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第2話 1日目
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「んで目にクマを付けてこんなギリギリの時間に登校してきた、と元優等生は」
苦い笑みを浮かべて知樹の事情を聞くのは前原高貴。
知樹の前学年から同クラスの友人である。
「……まぁそんなところ。でも見た?ランキング」
「なんで俺がそんなのを見ないといけないんだ」
「やり込んだ甲斐があったよ。 聞いて驚け……」
「はいはい、またトップだったんだろ」
見知った顔を見つけ、知樹の席へ寄って来た高貴は知樹の前でひらひらと興味無さげに手を振った。
「釣れないな、全く」
知樹はクラスを見渡す。
元優等生とは言え、テストの点数は未だ健在。
知樹はダブることなく第二学年へと進級したわけだが、いくら頭が良くても面識がない人間の名前を顔を見ただけで分かるはずがない。
「高貴だけでも同じクラスで良かった。面識のない人間だらけの中に放り込まれたら、俺のコミュ症が発揮されるところだったよ」
「コミュ症なぁ、まっ、そういうことにしておこう」
だけど、と高貴は続ける。
「俺がいなくても良かったんじゃないか?」
高貴は黒板に貼られた席順が書かれたプリントを顎で示す。
「どうせクラスの面子すら気にして無かったんだろ?見て来いよ」
高貴が言う通り、知樹は自分の席を確認しただけで指定された席に座っていた。
その為、自分以外の欄に目は向けていなかった。
知樹は席を立ち、黒板に貼られたプリントの元へ向かう。
席順及び名前の書かれたプリントを端から端まで目を通し終わった後、知樹は自分の席に戻る。
知っている名はあった。
それも去年も同じクラスで、一年間を同じクラスで過ごした人物の名前が、前原高貴以外にも2つ書かれていた。
「はあぁ……」
だがしかし、出てくるのはため息。
「どうだった?」
高貴は白々しく知樹に結果を聞く。
「聞くな……強いて言うなら不幸だ」
知樹が肩を落とすのを見て、高貴は楽しそうに笑う。
その笑みにはどこか含みがあるように知樹は感じた。
「不幸……不幸ってどういう事かな~?」
背後から聞こえてくる声。
明るいようでどこか威圧感のある、少し前に聞いたはずの声の方に知樹はゆっくりと向く。
「そ、それは」
そう、声の主は平川皐月。
高校生の筈なのだが中1程度に見間違えられるという経歴を持つ、なかなか珍しい類の少女だ。
だが長年何かと付き合いの長い幼馴染として、彼女を怒らせると怖いという事は忘れてはならない事だった。
ーー現に今怒らせているのだが。
「それと朝、逃げた」
「逃げたんだ(笑)」
「それは時間が無かったから……」
皐月は怒り、高貴はボソリと楽しそうに呟く。
知樹は言うまでもなく怯えていた。
「仲睦まじい事はいい事だよ~。おはよう!」
そこに第三の刺客が乱入した。
「千夏っ?」
知樹がため息を吐いた一番の原因にして、偶に洒落にならない爆弾発言を投下する、通称『爆弾』こと、河野千夏は、にこやかな笑顔で挨拶を口にする。
「おはよう皐月、高貴、それにロリコン」
「それを言うなと何度言った!」
「……プッ」
「そこ、高貴!笑うの禁止!」
「知樹……もしかして私をそんな目で……」
「見てないよ!!」
時すでに遅し。進級早々出現した爆弾は着火された後だったようだ。
「真のロリコンは?」
千夏が呟いて視線を知樹に向ける。
続けろと促しているようだ。
「決して頭角を見せない……知樹のようにね」
だが知樹が否定、反論を返す間もなく高貴は知樹の行く手を塞いだ。
「あああァッ!新学期だよな!」
知樹の不幸の大半は対人関係。
からかわれるのがその80パーセントを占めるほど。
ある意味、知樹はコミニュケーション障害なのかもしれない。
キーンコーンカーンコーン。
「ああどうか、今年一年爆発しませんように」
それからおよそ5時間後。
午後に差し掛かったあたりで新学期初日の学校生活は終わった。
担任になった教師、町下広志は1日の記録として、
『面白い学級になりそうだ』
とだけお気に入りの手帳に書き込んでいた。
雨は既に上がり、分厚い雲の隙間から太陽が顔を出し、ため息の多い知樹のスタートは晴れやかに始まった。
苦い笑みを浮かべて知樹の事情を聞くのは前原高貴。
知樹の前学年から同クラスの友人である。
「……まぁそんなところ。でも見た?ランキング」
「なんで俺がそんなのを見ないといけないんだ」
「やり込んだ甲斐があったよ。 聞いて驚け……」
「はいはい、またトップだったんだろ」
見知った顔を見つけ、知樹の席へ寄って来た高貴は知樹の前でひらひらと興味無さげに手を振った。
「釣れないな、全く」
知樹はクラスを見渡す。
元優等生とは言え、テストの点数は未だ健在。
知樹はダブることなく第二学年へと進級したわけだが、いくら頭が良くても面識がない人間の名前を顔を見ただけで分かるはずがない。
「高貴だけでも同じクラスで良かった。面識のない人間だらけの中に放り込まれたら、俺のコミュ症が発揮されるところだったよ」
「コミュ症なぁ、まっ、そういうことにしておこう」
だけど、と高貴は続ける。
「俺がいなくても良かったんじゃないか?」
高貴は黒板に貼られた席順が書かれたプリントを顎で示す。
「どうせクラスの面子すら気にして無かったんだろ?見て来いよ」
高貴が言う通り、知樹は自分の席を確認しただけで指定された席に座っていた。
その為、自分以外の欄に目は向けていなかった。
知樹は席を立ち、黒板に貼られたプリントの元へ向かう。
席順及び名前の書かれたプリントを端から端まで目を通し終わった後、知樹は自分の席に戻る。
知っている名はあった。
それも去年も同じクラスで、一年間を同じクラスで過ごした人物の名前が、前原高貴以外にも2つ書かれていた。
「はあぁ……」
だがしかし、出てくるのはため息。
「どうだった?」
高貴は白々しく知樹に結果を聞く。
「聞くな……強いて言うなら不幸だ」
知樹が肩を落とすのを見て、高貴は楽しそうに笑う。
その笑みにはどこか含みがあるように知樹は感じた。
「不幸……不幸ってどういう事かな~?」
背後から聞こえてくる声。
明るいようでどこか威圧感のある、少し前に聞いたはずの声の方に知樹はゆっくりと向く。
「そ、それは」
そう、声の主は平川皐月。
高校生の筈なのだが中1程度に見間違えられるという経歴を持つ、なかなか珍しい類の少女だ。
だが長年何かと付き合いの長い幼馴染として、彼女を怒らせると怖いという事は忘れてはならない事だった。
ーー現に今怒らせているのだが。
「それと朝、逃げた」
「逃げたんだ(笑)」
「それは時間が無かったから……」
皐月は怒り、高貴はボソリと楽しそうに呟く。
知樹は言うまでもなく怯えていた。
「仲睦まじい事はいい事だよ~。おはよう!」
そこに第三の刺客が乱入した。
「千夏っ?」
知樹がため息を吐いた一番の原因にして、偶に洒落にならない爆弾発言を投下する、通称『爆弾』こと、河野千夏は、にこやかな笑顔で挨拶を口にする。
「おはよう皐月、高貴、それにロリコン」
「それを言うなと何度言った!」
「……プッ」
「そこ、高貴!笑うの禁止!」
「知樹……もしかして私をそんな目で……」
「見てないよ!!」
時すでに遅し。進級早々出現した爆弾は着火された後だったようだ。
「真のロリコンは?」
千夏が呟いて視線を知樹に向ける。
続けろと促しているようだ。
「決して頭角を見せない……知樹のようにね」
だが知樹が否定、反論を返す間もなく高貴は知樹の行く手を塞いだ。
「あああァッ!新学期だよな!」
知樹の不幸の大半は対人関係。
からかわれるのがその80パーセントを占めるほど。
ある意味、知樹はコミニュケーション障害なのかもしれない。
キーンコーンカーンコーン。
「ああどうか、今年一年爆発しませんように」
それからおよそ5時間後。
午後に差し掛かったあたりで新学期初日の学校生活は終わった。
担任になった教師、町下広志は1日の記録として、
『面白い学級になりそうだ』
とだけお気に入りの手帳に書き込んでいた。
雨は既に上がり、分厚い雲の隙間から太陽が顔を出し、ため息の多い知樹のスタートは晴れやかに始まった。
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