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先生、好きです。
第7話
しおりを挟むしばらく遠い席で先生を見つめると先生がこっち向きそうになって私は慌てて視線を手元に向けた。
真面目にやってることをアピールするために広げた参考書を進める。
危ない危ない、怒られちゃう。
今度は真剣に勉強に取組む私。
すると分からない問題を見つけて手を止めた。
あれ、コレってこう説くんだっけ。
──違うな。
「うーん……」
小さく唸って考えていた私は、どうしても分からなくて顔を上げた。
すると徹先生の姿が視野に入って来て、あることを思いついた。
──うん!
啓太にもあぁ言ったし、そろそろ動かないとね!
ガタッと席を経つと、私は「先生」と大きな声で呼んだ。
「なんだ?」
「分からない問題あったので教えて下さい♪」
あ、語尾に音符がついちゃった。
まぁいっか。
すると案の定、徹先生は警戒するように目を細めて聞いて来た。
「それはどうしても分からないところなんだな?」
「はい!」
しっかり肯定を示すと、全然警戒を緩めてくれない先生に、私は「断るんですか?」と首を傾げた。
仮にも一生徒である私のセリフは、当然ながら効き目はバッチリで、身体を凍らせた先生は不機嫌な顔を浮かべながら手招きをした。
「こっちこい」
「やったー! 先生、ありがとう!」
あ、そうだ!
ついでにコレも実行してみよう。
ノートの端を破ってある事を書くと、参考書とメモを持って徹先生のいる教卓へと向かった。
手紙の存在がバレないようペンと一緒に持つと啓太の席を横切る時にこっそりと机に置いて通り過ぎる。
それは見事な演技だったらしく、徹先生に勘付かれずに啓太の手に渡った。
よしっと思いながら先生に参考書を見せると、教卓に参考書とノートを起いて教えて貰った。
「ココなんですけど……」
「──あぁ、これか」
先生が何かを考えていると、手紙を読んだらしい啓太が私の名前を呼んだ。
「柚乃、経済の教科書持ってたよな?」
「うん、持ってるよ」
「借りるぞ」
「うん、分かった」
啓太、ナイス…!
啓太は教材を持って後ろに向かうと私の席に座り勉強を続けた。
その様子を先生はただ黙って見ていただけだった。
「お前、何か企んでるか?」
「もう、先生までそんなこと言うんですか。
何も企んでないですよ」
「…………。 まぁ良い。
今から解説してやるからありがたく聞いてろ」
「キャァ! 俺様なセリフ、カッコイイです!」
「……お前なぁ。」
──ハッ!
真面目にしなきゃ。
「お願いします!」
キリッと立つと、先生は少し呆れた顔をしながら問題の解き方を教えてくれた。
まず徹先生は私が書いた途中式をペンで指すと、間違えてるところを指摘してきた。
「まずココな、この式への直し仕方はあってるが、ここで計算をミスってる」
「え?」
私は指摘された部分を見直すと、変な計算をしていたことに気づいた。
「うわぁ、酷い間違いしてる……」
「性格が表に出てるよな」
「先生それはひどいよー」
ぼやきながらカキカキと書き直していくと、先生はフッと笑って。
「でも、やれば出来るよな」と優しく呟いた。
「…………」
や、ヤバイ……。
今にでも心臓が飛び出しそう!
まさか笑って褒めてくれるなんて、思ってもみなかった。
応援ありがとうございます!
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