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第2章
挿話 子爵令息の失踪 〈ゲノーム家侍女長の証言〉
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亡きアルゼリア子爵の三男、ダニエルが学園を休学したまま消息を絶った。噂によれば、何かの事件に巻き込まれて、命を落としたと聞く。
ここ二週間ばかり、ゲノーム邸にはアルゼリア子爵の兄である男爵様をはじめとして、随分と色々なかたがお見舞いにみえた。
驚くべきは、先だってあの手に負えないシャルロットとの婚約を反故にしたはずの王太子が幾度も訪問することだ。勿論旦那様はあの娘に会うよう再三求めたけれど、結局会ったのは一度だけ。何様だと思ってるのか、旦那様は放っておいていいというけれど、一体何をお考えなのか……。
とにかく、今日の晩餐会のために王室から見るも美しい大きな箱が届いた。
「シャルロット嬢、旦那様がこれを必ず着るよう仰せです。着替えを!」
だらしなく寝台へ寝そべり、なんの返答もないシャルロットを、もう一人とふたりがかりで何とか起こす。
「……そんなもの、着ません」
ぼそっと我が儘を言うシャルロットに、舌打ちをした。
「あなたがそれを決められる立場ですか!」
前の婚約は反故になり、今度は死んだんだから、本来なら一生喪服を着て独身を貫くべきなのに、王太子さまはお優しくも目をかけてくださってる。
「シャルロット嬢!じきに王太子さまがおみえになるそうですからお早く!!」
ひっぱたいて連れてきゃいいんだけど、万一王太子の耳に入ったらクビじゃすまないかもしれないので、我慢する。
ここで働いてると、どうしてもこの我が儘娘を切り離せない。まあ、あと一年の我慢だ。旦那様がいうには、この娘はあと一年したら愛妾として一生王室で飼われることになるらしいから。
私だったら絶対ごめんだけれど、この贅沢で自堕落な娘には愛人ってのはピッタリだろう。
何とか起こして着替えをさせ、旦那様にも加勢してもらって無理矢理王太子の馬車に乗せる。
「侍女長、ご苦労様だったな。今日はもう休んでいいぞ!」
旦那様は今日もお優しい。私は丁寧にお礼をいって、他の侍女たちを連れて奥へとさがった。
ここ二週間ばかり、ゲノーム邸にはアルゼリア子爵の兄である男爵様をはじめとして、随分と色々なかたがお見舞いにみえた。
驚くべきは、先だってあの手に負えないシャルロットとの婚約を反故にしたはずの王太子が幾度も訪問することだ。勿論旦那様はあの娘に会うよう再三求めたけれど、結局会ったのは一度だけ。何様だと思ってるのか、旦那様は放っておいていいというけれど、一体何をお考えなのか……。
とにかく、今日の晩餐会のために王室から見るも美しい大きな箱が届いた。
「シャルロット嬢、旦那様がこれを必ず着るよう仰せです。着替えを!」
だらしなく寝台へ寝そべり、なんの返答もないシャルロットを、もう一人とふたりがかりで何とか起こす。
「……そんなもの、着ません」
ぼそっと我が儘を言うシャルロットに、舌打ちをした。
「あなたがそれを決められる立場ですか!」
前の婚約は反故になり、今度は死んだんだから、本来なら一生喪服を着て独身を貫くべきなのに、王太子さまはお優しくも目をかけてくださってる。
「シャルロット嬢!じきに王太子さまがおみえになるそうですからお早く!!」
ひっぱたいて連れてきゃいいんだけど、万一王太子の耳に入ったらクビじゃすまないかもしれないので、我慢する。
ここで働いてると、どうしてもこの我が儘娘を切り離せない。まあ、あと一年の我慢だ。旦那様がいうには、この娘はあと一年したら愛妾として一生王室で飼われることになるらしいから。
私だったら絶対ごめんだけれど、この贅沢で自堕落な娘には愛人ってのはピッタリだろう。
何とか起こして着替えをさせ、旦那様にも加勢してもらって無理矢理王太子の馬車に乗せる。
「侍女長、ご苦労様だったな。今日はもう休んでいいぞ!」
旦那様は今日もお優しい。私は丁寧にお礼をいって、他の侍女たちを連れて奥へとさがった。
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