暴走族のお姫様、総長のお兄ちゃんに溺愛されてます♡

五菜みやみ

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第一章 5月

いつかの写真

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 最寄りのスーパーで買い物を終えたあと、その帰り道で遊びに出掛けていた春良とバッタリ会い、一緒に家に帰って来た。

 帰って来るとお風呂の浴槽や洗濯物を畳むのを手伝ってから兄妹全員でテレビを見る。

 それから数時間くらい経った頃、そろそろ7時になりそうな時刻で玄関のチャイムが鳴った。

 ピンポーンと云う音に、真依と瑠輝がすぐに反応して、嬉しそうにドアホンの前まで駆け寄って行く。


 来たか。アイツ等って俺ん家来る時はきっちり時間を守るんだよな。


「お兄ちゃん、早く!」

「はぁく!」

「はいはい。──ほら」


 急かしてくる真依と瑠輝を抱え上げると、慣れた手つきで真依が「応答」のボタンを押した。

 パッと画面が変わり、手を振る凜人と道弘が映り込む。


「りっちゃ!みっちゃ!」

〈この声は瑠輝くんの声だね! 凜人だよー〉

「リンちゃん!」

〈真依ちゃんもいたのか! 入って良いか?〉

「うん! まってて!!」


 バタバタと手足をばたつかせて喜ぶ二人を床に下ろすと、足が着いた途端に俺を置いて真っ先に玄関へと向かって行く。


「おいッ!」

「兄さん、遅いよー」

「うっせぇ!」


 優雅にアイスコーヒーを飲んでいる春良に俺は吐き捨てると、直ぐにあとを追った。

 凜人と道弘に初めて会わせてからまだ一ヶ月しか経ってないのに、真依と瑠輝はすでに友達として認知しているらしい。

 仲が良いのは嬉しいことだが、兄妹仲より深まるのは良い気がしない。

 慌てて玄関に向かうと、二人はすでに裸足で上がり框から降りていて、真依がドアノブに手を掛けて開いていた。

 その時になっていつの間にか靴下を脱いでたことに気づく。


 靴下どこやった!? いや、それより──


「「 らっしゃーい! 」」


 子供の行動力ハンパねぇな……。


「真依ちゃん、瑠輝くん久しぶりだねー」

「元気だったか?」


 開いた先から凜人と道弘が顔を出すと、直ぐさま真依は凜人に、瑠輝は道弘に抱きついた。


「リンちゃん!」

「みっちゃ!」

「真依ちゃん、今日は熱烈の歓迎だね」

「なんだ瑠輝。体重が重たくなってきたな!」

「…………」


 二人のおもてなしに凜人も道弘と嬉々として抱き上げている。


「真依ちゃんのワンピース可愛いね!」

「ほんと!?」

「瑠輝のは迷彩パンツ、イカしてんな!」

「えへ!」


 まるで天国にいるみたいに酔っていそうなほど喜ぶ友達二人に俺は遠い目をして言う。


「……お前ら本当に良かったな」


「そうだね。この前、俺と真依ちゃんを朝から夜まで二人きりにさせてくれて良かったよ」


 いや、あれは急に親父から呼び出しくらったからで……って!


「語弊がある言い方すんじゃねぇ!!」


 変な言いまわししやがって…!

 今の知らねぇヤツが聞いたら、一発で誤解を生む言い方してたぞ!?

 一緒にいたのは、“夜”までじゃなく、“夕方”までだろうが!!


 話しをしていると、リビングの方から春良が顔を出してきた。


「こんばんは、凜人さん、道弘さん」

「あ、春良くん。こんばんは、久しぶりだね」

「久しぶりぃ! 相変わらず、兄貴に似ずに正統派イケメンだな」

「お久しぶりです。道弘さん、それだと兄さんが拗ねますよ」

「お前の言葉が一番傷つくわ!」


 俺は春良の頭を軽く叩くと、春良は「そう?」ととぼけてくる。


「あ、凜人さんも道弘さんも上がって下さい」

「おじゃまします」

「おじゃましまーす」

「すみません。真依と瑠輝、もう少し抱いててもらって良いですか?」


靴を脱いで上がる二人にそう言うと、洗面所へ行って濡れたタオルを一枚持って来た。


「真依、瑠輝。裸足で降りちゃダメって何度も言ってるでしょ」

「「ごめんなさい……」」

「もうしちゃだめだよ。足汚れちゃうんだからね」

「「はーい」」


 春良が優しい声音で怒ると、持って来たタオルで二人の足を拭いてあげていた。

 綺麗になった足で下ろされた真依と瑠輝は、それぞれ凜人と道弘に「ありがとう」と言ってから居間へと案内をする。

 ぞろぞろと揃って居間に入ると、料理をしていた紀子さんが笑顔で迎え入れた。


「凜人くんも道弘くんも、いらっしゃい。
夕飯はまだ食べてない? 秋良くんから聞いてるかしら」

「聞いてます!俺達の分も作ってくださってありがとうございます!」

「紀子さんの料理、楽しみにしてました!」

「ふふ、良かったわ」


 照れたようなはにかんだ笑みを見せてから、思い出したように二人の荷物を見て言う。


「あら、悪いんだけど荷物は秋良くんの部屋に置いて来てもらえるかしら?」

「分かりました!」

「うっす!」


 俺は凜人と道弘を連れて部屋に向かうと、階段を上がってる時に凜人が呼ばれた件について触れて来た。


「──それで。デジタルカメラって小学校の時の?」

「あぁ。俺が撮ってただろ?」

「うん。あの頃だと、俺と祐太が写ってそうだよね」

「あーそれな。……祐太か。連絡先知らねーんだよな」

「じゃぁ、知り合いに当たってみるよ」

「おぉ、よろしく」


 忘れてた。小学校の頃は良く三人でつるんでたんだったな。

 そんで確か、祐太は6年生に進級する時に引っ越したんだっけか。今どこにいんだろ……。


 裕太とは中学校に進級して間もなく、部活やら仲の他に良い友達が出来て余り話さなくなってしまった。

 高校に入学してからはもっとだ。そもそも同じ高校を受験してないから会うこともない。


 携帯を持ち始めたのも高校生になってからだしな。連絡を取り合う手段がないんだから疎遠になって当たり前か……。


「しっかしお二人の小学生時代か。楽しみだな」

「そう言えばアレ持って来た? 小学生の頃の写真」

「持って来たぜ。卒業アルバムで良かったよな?」

「うん」


 凜人と道弘の話しに何も聞かされていない俺は、訝しげに思って聞いていた。


「なんでそんなもん持って来たんだ?」

「折角だしと思ってさ。道弘は中学生から仲良くなったでしょ。
小学校の道弘がどんなだったかなんて、機会ないと見れないじゃん?」

「あぁ、まぁな」

「だから見せ合いっこでもしようかなと思ってさ」


 なるほど。それで、卒業アルバムってわけか。

 道弘の子供の頃とか、確かにすげぇ気になるもんな。ぜってぇ今と変ってねぇだろうな。


 話しをしながら階段を上りきり部屋に着くと、凜人と道弘の鞄を部屋の隅に置かせてまた居間へと戻った。

 テーブルにはすでに取り皿やコップ、サラダと麦茶のポットが置いてあって、後はメインのカレーライスをよそるだけだ。


「カレーと箸、スプーンはそれぞれでお願いします」

「好きな所に座って。真依と瑠輝は少し待っててねー」

「「はーい!」」


 春良は箸とスプーンを人数分数えてから本数分を箸立てに入れると、テーブルの中央に置き、カレーをよそり始めた。

 俺と凜人、道弘もカレーをよそって席に着く。

 真依と瑠輝は子供用のレトルトカレーだ。手作りのが中辛のルーを使ってるため、いつも魔法少女や戦隊モノの絵が描かれたパッケージの子供用のカレーを買って来ている。

 中にはシールが1枚入ってて、出てきたキャラクターについて話しをしながら紀子さんは二人のカレーを湯煎で温める。


「シールはどこに貼るんだっけ?」

「てちょー!」

「てちょー!」


 “てちょー”はシール手帳の事で、テレビ台の引き出しに置いてある。

 どこに貼ろうか散々迷ってから二人はそれぞれ綺麗に剥がそうと真剣になりながらそれぞれ決めた場所に貼っていた。

 そんな二人を眺めながら食べるカレーは絶品で。スパイスで舌がヒリヒリして辛いはずなのに、偶に甘く感じられるのが不思議だ。

 真依と瑠輝がカレーを食べ始める頃には2杯目をお変わりして、しょうもない話しをしながら夕食を食べ終わると、凜人と道弘を連れて2階の部屋に戻って来ていた。

 少ししてから順番でお風呂に入ると、全員で半裸族になってタオルを首に掛けて、部屋でのんびりとしていた。

 床には既に布団が引かれていて棚から出して来た漫画が散らかっている。


「マジで居心地いいわー」

「てか、物動かしすぎでしょ」

「来んくらい広い方が色々出来るだろ」

「妹と弟を部屋に連れ込んで何すんだよ!」

「添い寝だよ!」

「おいおい、喧嘩すんなよー。暑くなるだろ」


 呑気な道弘に止められて休戦すると、やっと本題へと入った。


「ちゃんと充電で出来るか!?」

「お前は写ってねぇのに、何はしゃいでんだよ」

「写ってなくてもお前らの子供の頃の写真が見れるんだぞ? はしゃぐに決まってるだろ」


 だからってそこまではしゃぐか。


「いいからいいから、秋良はカメラの電源つけてよ。道弘はアルバム貸してー」


 本を元に戻した凛人が勉強机の上からカメラを手に取ると俺に渡して来た。

 電源ボタンを長押しすると、今度はパッと画面が明るくなって電源が起動したのが分かる。けれど、立ち上げに時間が掛かるようで画面は暗いままだった。


 これは暫く時間が必要だな。道弘のアルバム見てた方が良さそうだ。


 道弘はアルバムを取り出すとケースから出して、凜人に渡す。


「どれどれぇ。ミチ、6年の頃何組にいた?」

「6‐1組だったか?」

「忘れるなよ……」


 後ろからパラパラめくり、クラス別写真のページを開くと、道弘が「ココな」と言って、下の方にいる男の子を指差した。


「うわ、髪長っ!」

「どれ──」


 ……あぁ、ホントだ。今より若干長めだな。


「髪短くしたのは中学上がってからだしな。つってもそんな変わんねぇはずだけど?」

「そうだねぇ。他に写ってないの?」

「確か、運動会と修学旅行のページに……」

「運動会……運動会……ここか」


 凜人が表紙の方からページをめくっていく間、一度カメラに視線を落とした俺は起動していたことに気がついた。


「こっちもついたぞ」

「おっ!?」


 一番に食らいついたのは道弘の方だった。

 俺の隣りに移動してくると肩を組んで来て、カメラを覗き込んで来る。凜人も寄り添うように近づいて体重を掛けて来た。


「おめぇわ!」

「アハハッ! しょうがないじゃん!」


組まれた腕と寄り掛かる身体を払うが、二人はまた体重を掛けてくる。


「ちょっとくらい待てねぇのか……」

「まぁまぁ、気にしないで」

「気になるわ! 暑苦しい!」


 肩を揺らしてぶつかり合うと、「ハハハッ!」と二人は笑ってやっと離れた。

 すると、扉を叩く音が響いて一斉に黙り込む。


_ドンドン


「おにぃーちゃーん!」

「にーちゃー!」


真依と瑠輝の声がしてもう一度扉を叩く音が響く。中々入って来ない二人に違和感を覚える。


 なんだ? いつもなら直ぐに入って来るのに。


「どーした?」


 立ち上がってドアを開くと、真依と瑠輝がコップやお菓子の乗ったお盆を持ってそこに立っていた。

 どうやら両手が塞がっていて開けられなかったらしい。




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