや、予想外なことが起こる。
突然、全画面表示で何かが開いた。
そこにはよく見るダウンロード時に表示される、青で塗り潰されたゲージが満タンまで溜まっていた。
その下には、
『NO.0001インストール完了』
何かがインストールされたようだ。
「なんなんだ……」
知樹は慌ててマウスを動かす。
だが何がインストールされたのかはどこにも書いていない。
ピロン!
不意に音が鳴り響く。
1人しかいない部屋で静けさを破ったのは、明るい音。
その音源はパソコンの真横に置かれている、まだガムテープにすら手をつけていない、知樹宛の郵便物の中だった。
始業式が終わった翌日。
インターホンから聞こえてくる男性の声を聞いて知樹は外へ出た。
そこには宅配業者、武蔵急便のトラックが家の前に止まっており、男性がダンボールを持っている。
「サインを……」
知樹が言われた通りに受け取り確認を済ませると、男性は「ありがとうございます」と、礼を言い、トラックを走らせる。
知樹が受け取ったダンボールは小さく、軽い。
新品のスマートフォンが封入されている箱のおよそ二倍のサイズしかなく、宅急便にしては珍しい。
それに、
「俺宛で届いているんだよな」
ダンボールに直接貼られた薄い紙には宛先として『八林知樹様』と書かれていた。
そして送り主は『結城ゲームズ』。
「この会社名、どこかで……」
見覚えのある文字の羅列に引っかかった何かを感じるも知樹は家に戻った。
始業式が終わった翌日。
土日に入ったため学校は休み。
となれば知樹がすることは1つである。
それは知樹がランク上位に食い込んでいる育成ゲームの推しキャラ、暁乃々華の育成だ。
荷物を取りに外へ出ただけなのでゲームが起動状態で放置されているパソコンを知樹は見る。
その横に未開封のダンボールを置いた。
ホーム画面には好きなキャラクターを1人だけ選び表示できる。
当然そこにいつも暁乃々華こと『のんちゃん』がいるのだが、
「のんちゃんが……いない」
そう、そこにいるはずの推しキャラがいない。
知樹はメニューからキャラクターの欄を表示した。
そこには数人の少女たちが『入手カード』として記録されている。
その欄に暁乃々華と表示されていない場合、カードを破棄したかデータの破損、または不具合となるのだ。
結論から言って『暁乃々華』という名前はあった。
だが名前の横のイラストがきれいさっぱり無くなっており、背景色だけが映っている。
「不具合ってことになるんだろうか」
この育成ゲーム【WITH二次元】は常時運営の管理下にあるゲームだ。
その為運営のチェックによりデータの不具合が検出されればすぐに修正にかかるだろう。
その場合は一部のアイテムがお詫びとして送られてくる為、一概にデメリットだけとは言えず、知樹も偶には不具合関連のアイテム支給が来ることを願うこともある。
「でも実際に起きると困るもんだな」
仕方ないという結論にたどり着いた知樹は、乃々華がいない=やる気が出ないという事で早々にパソコンと電源を切ろうとした。
だがちょうどその時、メールの受信を知らせる音が鳴った。
パソコンの画面の端にもそう表示されている。
シャットダウンする前に通知表示にカーソルを合わせる為マウスを動かすも。
またもや、予想外なことが起こる。
突然、全画面表示で何かが開いた。
そこにはよく見るダウンロード時に表示される、青で塗り潰されたゲージが満タンまで溜まっていた。
その下には、
『NO.0001インストール完了』
何かがインストールされたようだ。
「なんなんだ……」
知樹は慌ててマウスを動かす。
だが何がインストールされたのかはどこにも書いていない。
ピロン!
不意に音が鳴り響く。
1人しかいない部屋で静けさを破ったのは、明るい音。
その音源はパソコンの真横に置かれている、まだガムテープにすら手をつけていない、知樹宛の郵便物の中だった。
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