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先生、好きです。
第11話
しおりを挟むきっと迎えが到着した連絡だろう。
そう思って「迎え来た?」と聞くと莉奈は携帯をみながら頷いた。
「来たみたい。 わたしは帰るわね」
「うん! 迎え来てもらえて良かったね!」
「えぇ、付き合ってくれてありがとね」
「いいえー!」
それからまたねと交して図書室の前で別れると、これからどうするかと私考えた。
私の両親は共働きだからなぁ。
やっぱり職員室に行って傘を借りて来ようかな。
それしか帰る方法ないし。
…………なんでだろう。
「会いたいな……」
徹先生に会いたい。
前のことを思い出しながら話してたからか、なんか胸の辺りがもやもやする。
思い切って私は身体の向きを変えると、保健室へ向かった。
扉をノックして中に入ると、徹先生が机に向かって何かを書いている。
「なんだ筒見か」
「日向先生はいないんだ?」
「あぁ。 日向先生に用事か?」
「ううん。 徹先生にだよ」
「俺か……。 それで?」
「えっと……」
会いたくて来たものの、言い訳を考えてなかった……。
「──あ! 一人だとあまり捗らないので勉強教えて下さい!」
本当はただ会いたかっただけど、そう言ったら怒られそう。
「……お前なぁ」
「良いじゃないですかー!
受験生の勉強手伝って下さいよー」
「講義料、安くねーからな」
「やったー!」
まさか二人きりで過ごせるなんて!
会いに来て良かった。
あと、勉強を口実にして良かった……。
徹先生が机を片付けると近くから椅子を持って来て横に置いた。
その椅子に私は座わり、愛用している参考書を出す。
「それで何の教科だ?」
「先生って他の教科も教えられる?」
「まぁそれなりにな、俺を舐めるなよ」
「舐めてないよ!
勉強出来る先生のこと、カッコイイって思ってるもん」
「そんなこと言うと疑いたくなるんだよ……」
「ちゃんと本心です!」
「はいはい。 ほら、どこだよ」
「ここ!」
私はこの前間違えた問題を指した。
徹先生は解説書の文を読むと、あぁなるほどと言って教えてくれた。
保健室に二人きりと云う状況は、すごくゆっくりに感じて、緊張するけど穏やかな楽しい時間だった。
そして、あっという間に1時間は過ぎて、壁に飾ってある時計は6時近くを指していた。
「今日はここまでな、帰って寝ろ」
「はーい! 徹先生、今日はありがとう」
「どーいたしまして」
先生の教え方って本当に分かりやすいなぁ。
養護教諭って云うのがもったいないくらい。
でも、普通の先生だったらこんな風に付き合ってもらえないだろうし、養護教諭の立場で良かったのかも。
「先生、また明日も来て良い?」
「……まぁ、俺でいいなら」
「先生が良い!」
「──フッ、そうかい」
やったー!
ガッツポーズを決めて喜ぶ私に、徹先生は呆れたように笑った。
「お前ってホントに意外性るよな」
「意外性……?」
「いや、やっぱり何でもねぇ。 ほら、とっとと帰って寝ろ」
「えぇ、内緒にされたら余計に気になるじゃん!」
「気にしなくていい」
「焦らすなんて先生の鬼畜ー!」
「それでもお前は俺が好きなんだろ?」
「もちろん!」
すかさず頷くと、先生は黙って頭を抑えた。
「……少しは引けよ」
「にひひ!」
どんなところも私にとっては魅力的で。
きっと新しい一面を知って行く度に好きになるんだと思う。
私は勉強道具を鞄の中にしまうと、帰り支度をしていた。
すると突然、徹先生が後ろから頭を抱き寄せて来る。
────え!?
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