やり直しは嫌なので、全力で拒否します!

西藤島 みや

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繰り返す悪夢の果て

全知全能の書

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4人の脱出を見届けるようにして、数千年の歴史をもつ大図書館は崩れ落ちた。一部は完全に崖下へと崩落し、残った部分も凡そ原型を留めてはいなかった。


それから3年。正式な皇太子となったメルヴィル皇女は、学園を卒業したフィオラ・バセッティを、大図書館の新しい司祭とすることを、国じゅうに知らしめた。新たな司祭が決まり、国の叡知の象徴たる大図書館を復興すると。
その発表を、国民は熱狂でもって歓迎した。

「でもいいのかしら、カンタレラは行方不明のままなのに」
フィオラは屋敷の庭に出したテーブルに、リアムと向かい合ってすわり、呟いた。

「不思議だよね、崩れ落ちたからといって、あの場所にあることにかわりないはずなのに」
リアムも、お茶のカップを覗き込みながら呟く。
復興の発表よりずっと前から、メルヴィルは王宮の兵たちに命じて、図書館の蔵書を王宮殿で保護してくれていた。だが、そのなかをどれ程探してもカンタレラはみつからなかったのだ。


無論、リアムとフィオラも何度も足を運んだが、どういうわけか、あの大きな、しかもフィオラが傷までつけた本がみつからないのだ。
「崖下も捜索はするといっていたけれど、私は見つからないような気がしているの」
と、フィオラはリアムをみた。
美しいみどりの瞳が、ニセアカシアの葉陰を移して柔らかく微笑んでいる。それを見るたびに、どきどきとフィオラの胸はいまにも壊れそうなほど高鳴るのだ。

「……わかるよ、フィオラ」

リアムはそっとテーブルの上のフィオラの手を握った。フィオラは頬をそめてリアムを見上げる。
「それでね、メルヴィル皇女はカンタレラをみつけられないお詫びにって、何でもひとつ、プレゼントを下さるって言うから」
んん、とリアムが眉をよせた。まさかと唇が動く。

「私、自動車をお願いしたの。これで自分で何処へでも行って、講演でも式典でも行えるわね!」

リアムのみどりの瞳が、驚愕に見開かれる。
フィオラはいたずらそうに笑い、そんなに心配しなくてもそのうち慣れるって聞いたわよ、と笑った。

「ねえさん!?いや、フィオラ、正気なの!?あれは爆発するってきいたよ!なんで馬車じゃ駄目なのさ!?」
しないわよう、いや、爆発する、と二人がやりあうこえが、晴れた日の、薔薇の咲き誇る美しい庭園に響きあっている。


幼い日、手を繋ぎあってこの庭園をかけていったふたりは、今日もこの場所でいつまでも笑いながら、変わらず話し続けていた。

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感想 2

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みんなの感想(2件)

柚木ゆず
2020.08.28 柚木ゆず

お邪魔しております。始めの一手、まで拝読しました。

この主人公さん、そして弟さん、好きですね。
お二人の関係性も性格も、すごく気に入っています。


この回の終盤で、何かを閃いたみたいですね。
それが何なのか……。今から、明日の拝読できる時間が楽しみです(待ち遠しいです)。

2020.08.28 西藤島 みや

感想、ありがとうございます。リアムとフィオラ、子供時代が書いていて楽しかった作品でもあります。楽しんでいただけたら幸いです。

解除
ケロリ
2020.07.29 ケロリ

リアム(リュゼ)はあれほど虐げたフィロニアに付き纏いまた手に掛けようとしているのですか?
自分達が殺されたのは自業自得なのでは?フィロニアに育てられた息子達がフィロニアの復讐を果たしただけで、逆恨みにも程がある。
愚王と阿婆擦れ二人で地獄の底に沈めばよかったのに。

2020.07.29 西藤島 みや

読んでいただきありがとうございます!

阿婆擦れ男爵令嬢(ミア)に関しては、ガッツリ地獄ゆきにするつもりで。どこがいいですかねえ、生臭くて泣き叫んでも帰ってこれない、マグロ漁船か蟹工船が好きなんですが、山中の飯場もいいですかねえ。でもフィロニアの苦しみに匹敵するほど苦しんでもらわないと……なりませんからねえ。
リアム(リュゼ)がフィロニアをおいかけて転生してきた理由を、男爵令嬢もフィオラも知りません。愚王なりの心境というものも、これから書いてゆく予定ですが。その過程で、まだまだ辛酸を嘗めさせられ、苦しんで頂く所存で。

皇女さまに気に入られ、カンタレラらしき本を手にした転生令嬢、完結まであと少し、楽しんでいただけたら幸いです。

解除

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