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第3章
並んで歩く
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二輪を商店の脇につけ、俺はシャルロットの手をとって雪に気を付けながら一軒の商店に入っていった。
「ああ!……いらっしゃい!」
胡散臭い笑顔を張り付けた四十絡みの小男が、奥からノロノロとでてきた。値踏みするようにこちらをみている。
「なにかお困りかな?」
ライダース姿の若者と、トレーン無しのくるぶしまでの軽装の女の子の二人組。金持ちの道楽息子と思われたらしく、馴れ馴れしい態度で男は近づいてきた。
「彼女にいくらかドレスをお願いしたいんだ」
そう言って財布から金貨を取り出すと、心得たように男はうなづいた。
「ローシェ様のお客人かな?」
奥に居た女の店員を手招きながら、男は尋ねた。
「ああ、まあ。ローシェとははじめて会ったところだけれど…ちょっとしたツテがあって。実際のとこ、どんなやつかな」
女店員に連れられて奥の試着室へ入って行くシャルロットを指差すと、ああ、と男はしたり顔で頷いた。
「ここの領主は居ないようなものでね。管理してる貴族も来るときだけ贅沢させてりゃあ、四の五の言わないから、ローシェ様がうまいことやってくださってるよ。王都からなら、バリー宰相閣下をご存知かな?ローシェ様は閣下と懇意でね。随分便宜を図ってくれてるよ……なに、農村からのあがりさえ納めてりゃあのボンクラ貴族は文句も言えないから、この辺の領主は実質ローシェ様ってことで大丈夫さ」
へえ、と俺は目を細めた。なるほど、俺は貴族どころかどこかの商売人に見えてるらしい。貧乏臭い育ちに感謝だな……
「いい話聞いたな。あんたが言ってるのはローシェの親父さんのことだろ?息子の方は?俺のツレがヤツを気に入ってるみたいなんだが」
ここはちょっと揺さぶってみようかな?
「どうかなあ?ローシェ様の子息……マーカス様のこったろ?王都の一流の大学を出たっていうのでお高くとまってて俺らとは口もきかねえからなあ。あんたのツレは美人だが、大丈夫だろ。おおかた王都に女がいるって噂だしな」
下品な笑いに、それは安心だと俺も笑い返しているとシャルロットが戻ってきた。
「あれで足りたか?」
尋ねるとシャルロットは悪い笑みを浮かべた。
「ええ。今のところはこれでかまいませんわ殿下。昨日のお詫びというならあれで勘弁してさしあげます」
肩をすくめた俺に、小男はギギギ、と音をたてたような変な動きで俺を振り返った。
「殿下?」
あらいけない、とシャルロットがくちもとを手で押さえた。こいつ!わざとらしい演技をしやがって。俺は笑い出しそうになりながらぐっと腹に力をいれた。
「このあたりは全てこのかたの土地でしょ?それとも新聞も読んでないのかしら?」
シャルロットの言う通り、フェリクス大公子帰還の報せは既に大手の新聞社数社も、大々的に報じていた。全てはルーベンス紙の報じたものの焼き直しのようなもので、続報として俺や他の貴族の動向を推察するものが多かったのだが。
「ゲノーム令嬢……?」
おそるおそる、といったふうに男はシャルロットに尋ねた。婚約破棄の一件以来、シャルロットは稀代の悪女だ。その悪女が、突然現れたもう1人の王族と仲睦まじくしている、というのは、俺を巡る続報のなかでも最もセンセーショナルなものだろう。
しかも、その情報源がゲノーム家に仕える使用人たちという確かさだ。
「おっしゃるとおり。シャルロット・マレーネ・ゲノームですわ。父が何度かお会いしてますわね?」
自分が部屋に軟禁されている間に、とは勿論言わないが、同時にゲノーム公爵がこんな王国の端にきても女性用の衣料を必要としていたことを確認する。
「ええ、令嬢の好みは常々……あの、先ほどの話しは……」
「お前から聞いた、とは言わないでおく」
揉み手をしながら頭を下げている男を見ていると鼻で笑ってしまう。おっと、礼儀作法、礼儀作法。
「どちらにせよ宰相とローシェからは貸したモノを返して貰うことになりそうだがな」
笑いかけたつもりだったが、男はヒッ、とこ声をあげて腰を抜かしてしまった。そんな怖い顔したかな?
「あいつらにお前の話をしないかわり、お前もここで俺たちに会ったことは暫く話すな。いいか?」
男は床にすわったままなので、こちらが腰をかがめてやらなければならない。
「そうでなければ、その口……」
ちょうどジャケットの胸元がひろがり、ヤツにだけ見えるあたりにある、例の銃を引き抜く真似をする。
「あ、アアア!わかり、わかりました。あぅ!」
震え上がった男に、シャルロットが手をさしのべた。
「もう、ダニエルったら!……怖がらせてごめんなさいね」
いえいえいえ、と男は床にへばりつくようにしてシャルロットに頭をさげた。
「もう行った方がよさそうね……、頼んだ品はフェリクス大公の屋敷へお願いね」
ハハー、と!小男はふたたび土下座でそれにこたえた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「シャルロット、どうしてくれるんだよ。領民にヤクザ者みたいに思われただろ!」
雪だまりを避けながら俺が歩いて行く後ろから、シャルロットは転ばないよう俺のジャケットの裾を握って、足跡を踏みながらついてくる。そうすれば歩きやすいと本人がいうからだ。子供の遊びのようなその姿につい笑ってしまう。
「ダニエル、あなたきっと大公よりやくざ者のほうがむいてるんじゃないかしら。理解が進んでいいじゃない」
ほとんど俺の背に抱きつくようにしながら、きらきらする瞳で見上げて、うそぶくのだから困ったものだ。
「お前はホントになあ……」
次に向かったのは、ふわふわと甘い匂いの湯気をたてている食料品店だ。
「この香り、りんごかしら?」
確かにこのあたりでは林檎も特産ではあるが、
「アンズじゃないか?"タータド・エブリカ"はこのあたりの郷土料理のはずだし」
入り口でシャルロットについてきた雪をはらってやり、ドアをあけて通してやりながら話していると
「いらっしゃいませ!騎士様、大当たりです!今年最後のアンズのパイが今焼きあがったところですよ!」
と若くて細身の店員が話しかけてきた。
「それは幸運だったわね。二人ぶんお願いできるかしら?」
シャルロットは跳ねるように中へはいってゆき、席に案内されて俺を手まねいた。
やがて俺たちの前に、艶々としたオレンジ色のタータド・エブリカが運ばれてきた。アンズを使ったパイというからもっと甘いかと思ったけれど、そうでもなく、案外俺みたいなヤツでもいける。
「やあね、口のはしについてるわよ」
シャルロットはハンカチを出して、俺の口を拭いてくれる。先程の店員はそれを見てにっこりとわらった。
「おふたりは、ローシェの屋敷のとこの宿泊客でしょう?さっき、見たこともない乗り物でやってきたのを見かけましたよ」
俺はそれをきいて苦笑いした。
「仲のよろしいことですね。新婚さんですか?」
店員はお祝いですとグラスについだワインをおいていった。
「誤解されちゃってるけど」
シャルロットはワインに酔ったのか、赤い頬を押さえて言った。
「どうせじきそうなるんだろ、問題ない」
えええ、となんだか困ったような表情でこちらをうかがうシャルロットに、俺は首をかしげた。
「友達だといったり、結婚するって言ったり……全然わかってないのね……」
シャルロットが何かボソボソ呟きながら、またタルトとワインを口に放り込む。結局、ワインは二杯ともシャルロットが呑んでしまった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「……おさけって、いいですわね。はじめて呑みましたけど……んフフフフ」
俺の肩によしかかりながら、彼女は言う。箍が外れているのか、以前のような話し方だ。しかし、こんなに酔っているのでは、調査の続きはむりそうだ。
二輪の後ろにもギリギリかもしれない……宿屋を探した方がいいだろうか?
「ダニエル!ダニエル・アルゼリア!」
バシバシと背中を叩かれた。
「約束は守りなさいよね!」
約束?と彼女のまるいあたまを支えてやりながら尋ねると、あなたが言ったのよ、と彼女は答えた。
「もし!もしもあなたが、わたくしをすきになったなら!かならず!かならずよ!あなたに預けたあの薬で!わたくしを殺してくださいませね!約束ですわよ!」
雪が降ってきたのだ。だから、きっとこんなにも、ここは寒く感じたのだ。
「シャルロット、雪が降ってきた。急いで帰ろう」
なによ、と彼女は抗議の声をあげたけれど、俺は応じることなく彼女の腕を乱暴にひいて、二輪の停めてある場所にむかって歩き出した。
「ああ!……いらっしゃい!」
胡散臭い笑顔を張り付けた四十絡みの小男が、奥からノロノロとでてきた。値踏みするようにこちらをみている。
「なにかお困りかな?」
ライダース姿の若者と、トレーン無しのくるぶしまでの軽装の女の子の二人組。金持ちの道楽息子と思われたらしく、馴れ馴れしい態度で男は近づいてきた。
「彼女にいくらかドレスをお願いしたいんだ」
そう言って財布から金貨を取り出すと、心得たように男はうなづいた。
「ローシェ様のお客人かな?」
奥に居た女の店員を手招きながら、男は尋ねた。
「ああ、まあ。ローシェとははじめて会ったところだけれど…ちょっとしたツテがあって。実際のとこ、どんなやつかな」
女店員に連れられて奥の試着室へ入って行くシャルロットを指差すと、ああ、と男はしたり顔で頷いた。
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へえ、と俺は目を細めた。なるほど、俺は貴族どころかどこかの商売人に見えてるらしい。貧乏臭い育ちに感謝だな……
「いい話聞いたな。あんたが言ってるのはローシェの親父さんのことだろ?息子の方は?俺のツレがヤツを気に入ってるみたいなんだが」
ここはちょっと揺さぶってみようかな?
「どうかなあ?ローシェ様の子息……マーカス様のこったろ?王都の一流の大学を出たっていうのでお高くとまってて俺らとは口もきかねえからなあ。あんたのツレは美人だが、大丈夫だろ。おおかた王都に女がいるって噂だしな」
下品な笑いに、それは安心だと俺も笑い返しているとシャルロットが戻ってきた。
「あれで足りたか?」
尋ねるとシャルロットは悪い笑みを浮かべた。
「ええ。今のところはこれでかまいませんわ殿下。昨日のお詫びというならあれで勘弁してさしあげます」
肩をすくめた俺に、小男はギギギ、と音をたてたような変な動きで俺を振り返った。
「殿下?」
あらいけない、とシャルロットがくちもとを手で押さえた。こいつ!わざとらしい演技をしやがって。俺は笑い出しそうになりながらぐっと腹に力をいれた。
「このあたりは全てこのかたの土地でしょ?それとも新聞も読んでないのかしら?」
シャルロットの言う通り、フェリクス大公子帰還の報せは既に大手の新聞社数社も、大々的に報じていた。全てはルーベンス紙の報じたものの焼き直しのようなもので、続報として俺や他の貴族の動向を推察するものが多かったのだが。
「ゲノーム令嬢……?」
おそるおそる、といったふうに男はシャルロットに尋ねた。婚約破棄の一件以来、シャルロットは稀代の悪女だ。その悪女が、突然現れたもう1人の王族と仲睦まじくしている、というのは、俺を巡る続報のなかでも最もセンセーショナルなものだろう。
しかも、その情報源がゲノーム家に仕える使用人たちという確かさだ。
「おっしゃるとおり。シャルロット・マレーネ・ゲノームですわ。父が何度かお会いしてますわね?」
自分が部屋に軟禁されている間に、とは勿論言わないが、同時にゲノーム公爵がこんな王国の端にきても女性用の衣料を必要としていたことを確認する。
「ええ、令嬢の好みは常々……あの、先ほどの話しは……」
「お前から聞いた、とは言わないでおく」
揉み手をしながら頭を下げている男を見ていると鼻で笑ってしまう。おっと、礼儀作法、礼儀作法。
「どちらにせよ宰相とローシェからは貸したモノを返して貰うことになりそうだがな」
笑いかけたつもりだったが、男はヒッ、とこ声をあげて腰を抜かしてしまった。そんな怖い顔したかな?
「あいつらにお前の話をしないかわり、お前もここで俺たちに会ったことは暫く話すな。いいか?」
男は床にすわったままなので、こちらが腰をかがめてやらなければならない。
「そうでなければ、その口……」
ちょうどジャケットの胸元がひろがり、ヤツにだけ見えるあたりにある、例の銃を引き抜く真似をする。
「あ、アアア!わかり、わかりました。あぅ!」
震え上がった男に、シャルロットが手をさしのべた。
「もう、ダニエルったら!……怖がらせてごめんなさいね」
いえいえいえ、と男は床にへばりつくようにしてシャルロットに頭をさげた。
「もう行った方がよさそうね……、頼んだ品はフェリクス大公の屋敷へお願いね」
ハハー、と!小男はふたたび土下座でそれにこたえた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「シャルロット、どうしてくれるんだよ。領民にヤクザ者みたいに思われただろ!」
雪だまりを避けながら俺が歩いて行く後ろから、シャルロットは転ばないよう俺のジャケットの裾を握って、足跡を踏みながらついてくる。そうすれば歩きやすいと本人がいうからだ。子供の遊びのようなその姿につい笑ってしまう。
「ダニエル、あなたきっと大公よりやくざ者のほうがむいてるんじゃないかしら。理解が進んでいいじゃない」
ほとんど俺の背に抱きつくようにしながら、きらきらする瞳で見上げて、うそぶくのだから困ったものだ。
「お前はホントになあ……」
次に向かったのは、ふわふわと甘い匂いの湯気をたてている食料品店だ。
「この香り、りんごかしら?」
確かにこのあたりでは林檎も特産ではあるが、
「アンズじゃないか?"タータド・エブリカ"はこのあたりの郷土料理のはずだし」
入り口でシャルロットについてきた雪をはらってやり、ドアをあけて通してやりながら話していると
「いらっしゃいませ!騎士様、大当たりです!今年最後のアンズのパイが今焼きあがったところですよ!」
と若くて細身の店員が話しかけてきた。
「それは幸運だったわね。二人ぶんお願いできるかしら?」
シャルロットは跳ねるように中へはいってゆき、席に案内されて俺を手まねいた。
やがて俺たちの前に、艶々としたオレンジ色のタータド・エブリカが運ばれてきた。アンズを使ったパイというからもっと甘いかと思ったけれど、そうでもなく、案外俺みたいなヤツでもいける。
「やあね、口のはしについてるわよ」
シャルロットはハンカチを出して、俺の口を拭いてくれる。先程の店員はそれを見てにっこりとわらった。
「おふたりは、ローシェの屋敷のとこの宿泊客でしょう?さっき、見たこともない乗り物でやってきたのを見かけましたよ」
俺はそれをきいて苦笑いした。
「仲のよろしいことですね。新婚さんですか?」
店員はお祝いですとグラスについだワインをおいていった。
「誤解されちゃってるけど」
シャルロットはワインに酔ったのか、赤い頬を押さえて言った。
「どうせじきそうなるんだろ、問題ない」
えええ、となんだか困ったような表情でこちらをうかがうシャルロットに、俺は首をかしげた。
「友達だといったり、結婚するって言ったり……全然わかってないのね……」
シャルロットが何かボソボソ呟きながら、またタルトとワインを口に放り込む。結局、ワインは二杯ともシャルロットが呑んでしまった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「……おさけって、いいですわね。はじめて呑みましたけど……んフフフフ」
俺の肩によしかかりながら、彼女は言う。箍が外れているのか、以前のような話し方だ。しかし、こんなに酔っているのでは、調査の続きはむりそうだ。
二輪の後ろにもギリギリかもしれない……宿屋を探した方がいいだろうか?
「ダニエル!ダニエル・アルゼリア!」
バシバシと背中を叩かれた。
「約束は守りなさいよね!」
約束?と彼女のまるいあたまを支えてやりながら尋ねると、あなたが言ったのよ、と彼女は答えた。
「もし!もしもあなたが、わたくしをすきになったなら!かならず!かならずよ!あなたに預けたあの薬で!わたくしを殺してくださいませね!約束ですわよ!」
雪が降ってきたのだ。だから、きっとこんなにも、ここは寒く感じたのだ。
「シャルロット、雪が降ってきた。急いで帰ろう」
なによ、と彼女は抗議の声をあげたけれど、俺は応じることなく彼女の腕を乱暴にひいて、二輪の停めてある場所にむかって歩き出した。
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