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一章 女神様と異世界と
16話 双子
しおりを挟む「あっ! 里が見えた! そろそろ降りないと!」
「う、うん……そうね……」
セリシアはぐったりした様子で高度を下げて着地する。
「ふぅ……冥矢君。今度からああいうことする時は一言言ってくれる? ビックリして心臓止まるかと思ったよ」
「あははごめん。思いつきだったから……それにいち早く行かないとって思って。それより里の様子を早く……」
「何者だ?」
ルディの声ではない。成熟した女性のものだ。姿を現したのは鎧を着た、戦う格好をした女戦士だ。恐らくこの人も妖精族なのだろう。
「ボ、ボク達はベルタさんから頼まれて里の様子を見に来たんです! 色々あって馬車が壊れてしまったので……」
「あの人の……? 何か証明できるものは?」
「あっ! 冥矢君あのお酒!」
セリシアがボクのアイテムボックスの中に手を突っ込みおじさんから貰ったお酒を取り出す。
「族長が今度飲もうと言っていた酒だ……なるほど。分かった。里の中には入れてやろう」
「ほっ……ありがとうございま」
「ただしベルタさんが来るまで変な動きはするなよ。それと今里はピリついていてな。武器は一旦没収だ」
彼らと争う気など毛頭ないのでボク達は大人しく円柱状の武器とナイフ等を手渡す。
「よしついて来い」
彼女の後をついていきボク達は妖精族の里に案内される。
「何これ……酷い……」
里の様子は酷いものだった。家がいくつか焼け落ち畑も荒らされており農作物が引っこ抜かれ野菜が踏み潰されている。通る人々には生傷が目立ち、包帯を巻いている人もいる。
「魔族の襲撃が……あったのですか?」
「なぜ知っている……? まぁいい。その通りだ。一週間程前から魔物が攻めて来て里を荒らしてな。つい先日は人間に化けた二人の魔族が来て我が里は大打撃を受けてしまった。民家は焼かれ作物は荒らされ、負傷者は多数。死者も数名出てしまった」
痛々しい現状を見てルディのあの怒りぶりも納得できる。それでもボク達を攻撃したことは許せないが。
「そういえばルディって子はいる? ボク達その子に魔族だって言いがかりつけられて襲われたんだけど」
「何!? ルディが!? あいつどこかに行ったかと思えば何やってるんだ……」
どうやら彼女の襲撃は妖精族の里とは無関係らしい。独断で動いて勘違いしたのだろう。こっちはたまったものじゃないが。
「全くあいつは……才能はあるが猪突猛進すぎるな。まぁあいつの今を考えれば……」
彼女がばつの悪そうな表情をした時ボク達の前を金髪の少女が通り過ぎる。髪を下ろしてはいるが蒼と黄色の瞳を持っている。間違いなくルディだ。
「あっ! ルディ!! さっきはよくも……」
「待て彼女は……」
「ひっ……!!」
ルディは先程の強気な態度とは正反対に気弱に怯え肩を振るわせる。その振動はボクの手にも伝わりあからさまな違和感に首を傾げる。
「ルディじゃ……ない?」
「その子はルディの双子の妹パティだ。あいつとは正反対で気弱で人見知りなんだ。あまり近づいてやるな」
「あ、うん……ごめんね?」
パティと呼ばれた子は涙目になりながらも軽く頷く。よく見てみればルディより体格が一回り小さいし筋肉量も若干劣っている。それに第一瞳の色が左右逆だ。
「うん……?」
肩から手を離そうとした時触れた箇所の違和感に気づく。彼女の着ていた服は薄くその感触が手に伝わる。顔や腕から見える肌質からは考えられない程荒くゴツゴツしている。
「傷……?」
「っ!!」
パティはビクンと体を跳ねさせボクを突き放し一歩後ろに下がる。
「ご、ごめん!!」
恐らく傷口に触れてしまったのだろう。あの服の下の可憐な肌は魔族により焼かれ醜くなってしまっているのだろう。
「だ……ぶ……です」
ギリギリ聞こえないくらいの声量で、怯えた瞳をこちらに向ける。
「とにかくルディは今ここには居ない。いいからついて来い。あとパティはまた襲撃があるかもしれないから一応家の中に隠れておけ。すぐに逃げられるようにしてな」
パティは無言で頷き小走りで去っていく。去り際にこちらを一度振り返り何か言いたそうにするが、結局口を開く事はなく見えなくなっていく。
「族長の元まで行く。これからの話はそこでしよう」
しかし追いかけて怖がらせるわけにもいかないので、ボク達は彼女について行き族長の元まで向かうのだった。
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