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一章 四人の配信者
17話 冤罪
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薬局のバイトが採用されてから一ヶ月。寒くなり始めるこの季節に俺は暖房が入った休憩室にて敷島さんと電話をしていた。
「この前は災難だったな。スーパーがあんなことになったり、それに例の魔物の件だったり」
「まぁ命があるんで大丈夫ですよ。それより例の魔物については何か分かりましたか?」
一ヶ月前に戦ったあの妙に強かった魔物。あれ以降出会うことはなかったが、何故かその正体が気になってしまい分かり次第敷島さんの方から連絡をもらう手筈になっている。
「いや……研究チームにはしっかり伝えておいたが現状分からないらしい。パティシーを使用して調査員を数名は常にダンジョンに行かせているが例の魔物は見つからない」
ダンジョンは未だに未開の場所も多い場所だ。広さは地球と同等か、下手すればそれ以上の可能性もあると言われている。
同じ個体を見つけるのは地球で顔も分からない人を探すくらい難しいだろう。
「スーパーの件での借りもある。もし何かあったらすぐに君に連絡する」
「はい。ありがとうございます。あっ……そろそろバイトの時間なのでそれじゃ……」
「あぁ。頑張ってくれ」
電話が切れて、休憩時間も残り僅かだ。俺はエナジードリンクを一瓶飲んで少し早いが仕事に戻る。
レジ打ちに品出し。やることはほとんどスーパーと大差ない。実際にこの一ヶ月で仕事は教えてもらうことがないくらい完璧にこなせるようになり同僚とのコミュニケーションも良好だ。
「おい夜道!! 出てこい!!」
普段通りの平和な日々。それは駐車場から飛ばされる怒声により壊されることとなる。
「誰だ……?」
聞いたことのない声だ。だがその声は明確に俺の名前を述べている。周りにも迷惑がかかってしまうのでとりあえず駐車場に出ることとする。
そこには見覚えのない明らかに素行が悪そうな青年達がバイクに乗っていた。バイクは改造のものを使っており、車体にはデカデカと文字がスプレーで書かれている。
暴走族か……? 今時珍しい。何でここに……
「あのーすみません。お客様や近隣の方々のご迷惑になりますので……」
「何しけたこと言ってんだよ夜道!! また一緒にバイク走らせようぜ!!」
「はぁ……?」
何を言っているのかさっぱり分からない。俺はこんな暴走族とは一切関わりはない。
バイクも原付だし改造はもちろん夜に騒音を鳴らしながら走行なんてやったこともない。
「じゃっ、いつもの場所で待ってるからな! 来なかったらまた呼びに来るからな!」
不良達は大声で俺の名前を強調して叫びながら走り去っていく。
「何なんだよあいつら……」
いくら記憶を探っても彼らのことなど微塵も思い出せない。中学の頃もあんな奴知り合いにいなかったはずだ。
「ちょっとちょっと夜道君!」
俺が困り果てながらも店内に戻ろうとすると店長が飛び出してきて俺の前に出てくる。
「困るよああいうのは」
苛立ちを含んだ声色で責め立てられ、俺はあの不良達と関係があると思われていることに気づく。
「えっ、いやあの人達は俺も全く知らない人達で……」
「とにかく。ああいう輩が来るとお店としても迷惑なんだ。もう来ないよう言い聞かせておいてくれ」
「は、はい……」
言い分を聞いてくれる気配はなく、店長は一方的にものを言い店内に戻っていく。
「んなこと言われてもどうすりゃいいんだよ……」
連絡先どころか名前すら知らない相手に注意する方法などなく、俺は途方に暮れながら仕事に戻るのだった。
☆☆☆
「君、もうバイト来なくていいよ」
「えっ……?」
不良達に謎の因縁を付けられてから一週間。あれからも毎日薬局に来ては碌に話も聞かずに立ち去っていく日々を繰り返し、痺れを切らした店長からついにクビ宣告を突きつけられる。
「ちょっ、ちょっと待ってくださいよ!! あいつら本当に知らない奴らで注意も何もできないんですよ!! 毎回毎回バイクで逃げちゃいますし……」
「さっきあいつらから電話がかかってきたんだ。お前中学の頃に随分と悪いことしてたみたいだな」
「悪いこと?」
本当に身に覚えがない。中学の頃にした一番悪いことを挙げるにしても、給食のカレーを溢してしまったくらいだ。
「万引きに未成年喫煙に飲酒。そりゃもう色々と」
「そんなことやってませんって! 大体証拠は……」
「とにかく。君みたいなトラブルを呼び込む疫病神を雇い続けるわけにもいかないんだよ。だからバイトには来なくていいしもう他の人達にもそう伝えてあるから」
店長は強引に話を切り上げ、俺はやっと手に入れた一つの職を失ってしまうのだった。
「この前は災難だったな。スーパーがあんなことになったり、それに例の魔物の件だったり」
「まぁ命があるんで大丈夫ですよ。それより例の魔物については何か分かりましたか?」
一ヶ月前に戦ったあの妙に強かった魔物。あれ以降出会うことはなかったが、何故かその正体が気になってしまい分かり次第敷島さんの方から連絡をもらう手筈になっている。
「いや……研究チームにはしっかり伝えておいたが現状分からないらしい。パティシーを使用して調査員を数名は常にダンジョンに行かせているが例の魔物は見つからない」
ダンジョンは未だに未開の場所も多い場所だ。広さは地球と同等か、下手すればそれ以上の可能性もあると言われている。
同じ個体を見つけるのは地球で顔も分からない人を探すくらい難しいだろう。
「スーパーの件での借りもある。もし何かあったらすぐに君に連絡する」
「はい。ありがとうございます。あっ……そろそろバイトの時間なのでそれじゃ……」
「あぁ。頑張ってくれ」
電話が切れて、休憩時間も残り僅かだ。俺はエナジードリンクを一瓶飲んで少し早いが仕事に戻る。
レジ打ちに品出し。やることはほとんどスーパーと大差ない。実際にこの一ヶ月で仕事は教えてもらうことがないくらい完璧にこなせるようになり同僚とのコミュニケーションも良好だ。
「おい夜道!! 出てこい!!」
普段通りの平和な日々。それは駐車場から飛ばされる怒声により壊されることとなる。
「誰だ……?」
聞いたことのない声だ。だがその声は明確に俺の名前を述べている。周りにも迷惑がかかってしまうのでとりあえず駐車場に出ることとする。
そこには見覚えのない明らかに素行が悪そうな青年達がバイクに乗っていた。バイクは改造のものを使っており、車体にはデカデカと文字がスプレーで書かれている。
暴走族か……? 今時珍しい。何でここに……
「あのーすみません。お客様や近隣の方々のご迷惑になりますので……」
「何しけたこと言ってんだよ夜道!! また一緒にバイク走らせようぜ!!」
「はぁ……?」
何を言っているのかさっぱり分からない。俺はこんな暴走族とは一切関わりはない。
バイクも原付だし改造はもちろん夜に騒音を鳴らしながら走行なんてやったこともない。
「じゃっ、いつもの場所で待ってるからな! 来なかったらまた呼びに来るからな!」
不良達は大声で俺の名前を強調して叫びながら走り去っていく。
「何なんだよあいつら……」
いくら記憶を探っても彼らのことなど微塵も思い出せない。中学の頃もあんな奴知り合いにいなかったはずだ。
「ちょっとちょっと夜道君!」
俺が困り果てながらも店内に戻ろうとすると店長が飛び出してきて俺の前に出てくる。
「困るよああいうのは」
苛立ちを含んだ声色で責め立てられ、俺はあの不良達と関係があると思われていることに気づく。
「えっ、いやあの人達は俺も全く知らない人達で……」
「とにかく。ああいう輩が来るとお店としても迷惑なんだ。もう来ないよう言い聞かせておいてくれ」
「は、はい……」
言い分を聞いてくれる気配はなく、店長は一方的にものを言い店内に戻っていく。
「んなこと言われてもどうすりゃいいんだよ……」
連絡先どころか名前すら知らない相手に注意する方法などなく、俺は途方に暮れながら仕事に戻るのだった。
☆☆☆
「君、もうバイト来なくていいよ」
「えっ……?」
不良達に謎の因縁を付けられてから一週間。あれからも毎日薬局に来ては碌に話も聞かずに立ち去っていく日々を繰り返し、痺れを切らした店長からついにクビ宣告を突きつけられる。
「ちょっ、ちょっと待ってくださいよ!! あいつら本当に知らない奴らで注意も何もできないんですよ!! 毎回毎回バイクで逃げちゃいますし……」
「さっきあいつらから電話がかかってきたんだ。お前中学の頃に随分と悪いことしてたみたいだな」
「悪いこと?」
本当に身に覚えがない。中学の頃にした一番悪いことを挙げるにしても、給食のカレーを溢してしまったくらいだ。
「万引きに未成年喫煙に飲酒。そりゃもう色々と」
「そんなことやってませんって! 大体証拠は……」
「とにかく。君みたいなトラブルを呼び込む疫病神を雇い続けるわけにもいかないんだよ。だからバイトには来なくていいしもう他の人達にもそう伝えてあるから」
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